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ソニー、小型モーションキャプチャ「mocopi」の使い方。連携で“ガチ運用”も

「mocopi」

ソニーから発表された、小型のモバイルモーションキャプチャー「mocopi」。6つの小型センサーを頭、両腕、腰、両足に専用バンドを使って装着することで、身体の動きをスマホアプリに取り込み、3Dのキャラクターを動かすことが可能。様々なサービスと連携させることで、動画コンテンツを制作したり、VTuberのように配信したりすることができる。

ソニーストアの直販価格49,500円と、こういったデバイスではお手頃な価格設定になっているのも魅力なmocopi。今回、実機を体験できたほか、アプリの連携方法など、具体的な使用方法を聞くことができた。

なお、直販サイトのソニーストアのみでの販売となり、発売日は2023年1月下旬、12月中旬より予約受付開始。製品情報ページにて、予約開始をお知らせするニュースメール登録ができる。また、mocopi公式アバター“RAYNOSちゃん”のTwitterアカウント(@raynosbySony)も開設されている。

mocopiのアプリ画面と“RAYNOSちゃん”

mocopiの開発の背景には、VRコミュニケーションサービス「VRChat」の急成長や、ソニーミュージックも参入しているVTuber業界の盛り上がりがあり、「ソニーとしてもメタバースにトライしていきたい」という思いと、3Dコンテンツの制作をより多くの人の身近なものにすることを目指し、誰でも簡単に3Dキャラクターを操作して楽しめるモーションキャプチャーとして誕生したという。

そんなmocopiは、アプリ単体でキャラクターを動かしている様子を動画として撮影したり、その撮影した動画データを別の映像と組み合わせて動画コンテンツを作るといったことができるほか、身体の動きの情報をスマホアプリから外部サービスに送信することで、VTuberのような配信や、アニメーションの制作などにも活用できる。

スマホで手軽に3Dキャラクターを使った動画を作ることができるほか、様々な外部サービスとの連携で個人でもより手軽に3Dキャラクターを使った活動が行なえるといった、VRフルトラッキング未経験のユーザーに向けての需要創造を目指すほかに、本格的に活動しているVTuberなどの価値向上も狙っているという。

屋外での収録も可能。収録スタジオの限られたスペース内では行なえない、例えば、広い場所で走り回る「体育祭」のような収録もできるため、従来よりも3Dキャラクターを使ったコンテンツの可能性を広げられるという。

使う際には、まずセンサーの中央のボタンを長押しすることで電源をON。専用バンドは頭用の円形のもの、手首用の短いもの2本、足首用の長いもの2本、腰用のクリップが付属しているため、対応のセンサーをはめて装着すれば完了。クリップを除いて長さ調整も行なえるので、しっかりと装着できる。

専用バンドとクリップ

バンド側のセンサー装着部分には爪も付いており、激しく動いても外れにくくなっている。外す際は、左右のボタンを押して爪を外しながら、窪みの部分に指を入れて簡単に外せるようになっている。なお、バンドは収納ケースには入らないため、別で持ち運ぶ必要がある。

【mocopi】センサーの取り付け、取り外し

収納ケースでそのまま充電できるため、使用感は完全ワイヤレスイヤフォンの様な感覚。ケースにはUSB-C端子が備えられており、約1.5時間で充電できる。最大連続使用時間は10時間と長時間使える。ケースやバンドはマグネットで吸い付くように装着できる。

キャリブレーションも、身長を入力して、肩幅に足を広げて直立、スマホアプリの音に合わせて1歩進むだけで完了。T字ポーズなどを取る必要なく完了する。なお、長時間の使用する場合、徐々にデータ上のズレが発生してしまうため、15分に一度直立の姿勢をとってアプリからポーズリセット、30分に1度キャリブレーションし直すことが推奨されるという。

装着、キャリブレーション、アプリでできることについては以下の動画を参照のこと。

「mocopi」の使い方とできること

対応OSはAndroid 11以降、iOS 15.7.1以降なのだが、対応のスマホはXperia 5 IV/1 IV/5 III/1 III/5 II/1 II、iPhone 14 Pro Max/14 Pro/14/13 Pro Max/13 Pro/13/12 Pro Max/12 Pro/12と、限られたモデルとなっている。

mocopiのセンサーから送信されるのは、加速度センサーと角速度センサーの情報のみ。スマホアプリ側がセンサー情報を元に、キャラクターの動きの計算処理を行なうため、スマホにはある程度のスペックが求められる。ソニーの基準とするパフォーマンスを満たし、動作確認できている機種を対応スマホとして提示しているとのこと。

なお、対応スマホ以外でもアプリのダウンロードは可能だが、Android端末での懸念点が同時に接続できるBluetooth機器の数だという。6つのセンサーを同時にBluetoothで接続するため、端末によってはこの同時接続が上手くいかない可能性があるそうだ。

mocopiを2セット購入すれば実質12点で…… と考える人もいるかもしれないが、現状Xperiaでは8個まで同時接続可能となっているという。増やせる箇所は両手で、手首より先の手の動き(指の動きは不可)を反映することができるようになるが、2セット購入した場合、センサーが4つ余ってしまうほか、外部サービス連携でフィンガートラッキングなども追加できるため、あまりオススメできない。

また、発売時点では6個セットでの販売のみで、1個づつ販売の予定がないことに加え、8個使用時のサポートの準備が整っていない、という点からメーカーも推奨していない。

その後、仕様が変更となり、発売時点では6個での使用のみが可能とのこと。

発表時から仕様が変更され、発売時点では6個での使用のみが可能となりました(12月15日)

mocopi単体では、歩く、座る、ジャンプ、回るなどの動きがキャプチャーできる。一方で長時間両足が浮いた状態になる、例えば“自転車に乗る”“ブランコに乗る”といった動作はキャプチャーできない。寝た姿勢も足が床から離れてしまうことからセンサーの仕組み上苦手としている。加速度センサーを使用していることから、速い動きは得意だが、極端にゆっくりした動作はセンサーが感知できないという。

前述のVRChatに対応しており、アプリから連携することでそのままVRChat上のアバターに自分の身体の動きを反映できる。VRChatのほか、「Virtual Motion Capture」「Unity」「MotionBuilder」などがmocopiの発売段階で動作確認済みの連携可能な外部ソフトとなっているほか、12月15日よりSDKが配布開始されるため、mocopiの仕組みを使った様々なサービスの誕生が予想される。

とくに、「mocopiを使って手軽にVTuberのような活動をしてみたい」といった場合に使うことになるPCソフトウェアが「Virtual Motion Capture(VMC)」。今回このVMCについて、ソニーの社員でありながら同ソフトの開発者であるあきら氏(佐藤聡氏)にできることや連携方法を聞いた。

mocopiと連携させることで、このソフト上でも3Dキャラクターが動かせるようになるため、その様子をOBS Studioなどに取り込めばそのまま動画配信が可能になる。

mocopiのアプリ単体でもスマホのマイクを使ったリップシンクは行なえるが、表情などもしっかり反映させたい場合などにWebカメラやiPhoneのカメラなどを使ったフェイストラッキングや、グローブのようなデバイスを使ったフィンガートラッキングなどの機能を追加できるのもこのVirtual Motion Captureの特徴となっている。“VMCプロトコル”と記載のあるソフトであれば連携して、機能追加していけるようになっている。

連携方法はアプリ側でモーションの送信モードにして、PC接続設定を開き、送信Port設定を確認。VMCの詳細設定にもmocopiの項目が追加されるため、同じネットワーク上で接続されていれば、Portの数値を合わせるだけで適応されるという。

mocopiアプリ側のPC接続設定画面
VMC側の画面。詳細設定画面にmocopi用の設定項目が追加されるとのこと
mocopi×Virtual Motion Capture

さらに、VMCプロトコルの「EVMC4U」などを使うことで、VMCで表示しているキャラクターをUnity上に表示可能。Unityのアセットストアで販売されているCG空間を購入して表示させて雰囲気を出したり、公開されているプラグインなどを使って様々な機能を追加して配信を豪華にする、といった使い方もできるようになる。

モーションキャプチャー機材の中では手頃な価格で、スマホ単体で簡単にできるのも魅力。また、PCなどと連携してこだわった環境を構築した上でも使用できる柔軟性、そしてSDKの公開で使用できるサービスも広がりそう。今VRや3Dアバターの世界に興味を持っている人だけでなく、今後のメタバース関連のサービスがより身近なものになっていき、より多くの人が触れられるようなきっかけを作り出すような製品になりそうだ。

パッケージと内容物