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「シン・エヴァ」制作秘話公開。庵野監督のこだわりを支えたPremiere Pro

(C)カラー (C)カラー/Project Eva. (C)カラー/EVA製作委員会

アドビは、映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の制作秘話を公開した。庵野秀明総監督のこだわりや独自の編集行程を支えた動画編集ソフト「Premiere Pro」について紹介。本作の編集を担当した辻田恵美氏が解説した。

3年以上の長期編集期間を経て完成した「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。2時間34分の長編で話題になった今作は、「シン・ゴジラ」のときに使い勝手が良かったということで、庵野監督からのリクエストによりアドビのPremiere Proで制作が行なわれたという。

編集工程において、通常のアニメと比べて特徴的なところは、バーチャルカメラで撮ったさまざまなアングルのモーションキャプチャーデータを使用している点だという。

本編の前半パートには最初に絵コンテがなく、プリヴィズを組んでから、それを元にコンテを作る作業に入ったという。プリヴィズの中にはモーションキャプチャーを使った簡易なCGや、iPhoneで撮った写真や動画など多種多様な素材が使われている。

プリヴィズ時のモーションキャプチャーデータの編集画面
(C)カラー (C)カラー/Project Eva. (C)カラー/EVA製作委員会

庵野監督自身も「iPhoneで撮ってくる」と外に出て「今から送るから」といってすぐに素材を編集に反映させるということが多々あったとし、「とりあえず、どんなものか見てみたい」というのが庵野監督のスタイルのため、Premiere Proを選んで使用したとしている。

庵野監督は、バーチャルカメラで何百アングルも撮影。そして、似たようなアングルで仕分けしたグループでマルチカメラシーケンスを作り、その一覧をサムネイルとして俯瞰し、どの構図が良いかを選ぶという。

モーションキャプチャーデータが仕分けされたマルチカメラシーケンス
(C)カラー (C)カラー/Project Eva. (C)カラー/EVA製作委員会
モーションキャプチャーデータが仕分けされたマルチカメラシーケンス
(C)カラー (C)カラー/Project Eva. (C)カラー/EVA製作委員会

もともとはプリントアウトして行なっていた作業だが、マルチカメラであれば、すぐに見せられるためすごく使用しやすい機能だったという。『普段、マルチカメラの機能はPVで活用したり、芝居でも3カメを回している時に「この画の裏の画はこれ」っていうのを分かりやすくする程度で使用していたため、今回のような動きが全く同じで膨大な数のアングルを見比べるための使用は初めてでした』としている。

また庵野監督の場合、カットのトリミングと同様に「もうちょっと寄って」や「上に詰めて」という指示を1ピクセル単位で、画面上に指示やコメントを入れることが多く、その点でもPremiere Proの文字ツールの使いやすさが評価されていたという。

リテイク指示が記入されたマーカー
(C)カラー (C)カラー/Project Eva. (C)カラー/EVA製作委員会

辻田氏による編集担当としての作品の見どころは、「カット割りに関しては全編注目していただきたいですが、画の美しさはもちろん、ストーリー的にも思い入れがあるのはAパートです。アバンが終わってから、ある戦いに行くまでのパートが私は一番好きな部分です」としている。

また、YouTubeで公開されている「これまでのヱヴァンゲリヲン新劇場版」の映像は、「新劇場版」シリーズ3本分を3分40秒に編集したものだが、これは2019年の「0706作戦」のときに公開されたダイジェスト映像で、本編の画と音だけで組まれた「編集」として特に見どころのある映像だという。「こちらもぜひご覧いただきたいです」としている。

【公式】『これまでのヱヴァンゲリヲン新劇場版』【庵野秀明編集】