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final、圧倒的“8K SOUND”×NC搭載完全ワイヤレス「ZE8000」。約3.7万円
2022年11月22日 19:15
finalは、全く新しい音楽体験“8K SOUND”を実現したという完全ワイヤレスイヤフォン「ZE8000」を12月16日に発売する。カラーはブラックとホワイトの2色。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は36,800円前後。発売に先駆け、11月22日より予約を開始した。
final初の平面磁界型ヘッドフォン「D8000」や、音の知見の具現化ができたというイヤフォン「A8000」のように、革新的なアイデアを具現化できた際に使用する「8000」のナンバーを冠した完全ワイヤレスイヤフォン。
finalの音響研究チームが、業界で長い間リファレンスとされてきた特性とは異なる新しい物理特性を発見。それに基づき、音楽が圧倒的に高精細に聴こえるサウンド「8K SOUND」を実現した。
finalによれば、「低域の質感」「高域の伸び」といった、どこかの帯域が優れていることを示す表現ができず、楽器や声のどこに注意を向けても、奥行きも含めて全てにフォーカスが合うという初めてのサウンド体験であり、その印象を表現する言葉を見つけられなかった、とのこと。
それが映像規格「8K」の高精細さに圧倒された感覚に近い印象を受けたことから、このサウンドを「8K SOUND」と名付けたとする。
従来はドライバーの欠点の部分を補正する役割を果たしていたデジタル信号処理技術を、音質の向上に活用するべく、最適なドライバー「f-CORE for 8K SOUND」の開発から行なったという。このドライバーは、エッジを高精度な金型で成型し、振動板を挟み込むような形にすることで、通常、振動板とエッジを固定するために使う接着剤が必要なくなり、音への影響を低減している。
ボイスコイルへの配線も新規開発しており、切れにくく軽い線材を使っているという。また、空中配線を採用。通常は不良率が上がったり、断線の恐れがある空中配線だが、数年の開発を経て実用化できたとした。
完全ワイヤレスイヤフォンには、バッテリー保ちの問題でD級アンプを採用するのが一般的だが、ZE8000にはAB級アンプを採用。高いSN比を実現し、静かな状態から音が立ち上がる様子が感じられるという。そのほか、薄膜高分子積層コンデンサやPLMキャップなども採用し、低域での超低歪を実現。これらを元に専用の信号処理を施すことで、8K SOUNDを実現したとする。
なお、この8K SOUNDの実現に至るまでに、これまでセオリーとなっていた周波数、音圧、周波数特性などとは異なる理論を発見したという。それに加えて、様々な要素が条件を満たした場合に良いポイントとなるものが見えたとし、これらについて論文等で明らかにしていき、技術を公開していくという。
このことについて、final代表の細尾満氏は、自らが幼少期からオーディオマニアであり、「かつてのオーディオのマーケットは“原音再生”という嘘くさい言葉とマーケティングによって衰退していった」と前置きし、「たとえこの技術をオープンにして、他社に真似をされたとしてもさらにその先へ行けると思っています。技術をオープンにすることで、イヤフォンやヘッドフォンという世界がもうちょっと物理や科学によって新しいステージに行けるようにしていきたい」と述べた。
イヤフォンを選択する基準は「音質」「装着」「音量」の3つにあると説明。8K SOUNDに加え、ZE8000では、快適な装着感を実現するために、バッテリーや基板部分を分離し、音への影響も抑えながら、筐体も小型化。イヤーピースも一新し、耳に当たる部分が全てシリコンで覆われているため、長時間付けていても耳が痛くなりにくいという。
また、このイヤーピースをベースに、耳の形を測定することで、1人1人に合わせた形に成型するカスタムイヤーピースも2023年春頃に展開予定。充電ケースは、このカスタムイヤーピースを付けた状態も収納できることを想定して、大きめに作ったという。
ノイズキャンセリング(NC)機能と外音取り込み機能も搭載。NC機能は、音への悪影響をもたらさず、圧迫感もなく長時間聴いていても違和感や不快感を感じないものを目指したという。外出時に風切り音を防ぐウインドカットも備えており、左側のバー部分を2秒間長押しすると切り替えられる。
外音取り込みは、外音と音楽をバランスよく聴けるながら聴きと、音楽の音量を下げて周囲の音を聴きやすくするボイススルーの2種類を搭載している。
通話用のマイクは、バー部分の両端にそれぞれマイクを備え、その距離を活用して口元の音だけを拾う、ビームフォーミング技術を備えている。
専用アプリ「final CONNECT」も用意。NCと外音取り込みのモード変更や、自分が聴くボリューム帯を設定することで、その範囲のステップ数を細かく変更できるようにする「ボリュームステップ最適化」、プロのエンジニアの様なEQ設定が可能という「PROイコライザー」などが使用できる。
また、デジタル信号処理の演算能力を限界まで高めることで、音質を向上する「8K SOUND+」も用意し、アプリから切り替えられる。なおこのモードでは消費電力が増えてしまい、連続再生時間が30分から1時間程度短くなってしまうという。
Bluetooth 5.2準拠でコーデックはSBC、AAC、aptX、aptX Adaptiveに対応。どのコーデックで聴いた場合でも8K SOUNDを実現しているとのこと。Snapdragon Soundに対応しており、対応のスマホを利用することでより高音質で楽しめる。
連続再生時間は5時間で、充電ケース併用では15時間再生できる。そのほか、IPX4相当の防水対応。表面には「ZE3000」と同じシボ塗装が施されている。
イヤーピース(SS/S/M/L/LL)、充電用USBケーブル、アコースティックツール、ダストフィルターなどが付属する。
またfinal公式パートナーとなっている、スケートボードの堀米雄斗選手がZE8000を装着して出演しているスペシャルムービー「BE A GAME CHANGER」が公開されている。
実際に音を聴いてみた
ZE3000/2000と全く違う筐体になったZE8000。今までもfinalのイヤフォンは、「耳の装着したあとに少しねじ込むようにするとフィットしやすい」形状を採用していたが、今回はこのバーが付いた形状になったことで、その動作がさらにしやすくなっている印象。
肝心な音だが、ZE3000/2000からは比べものにならないくらい進化している。説明されたとおり、どこか一部の帯域を褒めるような表現をしようとすると、力強い低域と抜けの良い高域、そしてボーカルがしっかりと前に出てくる中域の全てを兼ね備えているという感じ。
低域はしっかりと力強いのに、ぼんやりと眠い音にならない解像度の高さで、ボーカルは男性も女性もしっかりと前に出てくる。SN比の高さと高域の抜けの良さで空間の拡がりもしっかりと感じられるのに、刺さるような音は感じないという、全部のいいとこ取りをしたような音になっている。
「GHOST/星街すいせい」を聴くと、曲頭のベースが低域から浮かび上がっていく様子が鮮明に見え、サビに向かって徐々に盛り上がっていくシーンは、演奏がぐわぁっと、ボーカルをメインに押し上げているかのように感じられて、聴いていて楽しくなってくる。
同じく星街すいせいの曲で雰囲気は全く異なる「Stellar Stellar」の場合では、すいちゃんの声が広大な空間に広がっていく様子をしみじみと感じられる様な聴こえ方がする。GHOSTは低音がグイグイ来ると楽しくなるが、こちらは低音が控えめにいてくれると気持ちよく聴けるのだが、その要望が叶えられているところがすごい。
「KICK BACK/米津玄師」を聴くと、やはり低音がしっかり聴いていて音楽にノリたくなってくるのだが、叫ぶシーンの声が擦れていく様子までハッキリ聴こえるところに、全体の解像度の高さが見せつけられているような感覚になる。
低音がグイグイ効いてくる部分も、ぼわぁっと広がらずに輪郭がハッキリとしていて、かつ力強いので「刃渡り2億センチ/マキシマム ザ ホルモン」では曲頭のベースの音から、まるで地の底から悪魔が這い出てくるかのようなおどろおどろしさを感じられる。
この音のベースの部分にはZE3000が居そうな気がするのだが、SN比と音の解像度は明らかに段違いな進化を遂げている。おまけに低音がグイグイくるので、ZE8000を聴いたあとにZE3000を聴いてみると、「あれ、音質では満足してたはずなのにちょっと物足りないな」という気持ちになる。
ZE3000は実売16,000円程度なので、価格には倍近くの差があるが、ZE8000にはNCと外音取り込みが乗っていて、さらにこの音質と、価格差以上の価値が感じられるフラッグシップモデルだった。