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トーレンス復活、7月に第1弾「TD1500」。ダイレクトドライブ「TD124DD」も発売予定

「TD1500」

PDNは、フローティング/サブシャーシ構造のレコードプレーヤーを世界で初めて量産化したトーレンスと総輸入代理店契約を締結。7月から順次発売を開始する。日本での第一弾は「TD1500」で、7月1日発売。価格は495,000円。

トーレンスは、1883年にスイスで創業した世界最古の家電メーカーでもある。オルゴール製造に始まり、ラッパ型蓄音機を経て、1940年代にはレコード用カッティングマシンやサウンドボックスに着手。1957年にレコードプレーヤーの時代が始まり、トーレンスは世界的な認知と名声を獲得。象徴的な「TD 124」や、多くの摸倣モデルを生んだサブシャーシ・レコードプレーヤーの元祖「TD 150」の量産化に成功した。

オルゴール製造に始まり、ラッパ型蓄音機を経て、1940年代にはレコード用カッティングマシンやサウンドボックスに着手した

その後、CDの隆盛やブランドオーナーの変更などで新製品が開発されない時期もあったが、現オーナーであるグンター・キュルテン氏が2018年にブランドを引き継ぎ、商品ラインナップを一新。新生トーレンスとして復活した。

外観はかつての名機を踏襲した小型パッケージながら、要素技術からすべてドイツで新規開発し、独創的な技術でサウンド・クオリティを高めているのが特徴。生産は台湾のマニュファクチャリングパートナーが手掛けており、そこがプロトタイプの製作なども担当しているとのこと。

現オーナーであるグンター・キュルテン氏。以前はELACで働いていたという
要素技術からすべてドイツで新規開発し、独創的な技術でサウンド・クオリティを高めている。エンジニアにはFINK AUDIO出身者などもいる

PDNはそのラインナップの中から、7月に「TD1500」(495,000円)を発売予定。フローティング/サブシャーシターンテーブルを採用したベルトドライブ方式で、XLRバランス/RCA出力を搭載。オルトフォン「2M bronze」カートリッジが付属する。

その後、2024年秋以降に「TD1601」(予価990,000円)、「TD1600」(予価880,000円)を発売予定。フローティング/サブシャーシターンテーブルでベルトドライブを採用。ACシンクロナスモーターを使い、TP160 J型ナイフエッジ・トーンアームを搭載。XLRバランス/RCA 出力を備え、外部リニア電源構成となる。TD1601のみ、電動リフター/オートシャットオフ機能を搭載する。

TD1601/TD1600
背面。XLR出力も備えている

ダイレクトドライブ採用の高級機「TD124DD」も投入予定で、予価1,980,000円。TP124 J型ダイナミック・トーンアームを採用し、XLRバランス/RCA出力を搭載。外部リニア電源を採用している。

トーレンスの高級モデルではアイドラードライブが伝統的に採用されてきたが、TD124DDでダイレクトドライブを採用した理由についてグンター氏は「再生中の“静かさ”から、ダイレクトドライブを採用した。アイドラードライブは、前に力強く出てくる音が特徴だが、ダイレクトドライブにも同様に力強さがある。私のオフィスでアイドラードライブのモデルと聴き比べても、ダイレクトドライブの音はかなり近い音になっている。昔ながらのパワフルさを活かしつつ、ノイズを抑えた」という。

ダイレクトドライブのTD124DD
TD124DDもXLRバランス/RCA出力を搭載

日本市場には、レコードプレーヤーの低価格帯に強いブランドが多い事から、「トーレンスの全モデルではなく、一部の、日本のユーザーが強く求めているモデルからスタートしたい」(グンター氏)とのこと。一方で、価格を抑えたモデルの日本展開も検討はしているという。

より価格を抑えたモデルの日本展開も検討されている

TD1500

TD1500

7月1日発売のTD1500は、「伝統的なトーレンスの遺伝子と現代的なモダニティを融合させ、TD150を今日の世界へと蘇らせた」というモデル。オルトフォン製のスタイラスチップに無垢のファインライン針が採用された調整済みの「2M Bronze カートリッジ」が付属する。

2M Bronze カートリッジ

1965年に発表されたTD150は、フローティング・サブシャーシを採用しているが、TD1500は3つの円錐形スプリングによってターンテーブルとトーンアームを、モーターとフレームから切り離すサブシャーシ構造を採用しつつ、TD150の難点であったスプリング調整を、プラッターの穴を通して上から行なえるように改良。

新設計のサブシャーシは、二重構造のアルコボンド製で、高剛性かつレゾナンスフリーだという。

ターンテーブルとトーンアームを、モーターとフレームから切り離している
スプリング調整が、プラッターの穴を通して上から行なえるようになっている

RCAのアンバランス出力に加え、XLRのバランス出力も搭載。「MCカートリッジを使用した真のバランス動作が可能になる」という。

駆動方式はベルトドライブ。新規開発の高精度な「TP150」トーンアームと電子制御DCモーターを組み合わせている。モーター部分はインクリメンタル・エンコーダーにより低ワウ・フラッターと安定した速度を実現。

TP150トーンアームは、高さとアジマスの調整が可能。標準でSMEコネクターを装備しており、ヘッドシェルの交換や他のカートリッジの取り付けが簡単に行なえる。アンチスケーティングは、アームのベースにあるスライドウェイトによって設定でき、ルビーベアリング上をガイドされるナイロンスレッドで調整する。

ルビーベアリング上をガイドされるナイロンスレッドで調整

針圧は、目盛り付きの2つの部品から構成されるカウンターウェイトで設定。6gから30gまでの幅広いカートリッジに対応する。

外形寸法は420×360×150mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は7.9kg。アクリルダストカバーが付属する。

TD1500にPLATANUSのカートリッジを取り付け、「フランク・シナトラ/カム・フライ・ウィズ・ミー」や「キャンディス・スプリングス/トーク・トゥ・ミー」を試聴した。

一聴してわかるのは、SN比が良く、無音部分がキッチリと静かで、そこから素早く音が立ち上がってくる事。音の重心も低い。音像のフォーカスの鋭さ、高精細な描写もありながら、ゆったりとした気分で音楽にひたれる安定感がある。トーレンスらしさと新しさが同居しているサウンドと感じた。