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ヤマハ、シネマDSP技術を応用したホームシアター向けヘッドフォン

ホームシアター向けヘッドフォン「YH-L700A」

ヤマハは、映画などのエンタメコンテンツ再生向けとして、AVアンプに採用しているシネマDSP技術などを応用したホームシアター向けヘッドフォン「YH-L700A」を2月3日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は66,000円前後。6軸のヘッドトラッキング機能も備えている。

Bluetooth接続するワイヤレスヘッドフォンだが、映画や動画の視聴に適した「3Dサウンドフィールド」機能や、7つの「サラウンドモード」といった独自の3次元音場再生機能を搭載しているのが特徴。

3Dサウンドフィールド機能は、AVアンプに搭載しているシネマDSPの技術を応用したもの。2chのソースに対して、その音源がどこで鳴っているのか、前なのか、横なのかなどの定位を決める「音源定位技術」で処理。それをもとに、ソースの2chから、センターや左右、リアなど、より多チャンネルへと拡張していく。

具体的には、信号処理用にアナログデバイセズのDSPチップ「Blackfin」(400MIPS)を搭載。このDSPで、2chソースを5chに拡張。セリフなどを明瞭にするクリアボイスや、サラウンドシネマDSPの各サラウンドモードの処理を加え、5chの音源と、首を左右などに動かした時に、それに合わせてサウンドが変化するように8ch分のパン用音源を生成する。

この5ch + パン用8chに拡張した音源を、頭部伝達関数を用いて再び2chに落とし込み、YH-L700Aの2chドライバーで再生する。その際に、YH-L700A内蔵の6軸センサーを用いて、頭の動きをトラッキング。それに合わせて、前述のパン用8ch音源を活用。これにより、例えば目の前に置いたタブレットで再生している映画を見ている時に、右横を向くと、音が聴こえる方向はタブレットのままとなり、左の方から映画の音が聴こえる。まるで、ホームシアターの中で、スピーカーで映画を楽しんでいるような感覚が得られるという。

サラウンドモードは、映像向けに、明瞭なセリフ/迫真の効果音/奥行きのあるBGMを描き分けて表現する「Cinema/Drama」、ミュージックビデオ向けに、音楽性を重視しながら広がりのある音場を付与し、ライブ感を演出する「ConcertHall/Outdoor Live/MV」、 音楽コンテンツ向けに、ライブ感ではなく、Hi-Fiで音楽を楽しむように音楽への没入感を重視した「Audio ROOM/BGM」を用意。好みやソースに合わせて選択できる。

なお、アップルが空間オーディオ、ソニーが360Reality Audioを展開しているが、YH-L700Aはどちらにも対応はしていない。映画のDolby Atmosやドルビーデジタルなどを伝送・デコードする事もできない。一方で、前述の通りYH-L700Aはあらゆる2chソースを、内部で多チャンネル化し、それを6軸センサーを用いて仮想的にサラウンド再生するため、空間オーディオや360RAの音源でなくても、サラウンドとして再生できる利点がある。

なお、6軸センサーを使った再生は、OFFにする事も可能。

独自機能の「リスニングオプティマイザー」も採用。人の顔形状の違いや、メガネをかけている/いないなどにより、音の特性にも違いが生じてしまうものだが、耳の中で鳴っている音の伝達特性を測定する事で、リアルタイムで音を補正してくれる。

小音量時でも低域と高域が痩せないように補正する「リスニングケア(アドバンスド)」機能も備えている。

「アドバンスドANC(アクティブノイズキャンセリング)」機能も搭載。通常のANCは、ノイズを低減する時にオーディオ信号まで削ってしまうが、アドバンスドANCではエコー信号を除去するフィルターを入れる事で、ノイズだけを綺麗に消せるという。

ユニットは40mm径のダイナミック型。Bluetoothのコーデックは、SBC、AAC、aptX Adaptiveに対応。再生時間は、ANC ON、3D OFFで最大34時間、ANC ON、3D ONでは11時間。充電時間は約3.5時間。ステレオミニの有線接続も可能で、その際は、ハイレゾ再生にも対応する。

対応アプリは「Headphones Controller」。3Dサウンドフィールドやリスニングケア(アドバンスド)のON/OFFや、サラウンドモードの選択などが可能。ヘッドフォンの質量は330g。

音を聴いてみる

タブレットで映画を再生し、BluetoothでYH-L700Aと接続。6軸センサーをONにして、聴いてみた。

入力は2chとなるが、役者のセリフなどは前方中央に定位。そこを中心として、音場が広がる。そのまま首を右に振ると、セリフは左耳の方に、左へ首を振ると右耳の方へと移動する。この効果により、“仮想的なシアタールームにいるような感覚”が確かに味わえる。

映画向きと言われると、低音がパワフルに鳴り響くサウンドを想像しがちだが、YH-L700Aの音の傾向は、ヤマハらしい、クリアでスッキリとした高解像度サウンド。音像の移動感などを、明瞭に描写するタイプだ。

リアルなスピーカーを部屋に設置したホームシアターと比較すると、音場の広がりや低域の迫力などの面では劣る。前述の、パン用8ch音源が、首を動かした際に「違うチャンネルに切り替わった」というのがわかりやすく、チャンネル間の繋がりには少し不満点もあるが、なにより、音が出しにくい部屋や深夜など、ヘッドフォンで映画を楽しむ必要がある時には便利な製品だろう。