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final「ZE8000」8K SOUNDを最大化する「自分ダミーヘッド」サービス

「自分ダミーヘッド」サービスで作成したカスタムイヤーピースを装着したZE8000

フジヤエービック主催「春のヘッドフォン祭2023」が東京・中野サンプラザで29日に開催。finalは発表会を開催し、同社TWS「ZE8000」の8K SOUNDを最大化するという、有料新サービス「自分ダミーヘッド」を発表した。

自分ダミーヘッド

TWS「ZE8000」

これは、ユーザーが購入したZE8000を持って、finalを訪問すると、ユーザーの上半身や耳を精緻に3Dスキャン。ユーザー1人1人に最適な形状のZE8000向けカスタムイヤーピースを制作してくれるだけでなく、ユーザーに最適な補正をソフトウェア的に行なうデータをZE8000にインプットしてくれるというもの。7月にサービス開始予定で、費用は55,000円を予定している(ZE8000はこの価格に含まれていない)。

finalの細尾満代表

finalの細尾満代表は、「当初、お客様が自身のiPhoneを使って耳周りを撮影して、そこから形状を読み取り、最適化するようなサービスを考えていたのですが、開発していくうちに、だんだん凝ってしまい、最終的に3回もfinalに来社していただかなくてはならないサービスになってしまった」と苦笑。しかし、「個人最適化サービスは他にも存在するが、それらとはまったく異なり、8K SOUNDを最大化できるもの」と、内容に自信を見せる。

細尾代表は、「今までのデジタル演算による補正でも、空間のいろいろな場所から音が聞こえるように感じる面白い体験はできる。しかし、面白いと感じながらも、すぐに普通の2chに戻してしまい、使わない人が多い。何か音が“気持ち悪く”感じてしまうためで、その理由は“音色の不自然さ”にある」と指摘。

finalブランドの技術目標。下から2番目の「人体形態特性」に合わせて最適化するのが「自分ダミーヘッド」サービスであり、ここをキッチリやって音色の良さをクリアしなければ、その上の「空間知覚」の最適化に進めないと細尾代表は語る

この問題は、外耳や頭部など、人体の形体が人それぞれ違う事による、イヤフォン/ヘッドフォンの物理特性への影響をアライメントし、個人に最適化する事が不十分であるために起きるという。

また、最適化するアライメントの内容も、音の方向や広がりを感じる“空間印象”と、ボーカルやピアノなどの音が自然で、生々しいと感じる“音色”を分けて研究・開発。人は空間印象よりも、音色が自然である事を重視し、空間印象が良くても、音色が不自然であればその音を好まず、常用しないという。

そこで、「自分ダミーヘッド」サービスでは、音色をより自然に、生々しく聴こえるような補正を優先して行なう。そのために、来社したユーザーの上半身や耳まわりを3Dスキャンし、得られたユーザーのアバターを、用意したバーチャル空間に配置。ワークステーションを用いて、1人分で約5時間かかるという膨大な計算を行なうと共に、finalが独自に開発したアライメント用ソフトを使い、ユーザーに最適な係数を出力。それをユーザーのZE8000へと書き込む。

その際に、ZE8000の装着位置がズレていると、計算結果が無駄になってしまう事から、高精度なカスタムイヤーピースの作成がセットになっている。

具体的な流れとしては、1回目の来社で上半身などのデータをスキャン。その2週間後くらいに来社し、完成したカスタムイヤーピースに治具をつけて装着し、鼓膜の前の空間の音響がどうなっているなどを測定。そのデータをもとにアライメントデータを作り、ZE8000へと転送。最後の3回目の来社時に、データを転送したZE8000とカスタムイヤーピースを渡すと共に、最後の微調整をする。

上半身を3Dスキャン
自分ダミーヘッドデータを、バーチャル空間に配置し、特性を計算
耳まわりも精緻にスキャンする

なお、ユーザーのZE8000をfinalに一時的に預ける事になるため、その期間は代替品も貸し出すという。

DITAから「Navigator」

DITA「Navigator」

発表会ではDITA新製品で、「ドングル型DACアンプの決定版」という「Navigator」も発表。夏の発売予定で、国内400台限定。価格は未定。

スティック型が多いドングル型DACアンプ市場において、アルミマグネシウム合金をCNCで切削したハイクオリティな筐体を採用。形状もデザインも作り込んでおり、スマホスタンドとしても使えるようになっている。

アルミマグネシウム合金をCNCで切削したハイクオリティな筐体
スマホスタンドとしても使える

内部にはESSのES9219 DACチップを2基搭載。PCM 768kHz/32bit、DSD 256のネイティブ再生ができるほか、FPGA制御の独立水晶発振器クロックを2基搭載。最大出力は340mWで、ステレオミニに加え、4.4mmのバランス出力も搭載するなど、ハイスペックなものになっている。

新ブランド「REB」

新ブランド「REB」

finalでは、2011年よりDIYイベント「組立イヤホン体験会」を実施。全国各地で5,000人を超える参加者となり、音のチューニングや、好きな音楽について語り合うコミュニケーションも活発化しているという。その展開をさらに広げるために、新ブランド「REB(レブ)」を立ち上げる。

これに伴い、運営していたコミュニティサイト「MAKER’S」と、final本社で営業していた「final STORE」を、新ブランドREBに統合。第1弾として、これまで会員でなければ見られなかった「MAKER’S」を、誰でも閲覧できる一般公開のコミュニティサイトへ変更する(投稿などをするには会員になる必要がある)。

全国各地でイベントを行なう、他のメーカーと一緒にイベントを行なうなど、様々なアイデアも披露された

また、ユーザーから要望が多いというカスタムIEMタイプのMAKEシリーズの試作機も参考展示。このイヤフォンは、コア部分を自分好みにチューニングした上で、カスタムIEM形状シェルに組み込んで使えるのが特徴で、自分のチューニングしたサウンドを、他の人がカスタムIEMで聴く事ができるという。

イベント会場では、このチューニングが実際に体験できる展示も行なっていた。

カスタムIEMタイプのMAKEシリーズ試作機
自分でチューニングできるMAKEシリーズ
チューニングが実際に体験できる展示も