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Netflix、アニメ制作を支援する新拠点を六本木にオープン

新拠点「Netflix アニメ・クリエイターズ・ベース」内の「デザイナーズ・ガレージ」。左からNetflix アニメ・クリエイターズ・ベース 所属デザイナーの石舘波子氏、Netflix アニメ チーフ・プロデューサー 櫻井大樹氏

Netflixは、クリエイターやアニメーション制作会社などのパートナーを支援するための新拠点「Netflix アニメ・クリエイターズ・ベース」を六本木にあるNetflix東京オフィス内に開設。長期的にアニメ制作のツールや技術の進歩を広く支援していくという。

【N子】Netflixの新しい東京オフィスを案内しますよ~! | ネトフリアニメ

開設当初はコンセプトアートのデザイン開発に注力。制作過程の根幹であり最終的な映像の土台ともなるプリプロダクションの前段階を強化する。

Netflixシリーズ「エデン」コンセプトアート

コンセプトアートの開発により、企画段階において原作を映像化する仮のイメージを関係者の間で理解しやすくなり、「将来的な作品の基盤となる原作へのアクセスを広げ、さらなる機会創出に繋げることができる」という。

作品作りには多数の作り手やスタッフが関わるが、作品の世界観や環境、文化的背景、キャラクターの主な特徴などについても理解が深まり、監督や脚本家のビジョンを効果的に共有できるため、「最終的にチームとして目指す絵を明確にできる」という。

クリエイターズ・ベースは、3つの空間で構成。これ以外にも、シャワーや仮眠室もあるという。

「デザイナーズ・ガレージ」は、デザイナーやアーティストが席を置く空間。クリエイターズ・ベース所属のデザイナーとして、石舘波子氏とサイナ・シセ氏が、コンセプトアートの開発をサポート。今後多面的にパートナーの支援を拡大するにあたり、さまざまな専門分野からスタッフを迎え入れる予定だという。

デザイナーズ・ガレージ
石舘波子氏。「アニメの新しい表現にチャレンジしていきたい、アニメーションの表現としての裾野も広げていきたい。最終的には自分で自分の短編アニメをディレクションしてみたい」と語る

「ライターズ・ガレージ」は、Netflixのアニメ作品に関与するクリエイターなどが集まり、シナリオを組み立てたり、作品の核となる脚本の打ち合わせを行なうスペース。新規作品のブレーンが集まるクリエイティブな空間になるという。Netflix アニメチーフ・プロデューサー 櫻井大樹氏は「部室のような空間にしていきたい。制作会社さん、原作者さんと連絡をとりながら、脚本の打ち合わせをしていく場所。秘密基地のような、遊び心もあるような場所にしていきたい」と語る

ライターズ・ガレージ

「ラボ」は、将来的に作品で用いることのできる技術を試行する空間。今後、バーチャル・リアリティなどの最新技術を試験的に使用したり、モーション・キャプチャー技術を試せるような空間へ進化させるという。

ラボ

作品作りに走り出す“前の”選択肢を増やす

Netflix アニメ チーフ・プロデューサー 櫻井大樹氏

櫻井氏は、「これまでNetflixは、アニメ制作会社やクリエイターの方々とパートナーシップを締結。その結果、1億2,000万世帯以上が1年間にネトフリアニメを1作品は視聴しているという状況になった。アニメは全世界的に人気のコンテンツで、Netflixでも、全コンテンツ内のトップテンにアニメが入ることも珍しい事ではなくなっている。アニメは、日本のみならず、世界中のファンに届くようになり、今までアニメを見てこなかった潜在的な層にも届くようになったと実感している。2021年を通して、約40作品のアニメを独占配信予定で、世界のクリエイターとコラボした作品、日本の名だたるクリエイターとコラボした作品が続々登場します」と語る。

さらに、「Netflixとしても今後も引き続き、アニメに積極的に投資していく」とし、「高度かつ丁寧な作品作りを目指し、制作パートナーを支援を強化していく」と、 アニメ・クリエイターズ・ベース開設の意義を語った。

Netflixシリーズ「グリム」プロジェクト(タイトル未定)コンセプトアート

タイトルは未定だが、Netflixシリーズの作品として「グリム」プロジェクトを推進しているウィットスタジオの完戸翔洋プロデューサーは、コンセプトアートを生み出すためのクリエイターズ・ベースという場の重要性について、「アニメスタジオでは、制作が進むにつれて、(アニメ制作の)現場に人を投入する事になるのですが、そのせいで、プリプロのプリプロ、作品の根幹の部分を生み出す場所に人がまわらないという状況が蔓延していた。そこをクリエイターズ・ベースに補っていただいている。これが新たなアニメの道なのかなと感じている」とし、具体的には「監督が取捨選択するための“いくつもの選択肢”を用意していただいているというイメージ」だという。

櫻井氏は、「制作会社さんのやっている領域に踏み込むのは失礼だと考えていて、僕らがプリプロを取り上げて、“コレを作れ”というのはやりたくない。そうではなく、現場の皆さんに選択肢を広げたいと思っている。僕も16年間制作会社にいたので、“現場に人手を多く投入しなきゃ”となってしまうのはよくわかるのですが、それによって上流が軽視され、人がまわらなくなってしまう。(キャラクターデザインや脚本を決定する前に)、“こんな話があってもいいかも”、“何パターンもキャラクターを考えてみよう”という準備期間がもっとあっていいと思う」と語る。完戸氏も、「(アニメ作りが)走り出すとクリエイターまかせになってしまう。その手前で、取捨選択ができるのは素晴らしいと思う」と語った。