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クリプトンの普及価格帯リファレンスSPに、“音も一味違う”ピアノ仕上げ「KX-0.5P」

クリプトンは、2ウェイ/密閉型のブックシェルフ型スピーカー「KX-0.5」(通称ポイントファイブ)のバリエーションモデルとして、ピアノ仕上げの「KX-0.5P」を追加。7月下旬より発売する。価格はペアで22万円。

ピアノ仕上げの「KX-0.5P」

普及クラスのリファレンスモデルとして、2017年から発売している「KX-0.5」(ペア18万5,000円)のエンクロージャー仕上げを、ピアノフィニッシュとしたモデル。仕上げを変えただけでなく、それによって変化する音に合わせて、改めて音質チューニングも施している。

「KX-0.5P」の背面。鏡面仕上げとなっている
通常モデルの「KX-0.5」

また、「KX-0.5」のバリエーションモデルとしては、日本伝統の漆塗りと、西陣織の絹サランネットを取り付けた「KX-0.5UR」(朱塗り)、「KX-0.5UB」(溜塗り)の2機種(価格は各ペア298,000円)も直販サイトで発売しており、通常モデルと合わせて、計4バリエーション展開となる。これを、価格や音色、デザインで選べる「ポイントファイブ・トリプル・セレクト」として訴求していく。

右から「KX-0.5UR」(朱塗り)、「KX-0.5UB」(溜塗り)

こだわりのピアノ仕上げ

エンクロージャーは針葉樹系高密度パーチクルボードとMDFボード(リア)で構成。仕上げのベースは、通常モデルと同じスモークユーカリ木目で、それを土台とし、ピアノ仕上げを施している。

仕上げのクオリティにもこだわっており、ピアノ作りで知られる浜松にあり、実際にピアノを手がけていた企業に依頼。高級ピアノと同じ、ポリエステル塗装で鏡面6面を仕上げており、「塗装を吹いて自然乾燥させ、磨いていく工程を繰り返すため、国内でやるのはコストがかかる。しかし、一層目から表面を丁寧にフラットを出しながら塗装を重ねていくことで実現する、美しい本物のピアノフィニッシュこだわった」(オーディオ事業部の渡邉勝事業部長)という。

オーディオ事業部の渡邉勝事業部長

既発売の漆塗モデルは、塗装だけが通常モデルと異なるが、ピアノ仕上げは内部にも手が加えられている。ピアノ仕上げをすると、エンクロージャーが“締まり”低音が出にくくなり、ポリエステル塗装は硬度も高く、音が硬くなる傾向があるという。

そこで、内部の吸音材を調整し、低域を出るようにしたほか、ツイーターの内部配線材を、上位機の「KX-3Spirit」で採用した、マグネシウムケーブル+PC Triple Cケーブルに変更。高域の良さをさらに引き出したとする。

140mm径のウーファー

ユニット構成は、140mm径のウーファーと、35mm径のピュアシルク・リングダイアフラム型ツィーターを組み合わせた2ウェイブックシェルフで、エンクロージャーは密閉型。

コストを抑えるため、ウーファの磁気回路にはアルニコではなくフェライトを使っているが、フェライト特有の音を出さないために、B-H曲線(磁気ヒステリシス曲線)に注目して対策。ボイスコイルにエッジワイズのロングトラベル4層巻ボイスコイルを採用。線積率を上げ、高能率でトランジェントの良い低域改善を実現している。

低音再生のために、低域共信周波数(f0)は、ユニット単体で35Hzまで下げており、エンクロージャに入れたスピーカーとしては50Hzとしている。振動板はCPP(カーボンポリプロ振動板)を採用している。

35mm径のピュアシルク・リングダイアフラム型ツィーター

ツイーターは上位モデルで採用しているものと同じで、透明感を高め、高域周波数レンジ拡大を図る砲弾型イコライザー付35mmピュアシルク・リングダイアフラム型。50kHzまでの帯域を確保している。

ネットワークは歪を極小まで抑えるため、抵抗値の低い直径1.2mmの空芯コイルを採用。ケース入りのピッチ材で振動を抑えた低損失メタライズドフィルムコンデンサなども採用。素子間の結線は、ハンダフリーのかしめ方式としている。

定格入力は40W、最大入力は120W。出力音圧レベルは87dB/W・mで、インピーダンスは6Ω。クロスオーバー周波数は3,500Hzで、全体の再生帯域は50Hz~50kHz。外形寸法は194×319×352mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は7.6kg

音を聴いてみる

通常モデルと、前述の漆塗りモデル、さらに新製品のピアノ仕上げを聴き比べてみた。

通常モデルは、密閉型のブックシェルフとは思えないほどスケール感豊かなサウンドで、低域も深く、迫力がある。中高域も色付けが無く、女性の声や弦楽器の響きもリアルだ。トランジェントも良好で、低域の分解能にも優れている。

漆塗りモデルは、低域が少しタイトになる。筐体表面が漆塗りによって硬くなったためだろう。標準モデルが箱の響きを活かして低音を再生していたのがよくわかる。一方で、漆塗りでは、細かな音の描写が見やすくなり、SN比が良くなったように感じる。低域の迫力などは通常モデルの方が上だが、ボーカルの表現の細かさや、オーケストラの楽器の分離などは、漆塗りの方が繊細で正確に聴き取れる。

ピアノ仕上げは、この漆塗りと方向は似ているのだが、低域が標準モデルに似て、しっかりと沈み、迫力がある。ただ、標準モデルと同じ低域かというとそうではなく、響きがタイトになっているため、低い音の分解能はピアノ仕上げの方が良く、クリアで見通しが良い。

中高域では、音のコントラストが漆塗りや標準モデルと比べて強く、音の輪郭が聴き取りやすい。メリハリも良く、シャープさと迫力を両立したように感じる。

バリエーションモデルというと、“色違い”のように感じてしまうが、音にはかなりの違いがあり、3機種それぞれに良い部分があり、非常に面白い聴き比べだ。