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クリプトンのロングセラースピーカーが進化。ペア28万円「KX-1.5」

ブックシェルフスピーカー「KX-1.5」

クリプトンは、ハイレゾ対応ながらコストパフォーマンスも追求した“普及型リファレンス”と位置づけるブックシェルフスピーカー「KX-1.5」(ワンポイントファイブ)を11月上旬に発売する。価格はペアで28万円。

クリプトンは2014年に、価格を抑えた「KX-1」を発売。コストパフォーマンスの高さからロングセラーモデルとなり、約7年に渡って販売しているが、売り上げは現在も好調を維持しているという。

一方で、使っているパーツが手に入りにくくなっている事や、上位機のKX-3シリーズで培った2ウェイ密閉型のノウハウ、KX-0.5で開発したカーボンポリプロピレン振動板のウーファーといった、新しい技術も蓄積されている事から、それらを投入して新たに作られた後継機が「KX-1.5」となる。

ロングセラーモデル「KX-1」

2ウェイで、ウーファーには新設計の170mm径、カーボンポリプロピレン(CPP)コーン型ウーファーを採用。このCPPコーンは「KX-0.5」の時に開発されたもので、KX-0.5は140mm径だが、今回はKX-1.5用に170mm径のものが作られた。

クリプトンのスピーカーには、ウーファの振動板にクルトミューラーコーンを使用、エンクロージャが密閉、磁気回路に希少金属のアルニコマグネットを使うという3つのポイントがあるが、クルトミューラーコーンやアルニコマグネットは高価かつ希少で、価格を抑えたモデルで採用するのは難しい。

そこで、新たな素材やアイデアでユニットを使い、価格を抑えながら高音質を追求したのがCPPコーンとなる。強度や内部損失が最適なものになるよう、カーボンとポリプロピレンの配合を調整。軽くて高剛性な振動板は歪みが極めて少なく、伸びやかな低域再生のために低域の共振周波数を35Hzとしている。ボイスコイルはエッジワイズのロングトラベル4層巻。線積率を挙げ、高能率でトランジェントの良い低域を実現したという。磁気回路にはアルニコではなくフェライトを使っているが、フェライト特有の音を出さない工夫も施した。

カーボンポリプロピレン(CPP)コーン型ウーファーの170mm径を新たに開発

ツイーターは、透明感を高め、高域周波数レンジ拡大を図った砲弾型イコライザー付35mmピュアシルク・リングダイアフラム型。50kHzまでの帯域を確保している。

内部配線材にもこだわっており、ウーファー、ツイーターの各内部配線材に、単品売りしている高級スピーカーケーブル2種類を採用。ウーファー用としては、絹の介在を使ったPC-Triple Cスピーカーケーブルを、ツイーター用には、高域のリンギングを抑えるためにマグネシウム芯線を採用。その外周にPC-Triple Cを6本撚りした構造の新開発スピーカーケーブルを採用。ユニットの特徴に合わせ、試聴を繰り返してチューニングした。

エンクロージャーは密閉型。吸音材にこだわり、純毛(動物性)低密度フェルトと、ミスティックホワイトをハイブリッドで使用。ウーファーの低域特性との相乗効果で、トランジェントの良い、豊かで伸びやかな低域再生を実現したという。

エンクロージャーの表面には、スモークユーカリの突板をポリウレタン塗装で仕上げている。針葉樹系高密度18mm厚パーチクルボードと、裏板にはMDFを採用。高剛性な密閉型としている。

ネットワークは歪みを極小まで抑えるため、抵抗値の低い直径1.2mmの空芯コイルを採用。ケース入りのピッチ材で振動を抑えた低損失メタライズドフィルムコンデンサなども採用している。

新たに、バイワイヤリング接続にも対応。内部配線材と同じ、PC-Triple Cを使ったショートワイヤーも付属する。

定格入力は50W、最大入力は150W。出力音圧レベルは88dB/W・mで、インピーダンスは6Ω。クロスオーバー周波数は3,500Hzで、全体の再生帯域は40Hz~50kHz。外形寸法は224×319×380mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は9kg

音を聴いてみる

KX-1とKX-1.5を聴き比べてみた。KX-1.5は新たに対応したバイワイヤリング接続をしている。

全体的な違いとして、KX-1.5の方がよりクリアで、1つ1つの音がクッキリと鮮やかに描写される。情報量も多く、ユニットや内部配線材の進化を実感できる。特に顕著なのが低域で、ピアノの左手や、アコースティックベースの低音の中の“弦の震え具合”など、低い音の中の描写が非常に細かく見える。

どちらのモデルも密閉型なので、低域の正確な描写を得意とするところだが、描写が細かくなった事で、その“正確さ具合”がKX-1.5の方がより聴き取りやすい。ハイレゾ楽曲を再生した時の、情報量の多さを楽しみやすいのもKX-1.5の方だろう。

一方で、KX-1が持っている、クルトミューラーコーン独特の、ナチュラルなのだが、どこか艶っぽく、ホッとするようなサウンド、そしてフワッと柔らかく広がる音場感といった特徴は、KX-1.5では感じられない。KX-1.5はより現代的で若々しく、音場もクリアに描写する。“クリプトンの新しいサウンド”を感じさせる仕上がりだ。

全体の描写力、聴き取れる情報量は、KX-1.5の方が確実に進化している。この新モデルも高いコストパフォーマンスを備えていると言えそうだ。