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富士フイルム初のプロジェクタ「Z」。回転レンズで6方向投射の超短焦点

富士フイルムは、世界初の「屈折型二軸回転機構レンズ」を搭載し、従来設置できなかった場所でも大画面投射ができる短焦点フルHDプロジェクター「FP-Z5000」を4月より発売する。主にオフィスや文教、サイネージ等の業務用途を想定。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は100万円未満。カラーはブラックとホワイト(今夏発売予定)の2種類を用意する。

FUJIFILM「FP-Z5000」

既報の通り、独自の回転式レンズを搭載したDLPプロジェクター。「民生・業務用プロジェクターにおいてFUJINONレンズは数多くの納入実績を持つが、プロジェクターの開発・発売は創業から85年となる富士フイルムとしては初めて」という。

鏡筒部分を手動で回転させることで、さまざまな方向へ映像が投写できる独自の「屈折型二軸回転機構レンズ」を採用。レンズは上・下・前・後・左・右の向きに変えることができ、本体を動かさずに壁やスクリーン、天井や床などへ投射できる。またレンズ部分を回転させるだけで、横長投射から“縦長投射”への切り替えも簡単に行なえる。

レンズ前玉とユニークな形状の機構をモチーフにデザインした「Zロゴ」。Zには“究極の”という意味も込められている
2軸で6方向に回転できる投射レンズ部分

ガラスレンズとプラスチック製の非球面レンズを組み合わせたレンズ構成で、使用枚数は20枚以上。短焦点設計とすることで、75cmの距離から100インチの大画面投射ができる。投写距離を大幅に削減することで、サイネージなど限られた空間を最大限に活用した演出が行なえる。

屈折型二軸回転機構レンズのカットモデル
仕様上の投射サイズは70(0.5m)~300インチ(2.3m)だが「6.8mの距離を取れば、本体を床置き設置したまま、高さ3.8mの場所に900インチ(横20×縦11m)の映像も表示できる」とのこと

87mm大口径球面レンズの広いイメージサークルで上下82%・左右35%のレンズシフトを実現。明るさ5,000ルーメンクラスの短焦点プロジェクターとしては、最大クラスのシフト幅という。シフト・ズーム(最大1.1倍)・フォーカス操作は全て電動で、付属のリモコンからコントロールできる。

上下82%・左右35%のレンズシフトを実現

カメラレンズや放送用、シネマ用など、長年に渡って培ってきた高度な光学技術により、映像周辺部の歪みやレンズシフト時に生じる収差を低減。またプロジェクターの製造は日本国内で実施し、1台1台高精度な光軸調整を行なった上で出荷するという。

表示デバイスは、0.65型/1,920×1,080ドットの単板DLPチップ。高輝度かつ耐久性とメンテナンス性に優れるレーザー光源を採用し、明るさは5,000lmを実現。ネイティブコントラスト比は12,000対1。アイリス機構は搭載しない。映像モードには「sRGB」を用意するも、色域カバー率は非公表。

日本国内で製造。1台1台高精度な光軸調整を実施するという
ピクチャーモードは、スタンダード/シネマ/sRGB/明るいの4種類を予定

縦置き、横置きでも投射が可能で、レンズ部分を回転させることでプロジェクター本体のサイズに収まるボディデザインを採用。エッジ部分には丸みを持たせ「スタイリッシュな外観と洗練されたデザインを追求した」という。

3系統のHDMI入力のほか、DC5V給電可能なUSB、RJ-45を用意。最大消費電力は700W。リリース時点での騒音レベルは公表されていないが、技術スタッフによれば「30dB後半に収める」とのこと。

外形寸法は470×375×108mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約12kg。リモコン、1.8m HDMIケーブル、縦置き用スタンド、レンズキャップなどを付属する。

縦置き時
レンズ収納時

Z5000は第一弾。市場の反応やニーズを踏まえながらラインナップを順次展開

登壇した富士フイルムホールディングス代表取締役社長・COOの助野健児氏は「富士フイルムは19年1月20日に創業から85年を迎えた。当社は社会の変化、そしてフィルム需要の激減という困難を乗り越え、“ネバーストップ”の精神とチャレンジで今日の飛躍を生み出した。今後我々は、社会の変化を予測してそれに備える企業から“変化を作り出す企業”へと変貌する。今回の新製品もその一歩だ。搭載した世界初のレンズ機構部は、一朝一夕で作り出せるものではなく、我々が1944年から培ってきたレンズ技術・資産があってこそ。レンズは我々が持つ基幹技術の1つ。今後も多くのイノベーティブな製品で新たな領域に積極的に展開し、光学デバイス事業をさらに拡大させる」と語った。

富士フイルムホールディングス 代表取締役社長・COO 助野健児氏

同社光学・電子映像事業部で事業部長を務める飯田年久氏は、Z5000を「これまでプロジェクターで投射したくてもできなかった場所に設置できる画期的なプロジェクター」と説明。

「市場は780万台/年を推移し、需要は頭打ちだ。これは設置済みプロジェクターの買い替えが中心であり、潜在需要に対して新たな設置や用途が提案できていないからと考える。富士フイルム初のプロジェクター・Z5000は、世界初の屈折型2軸回転機構レンズ、75cmで100インチの超短焦点、5,000ルーメンの高輝度で広範囲なシフト幅という、これまで無かったイノベーティブな製品だ。潜在ニーズの制約を解決することで、市場を再創造するプロジェクターになると思っている。我々はZ5000を足掛かりに、市場の反応やニーズを踏まえながら複数のラインナップを順次展開する。4K/HDRの需要があることも把握しているし、富士フイルムならではの色へのこだわりもある。引き続き様々な検討を行なっている。Z5000はあくまで第一弾。プロジェクター事業を早期に、100億円規模へと成長させたい」と抱負を話した。

富士フイルムホールディングス 光学・電子映像事業部 事業部長 飯田年久氏
天井から横置き設置した状態で、縦長の映像を投射した例
床にZ5000を3台設置して、横3面に水族館の映像を投射した例
床置きから天井へ、天井から床へ向けて、上下2面に映像を投射した例
ホテルフロントでの使用例。プロジェクターはカウンターのテーブル内に格納。短焦点投射のため、従業員が受付にいても映像に被りにくいという