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歴代「ジョーカー」の名優たちに共通点? “最凶の悪”誕生の過去
2019年9月12日 07:00
心優しい大道芸人の男が、“悪のカリスマ”へと変貌を遂げていく姿を描いた映画「ジョーカー」が、いよいよ10月4日に日米同日公開される。これまでジャック・ニコルソンやヒース・レジャーなど多くの名優が演じてきたジョーカー役を今回務めたのはホアキン・フェニックス。彼らには高い演技力だけでなく、“怖いもの知らず”という共通点があるという。
第76回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金獅子賞を獲得した同作品は、早くも「本年度アカデミー賞最有力」の呼び声も高い。監督・製作・共同脚本はトッド・フィリップス、共同脚本スコット・シルバー。キャストはホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロほか。配給はワーナー・ブラザース映画
監督のトッド・フィリップスは「これまでジョーカーを演じた俳優に共通しているのは、皆怖いもの知らずの要素があることだ」と語っている。ジョーカーというキャラクターは、インパクト大のルックスと劇場型の犯罪で人々の心をむしばむ、唯一無二の悪のカリスマ。ジョーカーを演じる俳優には、身体的特徴だけでなく、その狂気をはらんだ内面の表現までも求められる。
ティム・バートン監督の「バットマン」(1989年)でジョーカーを演じたのはジャック・ニコルソン。実力派俳優がアメコミのヒーロー映画に出演することは、当時としては異例のことだった。既に名優としての地位を不動のものにしていたニコルソンだが、ジョーカー役をきっかけにイメージが変わることも恐れず、新たな役へ挑戦。結果的にはその演技力の高さを証明する形となった。
「ダークナイト」(2008年)でジョーカーを演じたのはヒース・レジャー。演技力は認められていたものの、“イケメン”なことから、合わないのではという声も挙がっていた中でジョーカー役を引き受ける。しかし彼は、ニコルソンが作り上げたイメージを圧倒的な役作りと演技力で塗り替え、“怖いもの知らず”な俳優であることを証明した。
「スーサイド・スクワッド」(2016年)でジョーカーを演じたのはジャレッド・レト。2人の名優がそれぞれの確固たるジョーカー像を作り上げた中でも、その役を引き受けた。撮影時のエピソードとして、レトは常にジョーカーとして振舞っており、その一環として出演者たちにクレイジーすぎる贈り物をしたというエピソードもある。
今回ジョーカーを演じるホアキン・フェニックスも、3度のアカデミー賞ノミネート実績を持つ名優。フィリップス監督は彼について「怖いもの知らずの要素が備わっている。彼はその年代で最も素晴らしい役者の一人だ。彼のような人は他にいないよ。彼は中途半端なやり方はせず、常に演じる役に全てを投じるんだ」と太鼓判を押す。出演作品に対して徹底的なアプローチを行ない、以前は俳優を引退してラップミュージシャンへ転向すると宣言。その後2年間は実際にミュージシャンとして活動した。しかし実はモキュメンタリー映画のための演出だったと明かし話題になった。
フィリップス監督とともに、これまで描かれてきたジョーカー像に囚われず、ジョーカーの過去を描くという新たなアプローチに挑戦。完成した作品は第76回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に出品され、今年一番の拍手喝采とともに8分間のスタンディング・オベーションが巻き起こったという。現地時間9月7日のコンペティション部門の受賞式では、最高賞となる金獅子賞を受賞。世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)でアメコミ作品が最高賞を受賞するのは初の快挙。
「どんな時も人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸にコメディアンを夢見る、孤独だが心優しい男アーサー。都会の片隅でピエロメイクの大道芸人をしながら母を助け、同じアパートに住むソフィーに秘かな好意を抱いている。笑いのある人生は素晴らしいと信じ、ドン底から抜け出そうともがくアーサーはなぜ、狂気溢れる“悪のカリスマ”ジョーカーへと変貌したのか? 切なくも衝撃の真実が明かされる。