発売迫るBlu-ray版「FF VII AC」のクオリティを体験

-DVDと“別物”な高画質。追加シーンで物語に深み


左からCo.ディレクターの野末武志氏、シナリオライターの野島一成氏、ディレクターの野村哲也氏、プロデューサーの橋本真司氏と、北瀬佳範

4月16日発売

標準価格:
  「BD単品版」4,900円
  「BD+FF XIII体験版セット」5,900円
  「BD+PS3+FF XIII体験版セット」49,980円

 

FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN COMPLETE 通常版
(C)2005,2009 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights reserved. CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA
 株式会社スクウェア・エニックスが、4月16日にBlu-ray Discビデオで発売する3DCGムービー「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN COMPLETE」。そのマスコミ向け試写会が10日、銀座・ソニービル8FのOPUSで行なわれた。会場には作品を手掛けたスタッフも来場し、COMPLETEバージョンに込めた想いや、海外版の展開などを語った。

 さらに、本日10日から、PLAYSTATION 3などからアクセスできる「PlayStation Store」において、ゲーム版「ファイナルファンタジーVII」を、ゲームアーカイブスのタイトルとして配信することも発表。価格は1,500円で、PS3やPSPでプレイすることが可能。BDビデオ版「ADVENT CHILDREN COMPLETE」の発売前に、前作とも言えるゲーム版で気軽に予習/復習ができるようになっている。 


ゲームアーカイブスにゲーム版「ファイナルファンタジーVII」が登場。PSPでもプレイできる

試写会の様子

セット内容タイトル仕様音声価格
BD単品FINAL FANTASY VII
 ADVENT CHILDREN COMPLETE 通常版
約126分
16:9
日本語字幕
(1)日本語
 (ドルビーTrueHD)
(2)英語
 (ドルビーTrueHD)
4,900円
BD単品
FF XIII体験版
FINAL FANTASY VII
 ADVENT CHILDREN COMPLETE
 「FINAL FANTASY XIII」Trial Version Set
(※初回生産限定)
5,900円
BD単品
FF XIII体験版
160GB PS3
特別モデル
FINAL FANTASY VII
 ADVENT CHILDREN COMPLETE
 PLAYSTATION 3
  “Cloud Black”HDD 160GB特別仕様
 +「FINAL FANTASY XIII」 Trial Version Set
(※初回生産限定)
49,980円


■ Blu-ray版で明らかになった“本当のクオリティ”

 CGクオリティの高さから、DVD版の映像にも驚かされたが、BDビデオ版の映像は“別物”と言って良いクオリティに仕上がっている。違いは冒頭の砂漠のシーンから顕著で、岩の凹凸やその陰影からして、BDビデオ版の解像度の高さを感じる。

 ミッドガルの街を上空から見下ろし、カメラが中央広場に近付くシーン。街並みに寄ると、ビルの窓の1つ1つや、階段の手すり、街に暮らす人々などが唖然とするほど詳細に作り込まれていたことがわかる。細かなディティールの表現はDVDの比ではなく、個々にバラバラに動いている群衆が画面一杯に広がると、情報量の多さに圧倒されてしまう。この街を舞台にした後半の“バハムート震”との戦闘シーンは必見だ。

BD版では街並みやモンスターの作り込み、描き込みの細かさがよくわかる

(C)2005,2009 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights reserved. CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA

 解像度の高さと情報量の多さは細かい部分でも良くわかる。顕著なのはキャラクター達の服で、神羅カンパニーの社長(ルーファウス)のローブ。生地の質感や袖口の縫い目までクッキリと見える。ティファやクラウドの髪の毛も文字通り一本一本まで解像されており、バイクに乗ったシーンなどで風になびく様が非常に美しい。グラデーションもなだらかで、暗部の情報量も豊か。黒い服の中の素材の違いも判別できる。

 また、解像度が高すぎるためか、ルーファウスの家の外観や、入口の階段部分、回想シーンに出てくる神羅カンパニーなどで、わずかなCGモデルの“荒さ”を見分けることができた。微小な差異に目がいくのも、BDフォーマットのクオリティだからこそと言えるだろう。

 映像全体としてはコントラストを抑え、若干白っぽいフィルタで覆われている。夜の神羅カンパニーの複雑な外観でも、暗部の形状がより判別できるようになった。映像をあまりクッキリさせ過ぎないことで、“CGっぽさ”を薄める狙いもありそうだ。

右がBD単品版。左はFF XIII体験版付き

160GB HDDのPS3をセットにしたモデルも用意している

 アクションシーンでは、砕け散る木の破片や、樹木の葉、崩れ落ちる高速道路のコンクリート破片などの細かい部分に注目したが、ノイズは見られない。後半になるにつれてアクションシーンのスピードが加速度的に上がっていくが、最後まで破綻なく、気持ちよく観賞することができた。

 サウンド面のクオリティも大幅に向上。バイクのエンジン音や爆音の迫力がアップしているが、ルーファウス(大川透)や、ルード(楠大典)など、低音に魅力がある声優の声で違いが良くわかる。音圧が上がり、ゾクゾクするような低い音が豊富に含まれているので、会話のシーンにより“重み”が出ている。

ソニービル内に各所にADVENT CHILDREN COMPLETEが登場

デジタルカメラのタッチ&トライコーナーの被写体がクラウドのフィギュアになっている

1階のエントランスからADVENT CHILDREN COMPLETEの展示がある

巨大な神羅カンパニーの模型も登場

細部まで作り込まれている発光ギミックも


■ 追加シーンも好印象

 「COMPLETE」バージョンは、従来のDVD/UMDビデオ版と異なり、本編に約30分の追加シーンを用意しているのも特徴。主人公のクラウドと、彼が守ろうとする子供達、デンゼルとマリンとの関係がより詳細に描かれている。

 個人的にテンポが速いと感じていたDVD版と大きく印象が変わり、各シーンが長くなったことで、キャラクターの心情を想像する余裕が生まれ、物語をより深く味わえるようになった。星痕症候群の悲惨さもより詳細に描かれており、緊迫度がアップしたことで、物語が引き締まったようにも感じる。

 さらに、再び歩き出そうとするクラウドをマリンが優しく力づけるシーンも追加。子供達の性格などが詳細に描かれることで、それを守ろうとするクラウドの決意もより自然に、力強いものに見える。「FF VII」の後日談としてではなく、ADVENT CHILDRENという1つの作品としてより完成度が上がったと言えるだろう。

クラウドと子供達の関係がより詳しく描かれている

(C)2005,2009 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights reserved. CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA


■ 海外版も発売予定

 プロデューサーの橋本真司氏は、「DVDが出て4年ほどになるが、Blu-rayの高画質で観ると、まだ色褪せない。改めて“時代の先を見据えた作品だった”と感じた。DVDでは、この作品の膨大なデータを泣く泣くあきらめ、圧縮の比率を変えたりしたが、BDプレーヤーやPS3の普及が進み、(作品のデータ量を収められる)BDの時期が来たな! という気持ち」と喜びを語る。

 さらに、海外版についても「全世界でファンが待っている作品なので、SPEさんと協議をして、発売に向けて詰めの作業をしているところ」(橋本氏)と語り、そう遠くない時期に発売されることを示唆した。

 日進月歩と言われるCG映像の世界で、同作の映像が色褪せない理由について、Co.ディレクターの野末武志氏は、「CGと言うと自動で作られているようなイメージがありますが、スタッフが1コマ1コマ、丁寧に作り上げている作品であり、それが絵に現れているからだと思います」とコメント。1,000カットにも及んだ改良点については「当時時間が無くてあきらめた所や、ユーザーからの意見を取り入れた。という。「(BD版の映像では)色々と新しい発見があると思うので、楽しんで欲しいです」とファンにメッセージを贈った。

ディレクターの野村哲也氏

プロデューサーの橋本真司氏

Co.ディレクターの野末武志氏

On the Way to a Smile EPISODE:DENZEL FINAL FANTASY VII

(C)2005,2009 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights reserved. CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA

 シナリオライターの野島一成氏は、追加シーンについて「元のストーリーは、あれで完成しているものですが、そのメッセージや、各キャラクターが抱えているものがより浮かびあがるようにしてみた」と解説。なお、BDビデオ版には野島氏の小説「On the Way to a Smile FINAL FANTASY VII」のデンゼル編をベースにした新作アニメも特典として収録されている。野島氏は「アニメになると想像していなかったので、凄く嬉しいです」と笑顔を見せた。

 ディレクターの野村哲也氏はBD版でこだわったポイントとして、「シーンとシーンの間」を挙げる。「以前は切り出した1つ1つのシーンにこだわっていたが、今回は通して観た時にどう感じるかを重視した。特に子供達の描写を重視したので、クラウドと子供達のシーンが気に入っています」と見所を紹介。最後に「発売が当初の予定よりズレましたが、そのぶん、内容の濃いものができあがりました。お待たせした分、楽しんでいただけると思います」と仕上がりに自信を見せた。




(2009年 4月 10日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]