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Dolby Visionの明るさと発色をスマホ「AQUOS R2」で。色のプロも認める“底力”

 シャープは15日、スマートフォン初となるDolby Vision(ドルビービジョン)とDolby Atmos(ドルビーアトモス)の両方に対応した「AQUOS R2」の画質などに関する説明会を、ドルビージャパンと共同で開催した。

AQUOS R2

 AQUOS R2は、6型3,040×1,440画素の「ハイスピードIGZO液晶ディスプレイ」と、動画用/静止画用の2つのアウトカメラを搭載し、動画と静止画を同時撮影できる点が特徴。ドコモやau、ソフトバンクから6月8日より販売されている。各キャリアの販売価格は、割引適用後で約4.5~5万円前後、一括の場合は9.5万円前後。

動画用、静止画用のアウトカメラを装備

 ハイスピードIGZO液晶ディスプレイは、応答速度を約25%向上し、残像を抑えたなめらかな表示が可能。スマホでは初となる、HDR方式のDolby Visionと、立体音響技術のDolby Atmosの両対応を実現し、前面をほぼカバーするフリーフォームIGZOディスプレイや、高色域のDCI-P3に準拠したリッチカラーテクノロジーモバイルなどを採用した「スマホのAQUOS史上最高ディスプレイ」としている。のぞき見防止ブロック機能も復活した。

フリーフォームIGZOディスプレイを採用し、前面をほぼカバー
Dolby Vision/Dolby Atmosの両方にスマホで初めて対応
カラーバリエーション
動画/静止画カメラは画角が異なる
手ブレ補正やフォーカス動作なども2つのカメラで違いがある

ディスプレイ開発部門と連携、光学測定器の基準も統一

 ディスプレイ部分の特徴について、シャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部のシステム開発部 前田健次課長が説明。

シャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部のシステム開発部 前田健次課長

 明るい部分から暗い部分まで、忠実な階調で表現可能とするDolby Visionをスマホのディスプレイでカバーするため、AQUOS R2では、DCI-P3対応パネルを開発。輝度/色域/応答速度/省電力をそれぞれ成り立たせる“ベストバランス”を追求したという。

R2のIGZOディスプレイにおける5つのこだわり技術

 DCI-P3対応を実現した大きなポイントとして挙げたのが、IGZOパネルの部分。画素設計や、カラーフィルタ材料、透過率、液晶材料など。光源となるLEDは他のモデルとも異なる最高のパーツを選択。バックライトの光量や均一性なども重視している。多くのスマートフォンは、ディスプレイメーカーによる既存品を採用しているが、シャープは社内のディスプレイデバイス開発部門が連携、一体となって液晶の光学設計にこだわったことが、“ベストマッチングなディスプレイ性能”に貢献しているという。

Dolby VisionをカバーするDCI-P3パネルを開発

 独自の光学調整システムも採用し、全ての階調に対してRGB独立10bitの精度で調整。色や階調特性の精度を向上。また、生産工程における個体のバラつきも調整。どの端末でも正確な色/階調特性が表現できるように、生産ラインで1台ずつガンマや色度を調整している。

 さらに細かいポイントとして、使用する光学測定器の基準も一定に保つため、同一光源を使って校正を実施。通常はズレが多い光学測定器の基準を完全に合わせることで、正確な色や階調特性を再現できる液晶パネルの開発、画質調整、生産を行なえるという。これにより、モデルごとのバラつきだけなく、世代を渡っても継続的に同じ基準で画質調整ができ、ノウハウの積み重ねにも効果的としている。

社内ディスプレイ開発部門と連携
独自の光学調整システムを採用
生産工程における個体のバラつきを調整
光学測定器の同一基準校正

プロ用モニターとスマホで比較

 実際に、ドルビーが制作したカラーグレーディング用のPQモニターと、AQUOS R2のデモ映像を比較。0.005~2,000nitsの幅広い輝度レンジを持つプロ用モニターと比較しても(R2の輝度は非公開)、鮮やかな発色や、自然なグラデーションなど、かなり近いレベルで再現しているのが分かった。

AQUOS R2でDolby Visionデモコンテンツを再生

 発色が鮮やかなディスプレイは、スマホを含めていくつも存在するが、注目したいのは、鮮やかさを無理に強調していないため、特定の色だけ破たんするようなことはなく、モニターと見比べても不自然さがないこと。テレビやモニターより画面密度が高い分、精細感にも目を見張るものがある。なお、テレビなどでDolby Visionに対応する場合はハードウェアで映像処理するが、テレビよりもハイスペックなCPUを持つスマホのAQUOS R2(クアルコムのSDM845を搭載)は、ソフトフェアで映像処理しているという。

それぞれ、上がドルビーのプロ用モニター、下がAQUOS R2

 今回のデモでは、ドルビーが用意したマスター映像を、R2用にHEVCへ変換して、「シネマモード」で表示。実際に映画などの作品をDolby Visionの画質で観るには、映像配信サービス側のスマホ向け対応を待つことになる。既にテレビ向けの映像配信やUHD Blu-rayではDolby Vision対応作品も登場している。今回、スマホの画面サイズでもHDRの良さを実感できたため、スマートフォン向けコンテンツの対応にも期待が高まった。

カラーリストが「マスターモニターに近い」と評価

 上記のようにシャープが“クセのない、素直なディスプレイ”を作り上げることで、ドルビー側としては、Dolby Visionで目指している「製作者が意図した通りの映像を再現すること」を、より正確に行なえるようになったという。

 ドルビージャパンの映像技術部 真野克己ディレクターは、現実世界における明暗差の大きさと、それを知覚できる人間に対し、現在のディスプレイがカバーできていないことを指摘。Dolby Visionではシーンごと(映画などの場合)、フレームごと(ライブ放送など)に変わる明るさや色に対し、動的なメタデータを活用して現実世界のカラーボリュームをディスプレイにマッピング。白飛びやディテールの損失を防ぎつつ、コンテンツの制作者が意図した通りに再現できるという点を紹介した。

ドルビージャパンの映像技術部 真野克己ディレクター

 Dolby Visionに対応したAQUOS R2のディスプレイ性能については「カラーボリュームの大きさ」や「リニアリティ」、「暗部で暴れたり明部で急に飽和しない階調」を挙げた。「社内のカラーリストがR2を見て、『こんなにマスターモニターに近いデバイスを見たのは初めて』と言っていた。画像チューニングを行なった専門家も『チューニングし甲斐のあるデバイス。どこまでもプロモニターに寄せていける。デバイスの底力がある』と評価していたという。

現実世界の明るさ/暗さの例
日光下でSDRカラーボリュームで表現できる範囲と、4,000nitsのHDRモニターで表示できる範囲の違い。赤い部分はSDRモニターで表示できていない
シーン/フレームごとに動的なメタデータを使って、トーンマッピングを行なう
Dolby Atmos立体音響は、ヘッドフォン利用時に対応。デモコンテンツを再生すると、通常のステレオヘッドフォンで、音に包まれるような感覚が味わえた