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「放送事業者はコンテンツ制作に注力を」。総務省の検討会が提言
2022年8月1日 17:04
総務省のデジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会は、放送局が、コンテンツ制作に注力するために、デジタル技術を活用して放送インフラ維持のコストを削減するなどの提言を取りまとめた。
この検討会では、インターネットで動画配信サービスが伸長し、若者を中心に“テレビ離れ”が進む中、主に地上波テレビの課題を中心に検討。論点として、「デジタル時代における放送の意義・役割」、「放送ネットワークインフラの将来像」、「放送コンテンツのインターネット配信の在り方」「デジタル時代における放送制度の在り方」を話し合っている。
放送の将来像については、デジタル技術を活用した「守りの戦略」として、放送ネットワークインフラに係るコスト負担を軽減し、コンテンツ制作に注力できる環境を整備していくことが重要と指摘。
地上波テレビ放送の小規模中継局やマスター設備(番組送出設備)などの放送ネットワークインフラを、デジタル技術を導入して効率化。コスト負担を軽減するための具体的方策として、これまで実施してきたNHKと民間放送事業者による中継局の共同建設だけでなく、放送ネットワークインフラの保有・運用・維持管理を委託などを通じて外部の事業者に切り出すことで、地上基幹放送事業者は、コンテンツ制作に注力できるようになるという。
こうした「共同利用型モデル」に加え、小規模中継局などのブロードバンド等による代替について提言している。
「攻めの戦略」としては、インターネットによる配信を含めた多様な伝送手段の確保と、良質な放送コンテンツを視聴者に届ける事で、「社会的役割を今後も持続的に維持・発展させていくこと」を掲げる。
放送制度については、こうした放送の将来像に対応できるものとして、放送の持続的な維持・発展を可能とし、放送事業者がそのための中長期的な経営戦略を描くことのできる環境を整備するため、「経営の選択肢を拡大する観点から柔軟な見直しを行なうべきである」とする。
検討会座長の早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 三友仁志教授は、日本の放送が、受信料収入を経営の基盤とするNHKと、広告収入や有料放送による料金収入が基盤の民間放送事業者の二元体制の下、それぞれの特性を活かすことで、全体として視聴者への適切な情報発信が確保されてきたと指摘。その上で、「デジタル時代において、インターネットを含めて情報空間が放送以外にも広がる中、若者を中心とした“テレビ離れ”に見られるように、視聴者における放送の位置付けは従来よりも相対的なものとなり、その役割の一部はインターネットに取って代わられたという指摘もあるかもしれない」という。
しかし、「インターネット空間では、人々の関心や注目の獲得ばかりが経済的な価値を持つアテンションエコノミーが形成され、フィルターバブルやエコーチェンバー、フェイクニュースといった問題も顕在化する中で、取材や編集に裏打ちされた信頼性の高い情報発信、『知る自由』の保障、『社会の基本情報』の共有や多様な価値観に対する相互理解の促進といった放送の価値は、情報空間全体におけるインフォメーション・ヘルスの確保の点で、むしろこのデジタル時代においてこそ、その役割に対する期待が増していると言えるだろう」としている。