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頭部を包み込む、曲面型6K有機ELディスプレイ。高精細3次元映像も

没入型VRディスプレイ

NHKは、6月1日からオンライン開催している「技研公開2021」において、超薄型・軽量のフレキシブルディスプレイを湾曲させた「没入型VRディスプレイ」を発表した。

4K30型のフレキシブル有機ELディスプレイ3枚を貼り合わせた51.3型の画面サイズを、視聴者の頭部を包み込むように曲げて設置することで、約180度の視野角をカバー。解像度は6,480×3,840ドットで、約37cmの視距離でも画素構造の見えにくい画素ピッチ0.173mmを実現した。

さらに、映像・音声に合わせて振動する椅子(いす型触覚デバイス)を組み合わせることで、より臨場感を高めた個人視聴用システムとしている。

没入型VRディスプレイに使った有機ELディスプレイは、薄いフィルム基板の上に有機EL素子を作製することで、薄く、軽く、曲げられる構造を実現。画素のサイズを1色あたり0.057mmとごく微小とすることで、30型で4K解像度を実現している。

4K30型のフレキシブル有機ELディスプレイ

画質を向上した「光線再生型3次元映像システム」

NHKでは、2次元映像では体験できない高い臨場感や没入感を目指す3次元テレビを研究開発しているが、その一環として「光線再生型3次元映像システム」も紹介されている。

光線再生型の3次元映像は、被写体からの光線を空間に再現することで、見ている人が水平・垂直方向に動いた場合も、高精細で自然な3次元映像を視聴できるというもの。

光線再生型3次元映像システム

今回開発した表示装置は、被写体からの光線を、水平・垂直に異なる位置(視点)から撮影した多視点映像で再現することで、自然で見やすい3次元映像を表示。3次元映像の解像度を向上させるために、画素ずらし機能を持つプロジェクターでこの多視点映像を高解像度化したという

さらに、光線の方向をずらす光学素子を通し、高解像度化された多視点映像を多重表示。結果、奥行き再現範囲の広いハイビジョン解像度相当の3次元映像表示を実現した。

従来からプロジェクターの表示性能を改善したうえで、8Kプロジェクター2台、4Kプロジェクター4台の合計6台のプロジェクターを並列配置。プロジェクターの配置にあわせた表示光学系を新たに開発することで、光線数を増大し、水平視域角度を従来の2倍以上(30度以上)に拡大している。

表示技術の概要

従来よりもカメラ台数を削減した、新しい撮影装置を開発。

カラーカメラ24台のカラーカメラアレーと、カラー・デプスカメラ1台で構成したもので、カラー・デプスカメラの前にはレンズアレイを配置することで、4視点分のカラー映像と奥行き距離情報を取得する。

撮影装置

3次元映像の再現に必要な映像は、様々な角度から被写体を撮影した多視点映像で構成されるが、少ない台数のカメラで多視点映像を取得するため、カメラ間の視点の映像は視点内挿処理により生成したという。

多視点映像生成処理の流れ

カメラ間の視点位置の映像を生成するには、カメラアレーの映像の奥行き距離を推定することが必要だが、このシステムではカラー・デプスカメラで取得した奥行き距離情報を用いることで高精度に奥行き距離を推定。生成したい視点の映像の周辺のカメラのカラー映像と、奥行き距離情報を使うことで、カメラ間の視点位置の映像を生成することができるとしている