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あのHondaが、オーディオ用バッテリー電源開発。高音質パーツ投入、200台限定
2019年10月17日 11:35
Hondaは、オーディオ機器向けの蓄電機「LiB-AID(リベイド)E500 for Music」を2020年2月中旬に発売する。価格は27万円。200台限定で、同社の専用サイトで購入申込みを行なう。申し込み多数の場合は抽選となる。
受付期間は2019年10月17日~2019年12月18日までだが、4期に分けて、1期50台、計200台販売する。そのため、早期に申し込みすると、抽選の回数が多くなるマルチチャンス抽選となっている。詳細は申込みページを参照のこと。
なぜHondaがオーディオ向け蓄電機を作ったのか?
Hondaは1948年に創業。創業当初はオートバイを手掛けていたが、そのエンジン技術を農業や漁業に携わる人の重労働軽減にも役立てようと、汎用事業も開始。耕運機や発電機、除雪機なども開発するようになり、現在ではパワープロダクツとして、2輪、4輪と共にHondaを支える事業になっている。
発電機の歴史としては、1965年に「E300」という小型モデルを発売。もともと、1959年に、ポータブルテレビを作っていたソニーの井深大氏から、外でもそのテレビが使えるように、小型の発電機を作ってくれないかと本田宗一郎氏に打診があり、創業者2人の交流から小型発電機が生まれたという。
その後、正弦波インバーター搭載機「EU9i」(1998年)、カセットガス燃料タイプの「エネポ」(2010年)なども登場。2017年には燃料を使うエンジンではなく、より手軽に使えるバッテリータイプの「LiB-AID E500」(8万円)という製品も開発。
このE500は、家庭のコンセントで手軽に繰り返し充電でき、最大出力500W。AC100Vが使え、USBポートも2個備えるなどの特徴があり、車に載せてキャンプなどでアウトドア趣味を楽しむ人や、屋外でのドローン充電、天体を自動追尾する望遠鏡の電源として使う天文ファンなど、様々な人に活用されている。
そんな野外用途が中心の製品だが、Hondaが利用用途をモニターや購入者アンケートで調査したところ、約5%のユーザーが、オーディオ機器で使っているという結果が得られ、さらにオーディオファンからの熱いメッセージも寄せられたという。
これを受けて、E500をベースとしながら、専用パーツを採用し、オーディオ電源としてのクオリティを高めたのが「LiB-AID E500 for Music」となる。
E500 for Musicの特徴
家庭のコンセントの電気には、家電を使用する際に発生する電圧の変動や電線を伝わってくるラインノイズなど、オーディオの音質に影響を与える微細なノイズが含まれている。
E500は、リチウムイオン電池を搭載するバッテリー電源だが、プレーヤーやプリアンプなど、音源の上流に位置する機器の電源を、商用電源からE500に置き換えることで、音質に影響を与えるノイズ源から完全に独立したオーディオ環境が構築できるという。
ベースモデルと同様に、リチウムイオン電池からの直流電流を、適切な電圧まで昇圧しDC-AC変換することで、高い精度で正弦波の交流100Vを生成できるインバーターユニットを搭載。⼀般的なノイズフィルターや波形の補正を行なうオーディオ電源とは異なり、商用電源による影響を受けず、理想的な正弦波が生成でき、「オーディオシステムの性能を最大限に引き出す」という。なお、Hondaが正弦波インバーターを搭載した携帯発電機を発売したのは1998年で、以来、放送局や音楽業界など、電源に対して高い品質を要求する現場からも支持されているという。
電池容量は377Wh。電気の取り出し口として、交流コンセント×2口、USB出力×2口を搭載する。50W時で、約4~6時間の使用が可能。充放電寿命は1,000サイクル以上。充電する際は、付属のACアダプタを使用。充電時間は約6時間。
E500 for Musicの特徴として、コンセントに、フルテックの「GTX-DNCF(R)」を、E500搭載用に専用設計したものを搭載。導電性に優れる純銅にロジウムメッキを施した電極により、安定的な給電ができるという。
また、コンセント本体部の樹脂に調合されたナノサイズのセラミック・カーボンパウダーで制振性を高め、静電気対策として特殊素材「NCF」によって帯電を抑制している。
このコンセントの周囲にあるパネルも、通常モデルとは異なる。僅かな振動も押さえ込むために、高い振動減衰能の誇るマグネシウム含有アルミ合金のヒドロナリウムを採用。「ハイグレードコンセントの性能をフルに引き出す」という。また、耐腐食性の高いヒドロナリウムの表面にアルマイト処理を施すことで、長期間にわたって高い効果を発揮できるとする。
筐体内部のAC電源のケーブルには、高い導電率102.3%IACSを誇るオヤイデ電気の精密導体「102 SSC」を採用する、オーディオ用ハイグレード配線材を使用。
軽量樹脂ボディーの内面には、電磁波シールド材を配置。空中を電磁波として飛来する放射ノイズからシールド。シールド材のフィラーには、電磁波に対して効果を発揮する複合機能性顔料を配合。パワーアンプなどが発する機器間の相互ノイズ、高周波領域のノイズ低減に貢献するという。
外形寸法は182×266×248mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は5.4kg。
音を聴いてみる
Hondaが手掛けたオーディオ用バッテリーという時点で、極めてユニークな製品だ。もともとアウトドアで使うバッテリーをベースとしているため、取っ手がついていたり、重量が5.4kgに抑えられているなど、部屋の中で気軽に持ち運べるのも面白い。
電池容量は377Wh、大出力のパワーアンプを繋ぐのではなく、CDプレーヤーやネットワークプレーヤー、小型アンプなどを繋ぐ使い方がマッチするだろう。
CDプレーヤー、薄型アンプ、ブックシェルフスピーカーを用意して、壁のコンセントとE500 for Musicのサウンドを聴き比べてみたが、確かに、プレーヤー、アンプどちらで使っても効果がある。
すぐにわかるのはSN比の改善で、音場がより広く、特に奥行きが深くなる。そこに楽器やボーカルの音像が定位するのだが、その音像の輪郭がE500 for Musicではより深くなる。そのため、音像自体が立体的に、そのアーティストがリアルに“その場にいる感じ”がアップする。
DAC内蔵のアンプや、ネットワークプレーヤー機能搭載AVアンプなどに、使用していないデジタル系回路を落とし、音の純度をアップさせる「ピュアダイレクトモード」などを搭載している機器が存在するが、音の改善方向としては、そうした機能を使った時の変化に似ている。
静かでシンプルな楽曲で効果がわかりやすいが、低域のビートのキレが心地よいロックでも違いがわかる。特に低域の分解能がアップし、ベースの弦の動きなども見やすくなる。
E500 for Musicは、ベースモデルのE500に、オーディオ用コンセントなどの高音質パーツを投入したモデルと表現できるが、その開発にあたっては、コンセント1つ選ぶ際も、20種類以上のコンセントを集め、音質を比較しながら決めるなど、オーディオのノウハウを蓄積しながら開発していったという。
コンパクトさだけでなく、オーディオ用バッテリー電源として27万円という価格に抑えているのもポイントだ。100万円近い製品も多い、オーディオ用バッテリー電源には“ハイエンドシステムを持っている人が使うもの”というイメージもあるが、E500 for Musicはより手軽に、クリーンな電源によるオーディオのサウンド改善が試せる製品として注目したい。