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新生ビクター、木の振動板10周年の最上位イヤフォン。楓や漆採用で約18万円

JVCケンウッドは、新生ビクター(Victor)ブランド製品第3弾となる、木の振動板を用いたイヤフォン「HA-FW10000」を11月上旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は18万円前後。

2008年に業界初となる木の振動板を搭載した「HP-FX500」を発売して以来、進化を重ねてきたWOODシリーズイヤフォンの10周年の節目に登場したフラッグシップモデル。特徴であるウッドドームドライバーユニットが進化したほか、日本産の楓や漆、阿波和紙、絹などの天然素材をボディやケーブルに採用している。製造は日本国内で行なっている。

新たなウッドドームドライバーユニット

新開発のウッドドームカーボン振動板は、振動の減衰特性が高いカバ材から独自の薄膜加工技術により削り出した50μmウッドドームを、カーボンコーティングしたPET振動板に組み合わせている。振動板外周部には適度なしなやかさを、振動板中央のドーム部には高い強度を持たせ、美しい響きと緻密な表現力を実現したという。ドライバー径は11mmで、ドライバーケースはチタニウム素材を使用し、音の雑味を排除。独自設計のエアダンパーにより、振動板を正確に動作させる。

ハウジング部に楓を使用
ハウジングや吸音材などの特徴

駆動力とリニアリティを向上したハイエナジー磁気回路により、原音に忠実な再生を実現。軽量なCCAWボイスコイルによる正確な振動板の振幅で、繊細なニュアンス表現を可能とした。

ハウジングとウッドスタビライザーには、日本産の楓を使用。無垢材から削り出し、硬度の高い漆塗りにより響きを調整。吸音材には天然素材の阿波和紙と絹を採用している。ハウジングとスタビライザーの漆塗りは、和楽器にも使われる漆塗りを採用。職人が1つ1つ多層塗りを施した。漆塗りとメタル素材の組み合わせで、「フラッグシップモデルにふさわしい上質なデザイン」としている。

高い強度のステンレスノズルにより、音の雑味を排除。高解像度でピュアなサウンドを実現したという。独自のスパイラルドットイヤーピース技術を応用し、ユニット前面に不要な音を拡散するドットを配置した「アコースティックピュリファイアー」を採用。分解能を改善し、自然な音の広がりを実現している。

イヤフォンケーブルは、新たな芯線構成により音の伸びと繊細な表現を追求。天然素材の絹を採用しており、余分な振動を抑制して原音の持つピュアなディテールや雑味のない滑らかな響きを再現するという。本体からプラグまでL/Rを完全に分離した構造とすることでセパレーションを改善、空間表現力を向上高めている。高品位な極厚金メッキプラグにより接触を安定させ、リッチな響きを実現する。

ケーブルはMMCX端子で着脱可能。MMCX端子は独立したポッドに収納し、ハウジングから分離。ハウジング内の音響設計の自由度を確保し、形状を0.1mm単位で調整。音質を徹底して追求している。

MMCX端子でケーブル着脱可能

再生周波数帯域は6Hz~52kHz、出力音圧レベルは102dB/mW、インピーダンスは16Ω。ケーブルを除く重量は約21.5g。

イヤーピースは、内壁に設けたスパイラル配列のドットにより、音質劣化の原因となるイヤーピース内の反射音を拡散減衰させるスパイラルドットイヤーピースを進化。純度の高いクリアサウンドを実現した「スパイラルドット+(プラス)イヤーピース」が付属する。肌に近い力学特性を持つ素材のSMP iFitを採用。「イヤーピースの存在を忘れるほどのナチュラルなフィット感」としている。サイズはS/MS/M/ML/Lの5種類。

付属のイヤーピースやケース

ビクター復活の第3弾。究極の:ウッドコーンコンポ集大成、海外展開も

国内ヘッドフォン市場は、Bluetoothのイヤフォンが大きく伸長し、9月時点では市場全体が前年比2.3倍となったのに対し、JVCケンウッドは前年比約6倍で伸長。イヤフォン全体における同社モデルの平均市場価格は前年比約20%上昇しており、今後も高付加価値化を進めていくという。

国内Bluetoothイヤフォン市場におけるJVCケンウッド製品のポジション
平均市場価格
WOODシリーズ10年の歴史

2017年より始動した新生ビクターブランドは、第1弾モデルとしてヘッドフォンリスニングでもスピーカーで聴いているような頭外定位を実現するヘッドフォン、ポータブルアンプ、プレーヤーアプリに使うEXOFIELD個人データもセットにして発売。その後、2018年6月に復刻したオルゴール「RJ-3000MK2」に続き、今回のイヤフォンは第3弾となる。

新生ビクター第1弾のWiZMUSIC90

上記「WiZMUSIC」の新たな展開として、ヘッドフォン「HA-WM90-B」の単品販売を11月中旬に開始することも発表された。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は35万円前後。この製品については別記事で掲載している

さらに、ビクターブランドの新たなモデルとして、ウッドコーンスピーカーのオーディオシステム2機種を2019年2月に投入することを発表。“ビクタースタジオと共に磨き上げるウッドコーンサウンド”を実現する「Tuned by VICTOR STUDIO」製品として投入する。

2019年2月発売予定のウッドコーンコンポ2機種が参考展示
ビクターブランドの展開
新ウッドコーンコンポの特徴

ウッドコーンシリーズの“スピーカーは楽器でありたい”というコンセプトを追求し、初号機発売から15年を経て進化を続けるシリーズの最新モデルであり、同社音質マイスターの集大成として、誕生当初のビクターブランドを改めて冠する形で登場する。

長年培ったウッドコーン音響技術を継承した木の振動板が進化し、さらに“原音追求”を徹底。192kHz/24bitのハイレゾを含む様々なデジタル音源再生が可能。Bluetooth再生にも対応し、CDや圧縮音源なども独自の高音質化技術K2 TECHNOLOGYにより“マスタークオリティに迫る音質”で再生可能とする。

JVCケンウッドのブランド戦略部 山本耕志部長は、2017年のビクター復活のコンセプトを改めて説明し、イノベーションの1つの領域として、音に関しては「原音追求」思想を再定義すると説明。今回発表のイヤフォンなどに続き、こだわりの音作りから生み出す製品やサービス、ソリューションにビクターブランドを付与していく方針を示した。

JVCケンウッドのブランド戦略部 山本耕志部長
ビクターブランドのコンセプト
原音探究を再定義

また、様々なアーティストやエンジニアによって音楽が制作されるビクタースタジオと連携したブランドも展開。音質だけでなく機能や使い勝手、コンセプト、デザイン、価格までの製品トータルでビクタースタジオが監修/プロデュースした「Produced by VICTOR STUDIO」と、音質面でビクタースタジオが責任をもってチューニングした「Tuned by VICTOR STUDIO」、音以外のモノづくりにビクタースタジオのノウハウが活かされた製品などに幅広く付与する「Made by VICTOR STUDIO」の3ブランドが加わる。

具体的な製品としては、JVCブランドの既発売スタジオモニターヘッドフォン「HA-MX100-Z」が今後ビクターブランドに変わり、「Produced by VICTOR STUDIO」製品となる。また、ウッドコーンやK2などの技術開発は「Tuned by VICTOR STUDIO」に分類。様々な音楽シーンを彩るアイテムが「Made by VICTOR STUDIO」製品となる予定。

VICTOR STUDIOと連携したブランドも

なお、現在ビクターブランドは国内のみだが、「市場環境や音の価値観を見ながら、段階的にグローバルに活用する」という。

そのほか、「原音探究思想追い求める」という“CLASS-Sシリーズ”ヘッドフォンは、今回の新製品を皮切りに、今後の新製品からはビクターブランドに切り替わる方針も発表。これに伴い、CLASS-Sシリーズは収束する形となる。

CLASS-Sシリーズの製品も今後ビクターブランドに

同社技術開発部 主幹 音質マイスターを務める秋元秀之氏は、ビクターブランドのテーマでもある「原音」の捉え方が、時代の変化と、音楽を届けるメディアによって進化してきたと説明。「アナログレコードの頃は“その場で鳴っている生音”であり、『音の技術者であれば、サントリーホールの一番いい席で聴いてこい』とされていたと聞く。CDになると、デジタルデータ上まったく同じものが届けられるため、原音の基準は“マスターテープ”に変わり、多くの作品が作られた。そして、スタジオクオリティと同じハイレゾが誕生した今、原音について私は“そのまま、創ったままの音”と考えている。作り手と聴き手が同じものを手に入れられるようになったからこそ、聴く環境が重要になってくる」と述べた。

音質マイスターの秋元秀之氏
「原音」の捉え方の移り変わり

音楽の再生機器は、アーティストが伝えたい音に対し、「低音が強めの機器」や「高域が強めの機器」が、それぞれのユーザーの好みに合わせて存在している現状について「素晴らしい楽しみ方ではあるが、アーティストが伝えたかったものだとは限らない。(作り手と聴き手の)音楽が同じである以上、機器では色付けがあると、基本的なものが違ってしまっている。制作側と同じ環境で聴いてもらえれば、アーティストの思いや制作者のこだわりをそのまま感じていただける」と説明。

音楽の作り手と聴き手が同じ機器を使用することで、こだわりを理解できるという

さらに、「重要なのは、音響製品の作り手が、制作現場で作られるのがどんな音か知っていること。ビクタースタジオでは日々音楽を作っており、モニターヘッドフォンなど、プロフェッショナルの現場で使われている製品が多い。実際に、ビクタースタジオで制作するアーティストの多くが、自身のこだわりのバランスやサウンドを、これらの機器で最終チェックしている。これらの製品を使えば、制作現場の音をそのままご自宅で確認いただける。好きなアーティストが、どこにこだわって曲を作ったのか、どういう風に聴いてOKを出したのかが共有できる。それが音楽の楽しみ方であり、音響製品が元来持つ役割ではと思っている。“そのまま”を届けることを、車の中まで実現しているのは、他社にはない強み。その音作りの根幹がビクターのブランド」とした。