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ビクター、世界最小のネイティブ4Kプロジェクター「Z7/Z5」。88万円から

DLA-Z5

JVCケンウッドは、ビクター(Victor)ブランドの新製品として、4K解像度のデバイスを搭載したプロジェクターで世界最小サイズを実現した「DLA-Z7」、および「DLA-Z5」の2機種を11月下旬より発売する。価格はZ7が110万円、Z5が88万円。カラーはブラックで、Z5のみホワイトも用意する。

D-ILAプロジェクター
・4K×レーザー「DLA-Z7」(2,300lm、80,000:1) 110万円
・4K×レーザー「DLA-Z5」(2,000lm、40,000:1) 88万円

2021年11月発売の「DLA-V70R」(130.5万円)、2022年3月発売の「DLA-V50」(80万円)の後継機。Z7とZ5の違いは、デバイスの世代とネイティブコントラスト比、明るさ、色域、そしてカラーバリエーションの有無で、その他の基本仕様は共通。

DLA-Z5のホワイトモデル

Z7/Z5の最大の特徴が、“ネイティブ4Kデバイス”“レーザー光源”を採用しながら、450×479×181mm(幅×奥行き×高さ)という小柄な筐体サイズを実現したこと。光学ユニットやレンズ、回路基板など、ほぼすべての部品の設計を見直すことで大幅な小型化を実現した。

新筐体は、2016年12月に同社が発売した初の家庭向けネイティブ4K×レーザー光源モデル「DLA-Z1」(350万円)と比べ、体積・重量ともに半分以下を実現。4Kエントリーモデルとして展開したV50(高圧水銀ランプモデル)と比べても、体積を約35%も減らした。これは、レーザー光源になる前の“DLA-X世代”とほぼ同等サイズであり「ビクター/JVC製、または他社製プロジェクターからの買い替え時の置き換えも容易に行なえる」とアピールする。

DLA-Z7
サイズ比較(ビクター作成資料より)

また、オリジナルの画素ずらし技術である「e-shift」機構や8K入力、3D表示、フレーム補間(Clear Motion Drive)などの一部機能をカットすることで、コスト面も強化。e-shift搭載の従来機よりも高い映像品質を実現しつつ(詳細は後述)、4K/HDRコンテンツを高画質に楽しみたいミドル/エントリーユーザーにも手の届きやすい価格を目指した。

型名に用いるアルファベットは、“V”から“Z”へ変更。Z7/Z5は先代Z1の特徴(ネイティブ4K・レーザー)を継ぐZシリーズ、現行のハイエンドDLA-V900R/V800Rはビクタープロジェクターの最先端技術を導入するV(Victor)シリーズにラインナップを大別した。

Z7はV900Rと同じ第3世代D-ILA。レンズも新規設計

Z7/Z5ともに、ビクター独自の0.69型D-ILAデバイス(最大60Hz駆動)を採用。デバイス解像度は、デジタルシネマ規格の4,096×2,160となっており、低価格帯のプロジェクターなどで使われる画素ずらし技術を利用することなく、4K解像度の映像をネイティブに投写できる。

Z7には、ハイエンドV900R/V800Rでも使われている、最新の第3世代D-ILAデバイスを使用。液晶の配向制御性と画素の平坦性を同時に高めることで、第2世代デバイスからネイティブコントラストを約1.5倍にまで向上。さらに製造プロセスを見直し、画面内の均一性も向上させることで、従来比1.5倍の高コントラストも実現した。

光源には、パワーとライフサイクルに優れる独自のレーザー光源技術「BLU-Escent」を採用。新開発の光学ユニットで大幅な小型化をしつつ、Z7は2,300ルーメン、Z5は2,000ルーメンという輝度性能と、20,000時間の長寿命性能を備えた。

またレーザーダイオードによって、従来の機械式絞り(アパーチャー)ではできなかった、遅延の少ないダイナミックな明るさ調整を獲得。全黒のシーンでは完全に光源を絞るため、人間の知覚に近い、広ダイナミックレンジな映像描写を可能にした。101段階の出力制御も可能で、室内環境や画面上のターゲット輝度に合わせて明るさをきめ細かく設定したり、ハイエンドモデル同等の多彩な動作モードを使って好みに応じた違和感のないダイナミックコントロールも行なえる。

デバイスのネイティブコントラストは、Z7が80,000:1で、Z5が40,000:1(前機種V70R/V50は40,000:1)。色域は、シネマフィルターを内蔵するZ7がDCI-P3カバー率98%、Z5がsRGBカバー率100%。

新設計の11群15枚の大口径80mmレンズを搭載し、4Kの高解像度を忠実に再現。また、ズーム・フォーカス・シフトのフル電動操作、上下70%・左右28%のシフトにも対応。従来に比べて短焦点気味になっており、約3mの投写距離で100インチ、約3.6mで120インチ、約4.5mで150インチが映せるようになった。

Z7の正面。Z7/Z5ともに同じレンズを使用している
レンズ比較(ビクター作成資料より)
Z7/Z5の投写距離表

エントリーモデルながら、V900Rと同じHDR機能を搭載

プロジェクターでHDR映像を高画質に投影するためのビクター独自技術「Frame Adapt HDR(第二世代)」を前モデルに引き続き搭載。

Frame Adapt HDR(第二世代)では、トーンマッピングのアルゴリズムを根本的に見直し、トーンカーブ事態の最適化により高輝度部の白飛びを抑えたHDR映像を実現。さらに、独自のトーンカーブ選択アルゴリズムを深化させることで、「より明るく、色鮮やかで、ダイナミックレンジの広いHDR映像の再現」を目指している。

Z7/Z5で新しく加わったのが、HDRのトーンカーブにおいて、最暗部を“意図的”に沈める「Deep Black Tone Control」機能。暗部が一段と締まるため、従来以上にコントラスト感のある映像が手軽に楽しめる。

また、SDRコンテンツを色彩豊かに再現する「Vividモード」も追加。色温度6500、色域sRGBを忠実に再現するNaturalモードとは違い、人間の記憶色に近い感覚で画作りし、華やかかつインパクトのある映像にチューニングしたモードとなっているため「SDRアニメの鑑賞に最適」だという。なお、Deep Black Tone ControlとVividモードは、今年6月に発売したV900R/V800Rでも採用された機能。

サポートするHDR規格は、HDR10、HLG、HDR10+の3種類。制作者の意図を忠実に再現するモード「Filmmaker Mode」も搭載する。

HDMI入力は2系統で、最大32GbpsのHDMI 2.1規格をサポート。対応する4K信号は、3,840×2,160p 60/50/30/25/24、および4,096×2,160p 60/50/30/25/24。2K信号は、1080p 60/50/30/25/24、および2,560×1,440p 60。3Dと1080i信号は非対応となる。

背面。Z5/Z7は共通

ゲームプレイ時の遅延に関しては、「Z7/Z5はフレーム間の信号処理を最小化することで、すべての映像モードで(V900R/V800Rなどが搭載している)『低遅延モード』相当のレスポンスになっている」という。

消費電力は280Wで、動作音は23dB。吸排気は、前面吸気・後面排気に変更され、レンズへの陽炎等の影響を抑えつつ、後方のクリアランスを約50mm確保するなど、設置の自由度も見直している(従来モデルは後方吸気・前方排気)。重量は、Z7が14.8㎏、Z5が14.6㎏。

リモコン

映像を見てみた

100インチの16:9スクリーン(Stumpfl/ホワイトマット)を使い、暗室環境でZ7/Z5を視聴した。

今年6月に発売したハイエンドV900R/V800Rは、従来の滑らかな階調と豊かな色乗りのフィルム調から解像感を際立たせたメリハリある画調にシフトしたが、Z7/Z5はまるでグレードの高いレンズで撮ったかのようなヌケの良さと自然でシャープな描画線が印象的だ。

特にZ7で見るUHD BDソフト「8K空撮夜景」は、暗部の締まりとネオンライトの輝きが見事に再現されていて、林立するビルや高架橋、電車といった1つ1つのオブジェクトが立体的に浮かび上がる。

Z7の横に、前機種V70Rも投影したが、Z7と比べてしまうとV70Rは暗部が浮いて見え、夜景も奥行きのない平坦な絵に見える。カメラがパンするシーンも、V70Rはボケているが、Z7は動画解像度が上がったかのような鮮明さだ。しかもシャープネスを持ち上げたような、あざとさも感じられない。

新しくなったGUIメニュー

e-shiftを搭載するV70Rが、e-shiftレスのZ7/Z5に解像感で劣って見えるのは、どうゆうことなのか。技術者によれば、Z7/Z5の解像感向上は、e-shiftの有り無しだけではなくて、新レンズや刷新した回路基板等の組み合わせによる総合力と説明する。

聞けば、今回のZ7/Z5の回路基板には、デバイスドライバーや処理プロセッサーを1つに統合した自社開発の新チップ(12bit処理)を搭載しているとのこと。また、エンハンスを行なうMPC(Multiple Pixel Control)も、従来処理(e-shift表示に最適化したエンハンス)から、新チップでのマルチバンドフィルター処理に変更しているなど、リリースでは開示されてない細かな部分にも相当なメスが入っているようだ。

視聴して感じたのは、8K入力や3D視聴、フレーム補間といった一部機能の削減はあるものの、それらを必要としなければ、Z7/Z5は現在ある本格4Kプロジェクターの決定打だということ。特にZ7の性能とコストパフォーマンスの高さは際立っており、V900R/V800Rの購入を検討していたユーザーすら心移りしてしまうかもしれない。