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「体の動きで音を奏でる」ソニー新プロジェクト。手首装着の実験機を披露

 ソニーは、「身体の動きによって、誰もが自由に音を奏でる」というウェアラブル型端末の実験機を、10月26日に開幕したイベント「TOKYO DESIGN WEEK 2016」で初公開した。会場で体験できる。

 「TOKYO DESIGN WEEK 2016」は、東京・新宿区の明治神宮外苑 絵画館前で開催。期間は前期が10月26日~10月31日、後期が11月2日~11月7日。入場チケットは、一般当日券が2,500円。

空手やダンスに合わせて音が出る「MOTION SONIC PROJECT」

 ソニーブースで披露された実験機は、ソニーの若手エンジニアと、アーティストが協力し、テクノロジーとアートの融合で新たな体験を提案するという「MOTION SONIC PROJECT」の第1弾となるもの。このプロジェクトは、「人と音の関係をリデザインする」をコンセプトに、新進気鋭のアーティストなどを巻き込みながら、オープンイノベーションの形で研究開発を進める新たな取り組み。

 ソニーは「TOKYO DESIGN WEEK 2016」のメインテント内にブースを出展し、開発中のウェアラブル型端末の実験機を初公開。リストバンド型の端末で、手首に装着して手を動かすと、それに合わせた音が、机に置かれたスピーカーから出る。

ウェアラブル端末の実験機と、PC、スピーカー
「MOTION SONIC PROJECT」実験機のデモ

 この端末は、センサーやディスプレイなどを備えたメインのユニット1基と、マイクを内蔵した2つのユニットで構成。加速度センサーやジャイロセンサーなどで得たデータをPCにBluetoothで伝送し、PCに接続したスピーカーから音が出る。腕の動くスピードが早ければ素早く大きな音を出したり、ゆっくり動けば長く音を出し続けるといった違いが表現できる。来場者は、ブース内で実験機を装着して体験できる。

手の甲側にあるのがセンサーなどのユニット。その左右側面にあるのがマイク内蔵ユニット

 ユニークなのは、センサーだけでなくマイクから得た風切り音も活用している点で、波形に応じて音声データを、PCを使ってリアルタイムで増幅し、大きな音として出すことなどができる。例えば素早いパンチをすると、耳では聞こえないほどだが小さく発生していた“実際の音”が、周りの人にも伝わりやすい形で表現できる。手首を大きく動かさなくても、指を鳴らした音なども利用できる。音のパラメータをPC側で変更することもでき、「表現できる音の種類は無限大」としている。スピーカーを本体内蔵にするかどうかという検討も今後進めるという。

 展示ブースでは、アスリートと協力して撮影したデモ映像も視聴可能。空手やボディビル、バレエなどの選手が実験機を手首や足首に装着して、体の動きを音で表現する様子が見られる。空手家・宇佐美里香さんの映像を見ると、展示機と同じパラメータで作られた音とのことだが、素早く力強い体の動きと連動したキレのある音は、全く別物に感じる。こうした違いを目と耳の両方で感じることができ、アスリートの技術向上などにも役立てるという。

ボディビルの“キメ”の瞬間に音が出た
ダンスの複雑な動きにも、タイミングが遅れず音が出ていた
宇佐美里香さんの映像

 また、ダンスなどアーティストの表現では、音楽に合わせて体を動かすのが一般的だが、今回の仕組みはその逆で、体を動かすと音が出る。そのため、ダンサーの持つ創造力を、そのまま表現に活かせるという。実際にダンスパフォーマーやバレリーナと協力した映像もMOTION SONIC PROJECTのサイトで紹介されている。

「音楽の原点」に立ち返り、まずコンセプトを世に出す

 ソニーの若手エンジニアである金稀淳氏によれば、このプロジェクトの原点として、「次の時代の音楽体験を探す」目的があるという。「技術の進化で音楽は持ち運べるようになった一方で、複雑になって、使うために学習しなければならなくなった。そこで、楽器の原点である“手を叩く”、“足を踏み鳴らす”といった直感的な楽しさを表現し、身体性と音の体験をリデザインする」と趣旨を説明している。

エンジニアの金稀淳氏

 ソニー ブランド戦略部の谷本尚遂氏は、今回のプロジェクトの特徴として、具体的なビジネスやマーケティング的な視点よりも、まずは“コンセプト”の段階から世に出していくという形を挙げる。ユーザーなどからのフィードバックを得て、将来的にビジネスへとつながっていく可能性を持ちつつ、この取り組みそのものが、新しいブランド戦略として活かされるという。

ブランド戦略部の谷本尚遂氏(左)と、金稀淳氏(右)

 今の実験機は、技術を“素のまま”で出した形に近く、将来の製品/サービスへの発展については未定としながらも、「本体の軽量化などを含めたデザイン的な完成度の向上を、今年度中に実現する」としている。

 その一方で、アーティストやアスリートなどプロフェッショナルとのコラボレーションも進め、「どんな新しいサウンド体験が生まれるか」の実験が行なわれており、その模様はMOTION SONIC PROJECTのサイトでも動画で紹介されている。

 発展の可能性の一つとして、エアギターのような楽器を持たない演奏パフォーマンスを発展させ、ドラムセットが無い場所でも、叩いた場所に合わせて音が鳴る“ドラム人間”のような形も実現するかもしれないという。

来場者もウェアラブル端末を実際に装着して体験可能
ソニーブースでは電子ペーパー腕時計のFES Watchも展示

パナソニックのVR映像体験など、TOKYO DESIGN WEEKに様々な展示

 TOKYO DESIGN WEEK 2016には、企業や大学などによる様々な展示が屋内外で行なわれている。パナソニックは、家電製品の「ふだんプレミアム」コンセプトをVRゴーグルと動画で体験できるコーナーなどを用意。また、スマホを装着した専用ビューワーを会場内のLEDライトにかざすと、情報がスマホ画面に表示されるという「LinkRay」も体験できる。

「ふだんプレミアム」コンセプトムービーのVR体験が可能
高速点滅するLED光を使って、様々なコンテンツを閲覧できるLinkRayの体験

 また、富士フイルムは、機能性材料を使って来場者が様々な“実験”を楽しめる「東京デザイン実験室」を用意。製品化される前段階の新たな素材なども体験できるもので、プロジェクタの映像を透明なディスプレイで“捕まえる”ような体験ができるコーナーなどが用意されている。

富士フイルムの「空中に映像をキャッチ」実験
NTTドコモは、来場者が「1台のスマホをデザインできる」というバーチャル体験展示
AUTODESKは、“バイオからヒントを得たデザイン”というメルセデス・ベンツの「バイオーム」
ナイキは、カスタマイズできる「NIKEiD」のシューズを展示
屋外にも企業や学生などの様々な展示がある