ニュース

Nagra初のレコードプレーヤーシステム。2,299万円で70セット限定

「REFERENCE ANNIVERSARY TURNTABLE」

太陽インターナショナルは1月25日、Nagraブランド初のレコードプレーヤーシステム「REFERENCE ANNIVERSARY TURNTABLE」を発表した。ブランド70周年記念モデルで、全世界70セットのみのプレミアムモデルとなる。価格は2,299万円。

2021年に創立70周年を迎えたNagra。同ブランドでは、これまでターンテーブルがしばしば企画されてきたが、Nagraの名前にふさわしい製品であるターンテーブルの設計/デザインが始まったのは4年前とのこと。オーディオスペシャリストのチームとして活躍しているデザイナーとエンジニアは応用物理学や機械工学、電子工学、マテリアル科学の分野で完璧を追求したという。

そして4年の時を経て、数百時間に渡る設計議論と徹底的なリスニングテストを経て「芸術性と言う言葉の範囲を拡張するほどのターンテーブルが誕生した」という。

心臓部となるのは、モータードライブシステム。スイス製の高精度デカップルド ブラシレスDCモーター2機を180度対向させて配置したマルチモーター・ドライブシステムが、プラッターの回転速度安定性を高めている。この配置により、トルクと速度の両方の精度が最適化されるとのこと。大型モータードライブシステムの重量は11.2kgで、現在特許も申請中。

ターンテーブルの絶体速度キャリブレーションのために、高度な技術も応用。加速度計がフローティングシャーシの水平レベルと揺れを観察し、極めて安定していることを確認する。もし、不安定な状態であれば、回転スピードなどの影響が出てしまうため、キャリブレーションは20秒で実行され、その間にプラッターの速度がキャリブレーションされる。

この20秒のサイクルで、プラッターの速度が高精度のクォーツによって、リファレンススピードと比較され、この絶対的な速度基準からの偏差(誤差)は、基準となるリファレンススピードに従って修正される。キャリブレーションとピッチ制御は、ターンテーブルのフロントコントロールパネルに搭載されているナグラ モジュロメーターで確認できる。

オープンリール式ベルトシステムを採用。象徴的なNagra IV-Sテープレコーダーからインスピレーションを得ており、一般的にベルト表面は平らだが、今回は円形のベルトを採用している。大本の円形ベルト製造会社は現存していないため、ベルト組成の化学分析を行なって、部品を再現したとのこと。Nagraのアナログレコーダーの遺産に敬意を表し、LPドライブは「Nagra IV–LXXキャリバー」と呼ばれている。

ターンテーブルプラッターの外周部にあたるリムには、航空/宇宙産業で使用される非鉄金属合金「ExiumAM」を、オーディオコンポーネントとして世界初採用した。プラッターには22mm厚で帯電防止性の高い透明なメタクリレート板を採用。これにより、モータードライブの構造的な美しさや、職人の技巧が見えるようになったとのこと。プラッターの自重は6.5kgで、ターンテーブルの各構成部品は精密CNC機械加工で制作される。

プラッターの下には、サブプラッターとシャフト/ベアリングシステムを配置。サブプラッターは高強度アルミニウムから機械加工されたものが使われている。超精密シャフトは高周波焼入れ鋼、シャフトブッシングは焼結青銅で機械加工され、また、高温/高圧にオイルが含浸されていてメンテナンスフリーとなっている。

純銅のレコードウエイト

ターンテーブルとともに使用するレコードウエイト(ディスクスタビライザー)は、広範囲な調査とリスニングテストの結果、純銅が採用された。特徴的な形状でコンパクト、それでいて重量もあるウエイトになっている。

シャーシとサブシャーシは、航空機グレードのアルミニウムと、フェノールの大型プレートで構成。システムの機械的構造部分の影響による音のカラレーションを防ぐ目的で、CNC切削によるアルミニウム/フェノール/アルミニウムの三層構造となっており、低共振、高剛性を誇る。

サスペンションは、HD PREAMPとHD DAC Xの両方に共通したサスペンションシステムの構造機構を基本的に取り入れつつ、独自のスタイルをデザイン。スプリングのバネ成分を機械的原理とし、これに油圧原理の両方を組み合わせたスプリングメカニズムを応用した独創的なサスペンションシステムとなっている。

電源部

電源部にはスーパーキャップを多用しており、バッテリー電源が持つすべての利点に加え、バッテリー電源よりはるかに高速で充電できるメリットや、より高い電流負荷およびサイクル安定性も獲得した。

今回の製品は「プレーヤーシステム」として設計されているため、ターンテーブル自体に見合った性能を備えたトーンアームでなければ使用に耐えず、その設計には多くの時間が費やされたという。

トーンアーム自体には、パイプ部の中間層に木質系の部材を入れ、カーボンファイバーを二重にして剛性と防振性を確保。木材は、形状を形成するだけでなく、潜在的な振動を排除するために使用されている。アーム長は10.5インチで、付随するジョイントは持たないシェル一体型。

トーンアームのベアリングは、シンプルで正確なCNC加工によりテーパー形状となった硬化スチールコーン形状ベアリングで、非共振、シリコンダンピング、超高密度ポリエチレン製受け部に収められている。カウンターウエイトは吊り下げられたサドル型となる。

このモデルでは、カートリッジの垂直トラッキング角度を、ディスク演奏中でも簡単かつ繰り返し調整可能。特大の高精度ロータリーは、精密カメラレンズのヘリコイド機構のように、スムーズで正確に微調整を容易に行なえる。同システムでは最大10mmの垂直移動ができる。

外形寸法は、ターンテーブル部が662×452×267~281mm(幅×奥行き×高さ)、電源部が438×414×121~130mm(幅×奥行き×高さ)。重さは80kg。