レビュー
final最強TWS「ZE8000」の8K SOUNDを聴く。ZE3000/2000とどう違う?
2022年12月9日 07:30
finalから登場したTWS「ZE8000」。基礎研究を続け、新たな音響特性を見つけたことで実現した「8K SOUND」を特徴としながら、発表会では、これまでfinalブランドから登場したTWS「ZE3000/2000」が、ZE8000の製作を目指す基礎研究の過程で誕生したものであるとも明かされた。
ZEシリーズ共通のテーマとして掲げられているのが“有線イヤフォンを超える音質”。では、そんなZE3000/2000を経て実現したZE8000は何が違うのか。改めて3機種の特徴と違いをまとめてみた。
- ZE3000
2021年12月17日発売
直販価格:15,800円
カラー:ブラック、ホワイト - ZE2000
2022年7月22日発売
直販価格:14,800円
カラー:ブラック・グレー - ZE8000
2022年12月16日発売
直販価格:36,800円
カラー:ブラック、ホワイト
3機種の共通点とZE8000の新要素
それぞれの特徴を深掘りする前に、3機種の共通点とZE8000の新要素をまとめてみた。
- Bluetoothのバージョンとコーデック
Bluetooth 5.2準拠で対応コーデックはSBC、AAC、aptX、aptX Adaptive - “有線イヤフォンを超える音質”というコンセプト
- 装着感へのこだわり
ZEシリーズの共通点(変わらない部分)
- 「8K SOUND」(音質)
- ANCと外音取り込み機能
finalのTWSでは初採用 - 専用アプリ「final connect」
- 形状
AB級アンプ搭載、イヤフォンとバッテリーや基板部分を分離
充電ケース、イヤーピースも一新 - Snapdragon Sound対応
対応端末とペアリングで使用できる - カスタムイヤーピースが登場予定
final純正で耳型を元に作るもの
ZE8000の新要素
音の傾向や外観の違い
ZE3000
まずfinalブランドの初のTWSとして登場したのがZE3000。音質は全体的に偏りを感じないフラットでバランスが良い音という印象。解像度が高く、低域の輪郭がハッキリしているので、「星街すいせい/GHOST」の深い低音から少しずつ浮き上がってくる様子が明確に感じられる。中低域あたりも少し強めで、ボーカルの力強さがしっかりと感じられることから、フラットながら、味気ない音になっていないところもポイント。
音質への影響を懸念して、アクティブノイズキャンセリング(ANC)や外音取り込み機能などを搭載していないが、カナル型イヤフォンの密閉性、いわゆるパッシブでの遮音性がしっかりと備わっている。普段は別のANC搭載のTWSを使っているので、ANC非搭載が若干不安だったのだが、実際にZE3000を使いながら地下鉄にも乗ってみたところ、音量を上げることなくそのまま快適に聴き続けることができた。
筐体は、耳への収まりが良く、あまり飛び出さない形状で、装着したあとに指でつまんでねじ込みやすいデザインになっていて、これも遮音性に繋がっている。ケース、筐体ともにシボ加工が特徴で、1.5万円という、ハイエンドTWSと比べると購入しやすい価格ながら、見た目の高級感で所有欲を満たしてくれる要素も備えている。
ZE2000
そんなZE3000の兄弟機として、本体の仕上げや音のチューニングが異なる「ZE2000」が2機種目のTWSとして登場。ZE3000と同じく「有線イヤフォンに負けないサウンド」を目標に開発されたもので、有線のE3000とE2000の違いをTWSでも表現するべく開発したのだという。同じくANC/外音取り込み機能を搭載しない、音質勝負のTWSとなっている。
音質はZE3000をベースにしているとは思えないほど低域の迫力がモリモリになっていて、同じ曲を聴いても全く印象が異なってくる。それに加えてボーカルも引っ込むどころか、グイグイ前に出てくるので、「米津玄師/KICK BACK」や「YOASOBI/祝福」などはZE2000の方が楽しめる印象。全体的に低域側に寄っているイメージで、高域が耳に刺さるといったようなことがなくまとまっており、長く聴いていられる。
筐体とケースの形状は全く同じだが、仕上げが変更されており、ZE2000はマット加工が採用されている。ZE3000と並べると外観的にも弟分的な立ち位置にあるように感じられる。1,000円程度ではあるが価格も少し安めになっている。
ZE8000
ZE8000は、finalが革新的なアイデアを具現化できた際に使用するという“8000”のナンバーを冠したTWSとして登場。今回の革新的なアイデアというのが、音楽が圧倒的に高精細に聴こえるサウンド「8K SOUND」だ。ちなみに、この“8K”は数値的な意味では無く、映像規格「8K」の高精細さに圧倒された感覚に近い印象を受けたことから名付けたとのこと。
そして、音質へ与える影響の問題を解決し、finalのTWSでは初となる、ANCと外音取り込み機能も搭載、専用アプリも用意したという特徴も持っている。ANCは圧迫感が少なく、曲の印象も崩れないように調整したそうだ。実際に使ってみると、「本当にANC効いてるのかな?」と思うほどANCの独特な圧迫感がないのだが、確実にノイズは低減される。ソニー「WF-1000XM4」ほど強力ではないが、それ故に違和感がないまま、従来のパッシブのみよりもさらに遮音性が上がっているのが魅力に感じる。
音質は、ZE3000のフラットで解像度の高い音が中核にありながら、ZE2000の迫力のある低音がしっかりと響いているような感覚。そして、ZE3000/2000との大きな違いが圧倒的な情報量の多さ。低域の力強い響きと、その中にしっかり輪郭が見える音が共存しているほか、高域の抜けが良く、余韻がしっかり感じられる。
楽曲全体の迫力も段違いにパワーアップしているほか、自分の近くで聴こえる音と、遠くに広がっていく音の距離感がずっと広く感じられる。従来のTWSではあまり聴いたことのない聴こえ方で、聴き始めは少し戸惑ってしまう。
外観もZE3000/2000とは一新して、いわゆるスティック型が採用されている。アンテナやマイクをスティック部分に搭載できたほか、バッテリーも筐体とスティックの中間部分にある丸い形状の場所に収めることで、音に影響を及ぼす要素を筐体部分から遠ざけることができたとのこと。情報量の多さには、この分離構造も効いているようだ。
形状は異なっているが、装着した後に少しねじ込むようにすることでしっかり耳にフィットさせるよう、指でつまみやすくしている部分は変わらずこだわっている要素とのこと。耳に触れる部分も楕円系の様な形から少しコンパクトな円形に変わっていることもあって、従来よりも「この角度の方がしっくりくるな」というポジションに調整しやすくなっていると感じる。
仕上げはZE3000と同じシボ加工を採用。ケースが大きくなっているのにも理由がある。それが、2023年春頃に発売予定のカスタムイヤーピースをそのまま収納するためだ。
カスタムイヤーピースは、1人1人の耳型を取って、それを元に作成されるため、一般的なイヤーピースと比べて大型なものになる。TWSでも取り扱われているものはあるが、従来は純正の充電ケースにしまう際には取り外す必要があった。finalではそのカスタムイヤーピースをメーカー純正のサービスとして提供するため、予めケースを大きく、持ち運びを考慮して重量は軽くしているとのこと。
一般向けなZE2000とマニア向けなZE3000&ZE8000
3機種の特徴をまとめると、市場に多くある低域が強めのTWSと似た傾向で、低域を好むユーザーに受け入れられやすそうな「ZE2000」、TWSのハイエンドクラスで近年主流のモニターライクな音で価格を抑えた「ZE3000」、この2機種の“いいとこ取り”をしつつ、さらに情報量を大幅にアップさせ、finalのハイエンドにふさわしい音になった「ZE8000」といったイメージ。
ベーシックなZE3000に対して、ZE2000はそれをベースにしつつ音の傾向が異なるモデル。ZE8000はケースの形状なども込みで、音に強いこだわりを持つ、ちょっとマニアな人向けのTWSといった印象だ。
ZE3000とZE2000の価格差は1,000円だが、音の印象がかなり違うので、「この価格差なら上のモデルにしよう」という買い方ではなく、実際に聴いて、好みの音がした方を買った方が幸せになれると思う。
ZE8000は音もそうだが、価格帯の意味でも別格の存在。ZE3000/2000や、同価格帯位のTWSを使っている人は、ステップアップするモデルであると共に、「finalの考えるハイエンドTWSの音」が明確に体験できるモデルだ。そういった意味で、finalの有線イヤフォンを愛用している人にも聴いて欲しい。「完全ワイヤレスもここまで来たのか」と驚くだろう。