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手塚治虫「ミッドナイト」を全編iPhone撮影で実写化。三池崇史監督

iPhone 15 Proで撮影 | ミッドナイト | Apple

Appleは、iPhoneのみを使って写真や映像を撮影するキャンペーン「iPhoneで撮影 ー Shot on iPhone」の一環として、全編iPhone 15 Proで撮影したショートフィルム「ミッドナイト」をApple YouTubeチャンネルで公開した。

同キャンペーン初となる漫画の実写化で、”漫画の神様”手塚治虫の隠れた名作「ミッドナイト」のストーリーに三池崇史監督が息を吹き込んだ。主演の賀来賢人さんをはじめ、加藤小夏さん、小澤征悦さんなどの俳優陣と、iPhone 15 Proのカメラが持つアクションモード、シネマティックモード、5倍光学ズームなどの機能が組み合わされ、躍動感のある19分のショートフィルムが誕生した。

(C)Tezuka Produc-ons (C)Apple.Inc

記者向けの試写会が6日に行なわれ、三池監督と出演した賀来さん、加藤さん、小澤さんの3名が登壇。撮影に使われた衣装や機材、実際の撮影シーンを再現した空間が用意され、製作陣によるウラ話が披露された。

手塚治虫作品を全編iPhoneで撮影するという企画を聞いたときの感想を問われると、三池監督は、「無茶なことを考える人がいるなと」と一言。iPhoneについては、「日常的に使っていて、どんどん進化していくところに感心している」と述べたほか、ロケハンにおいては全てiPhoneで済ませることもあるという。

三池崇史監督

撮影に使うにあたって、iPhoneの機能がどのように使えるかを撮影班に検証を重ねてもらった上で臨んだといい、「想像以上に良い感じでしたね。自分の中にこびりついていた概念がポロッと落ちた感覚がありました」とコメントした。

また、三池監督は、初めての助監督作が加山雄三さん主演の「ブラック・ジャック」だったという。そんな縁もあって、今回の「ミッドナイト」は初心に立ち返って撮影に臨んだとのこと。

今回主演を務めた賀来さんは、「オファーを受ける際に一番重要視しているのが“ワクワク感”なのですが、今回の『ミッドナイト』は、“Apple”が“iPhone 15 Proだけ”で“三池さん”が“手塚さんの作品を撮る”と4つのワクワクの要素がてんこ盛りで即『やりたい』と言ったのを覚えてます」と話した。

賀来賢人さん

主演の賀来さんにとっても、今回の試写が完成した作品の初視聴だったとのこと。「チャレンジングな企画だったし、なにより今完成作を観て、本当に参加して良かったなと思うぐらい、攻めの姿勢の現場でしたし、手塚さんのスピリッツに三池さんの演出が足されて、今もまだ興奮しています」とコメントした。

iPhone 15 Proのみでの撮影スタイルについて、発見や驚きを問われると、賀来さんはタクシー車内でのシーンを挙げ、「iPhoneのサイズ感が印象的で、これでしか出せないアングルの入り方がありました。アクセルを踏んでいる真横の位置とか、普通のカメラでは入り込めないところまで入り込んで撮影できるところがすごい」と語った。

加藤さんはアクションモードが使われた走るシーンを挙げ、「普通の撮影だと車と一緒に走ったりするのですが、今回はiPhoneを持ったカメラマンさんが一緒に横を全力で走るという初めての体験をしました。実際に完成した映像もすごく綺麗で驚きましたし、走っていてもここまでブレずに撮れるんですね」と驚きを語った。

加藤小夏さん

小澤さんは暗いシーンが印象的だったとし、「殺し屋の役なので、現場が暗闇であることが多かったのですが、映像を見るとなんとなく見えるんですけど、現場は本当にどこに誰がいるのかわからないくらい暗かったです。今まであまり経験したことのない暗い場所での撮影でも、このクオリティに仕上がっているのを見て、iPhoneはすごいなと思いましたね」とコメントした。

また、殺し屋のキャラクターについても言及。右手に付けている“兄ちゃん”は原作にはいないオリジナルキャラクターで、現場で監督から「これちょっと手に付けてみて」と渡され、翌日「あれ、兄ちゃんだから」と言われて困惑したという。「だから兄ちゃんの言うことを聞いてあの行動を取っていたという設定なんですね」と述べた。

小澤征悦さん。右手についているのが兄ちゃん

三池監督がiPhoneを使用して一番驚いたのは、耐久性だったという。ドローンに取り付けて飛ばしたり、バイクなどと一緒に併走したりといった無茶な撮影をしても、ノイズなどのトラブルが一切無く撮影できてしまい、演出のために、綺麗に撮れた映像にノイズをあえて乗せたシーンもあるという。「1台も壊れることなくちゃんとお返しできました」とした。

撮影に使われたiPhoneの再現
撮影に使われたiPhoneの再現

iPhoneでの撮影が今後の映画の撮影に可能性をもたらすことはあるかと問われると、三池監督は「僕らにとっては選択肢が増えていく。普段使っているプロ用の撮影機材にはない、iPhoneにしかない機能もあって、それらが違う方向にどんどん進化している。この後外に出て作品を撮影することもできてしまう。そういうものを僕らは普段手にしてポケットに入れているんですよね」と答えた。

実際に撮影した北信康氏も登壇。iPhoneで撮影はより感覚的に

北信康氏

実際にiPhone 15 Proで撮影を行なった北信康氏も登壇。全編iPhoneを使うと聞いた際には「ピントはどうするんだ?」とまず思ったという。「まずピント性能はどうなのか、その次に黒のレベルはどうなのかということが撮影機材で重視する部分であり、僕の心配材料。アクションシーンに本当にピントがついて来られるのかというところが心配でしたが、実際に撮影してみるとストレス無くついてきてくれて、安心感が出た感じでしょうか」と述べた。

通常の撮影では、カメラマンである北氏に3人から作品によっては5人ほど助手が付く形で行なわれるという。「その助手の中にピントを合わせる役目の人がいて、その人と強力しながら物語を構築していくわけですが、iPhoneは今回優秀な助手の1人になった」という。

(C)Tezuka Produc-ons (C)Apple.Inc
(C)Tezuka Produc-ons (C)Apple.Inc

iPhoneの圧倒的なアドバンテージはそのサイズにあるとも説明。賀来さんが述べていたように、通常のカメラでは入れない場所にも入り込んで撮影できることも大きいが、北氏が魅力的に感じたのは、それによる“正しい距離感での撮影”だという。

例えば、「ミッドナイト」では、運転するミッドナイトの顔をタクシー車内で真正面から撮影できているが、通常のカメラで同じシーンを撮影しようとする場合、フロントガラス越しか、横顔での撮影になると説明。映り方の違いで芝居の伝わり方は違ってくるので、iPhoneが正面に入って撮っている今回の芝居の観え方は今までと絶対に違うと思う、と語った。

バイクとの併走シーンでは、ライダーにリグを組んだiPhoneをそのまま装着して撮影に臨んだという。こういった撮影方法も従来のカメラではあり得ない映像だという。今回のようなショートムービーでは撮影時間が潤沢にあるわけではなく、テンポ重視で撮っていくなかで、セッティングもスムーズに行なえて非常に助かったと述べた。

さらに、このサイズ感が「より感覚的な撮影に使えること」が北氏にとって魅力的だったという。カメラの位置をたった5cmずらすだけでも印象が異なってくる撮影の中で、自分の感覚で微調整を行なっていく際に、iPhoneは素早くレスポンスしてくれるとした。

iPhone 15 Proで撮影 | 「ミッドナイト」の舞台裏 | Apple
ミッドナイトの衣装
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殺し屋の衣装
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カエデの衣装
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怪我をした兄ちゃんとガスマスク
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