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FILMMAKER MODEって何? ビクター限定プロジェクタと追加機能に迫る

DLA-V90RLTD

JVCケンウッドは、反射型液晶デバイス「D-ILA」の誕生25周年に合わせ、ビクターブランドの特別仕様プロジェクタ「DLA-V90RLTD」を12月中旬より発売する。価格は330万円。

2021年発売の8K対応プロジェクタ「DLA-V90R」(288.2万円)をベースに、厳選パーツによる画質性能向上や特別外装などが施されている本機だが、従来モデルとはどのような部分が異なるのか? 11月中旬に予定されている既存プロジェクタの機能追加アップデートと合わせ、プロジェクタ企画担当の那須洋人氏と技術本部 岡本直也氏に話を聞いた。

ビクター、D-ILA誕生25周年記念プロジェクタ。25台限定で330万円

ビクター8K/4Kプロジェクタに「FILMMAKER MODE」。HDR向け新モードも

世界限定100台。ネイティブコントラストUPで暗部描写がさらに豊かに

――まずは、限定モデルの企画意図を教えて欲しい。

那須氏(以下敬称略):我々は、1997年に独自デバイス「D-ILA」(Direct-Drive Image Light Amplifier)の開発に成功しました(SXGA 130万画素)。その後、2000年に4K解像度、2007年には0.7インチのフルHD、そして2016年には当時世界最小だった0.69型の4Kデバイスを開発しました。紆余曲折はありましたが、2022年は開発成功からちょうど25年目に当たります。これを記念し、現在発売している「DLA-V90R」をベースに画質・外観を発展させた特別モデルを提供することになりました。

本体外装は25周年をイメージしたシルバー基調の仕上げになっており、今後のD-ILAプロジェクタの更なる発展を表現しています。また細かい部分ですが、前面のレンズリングも限定モデルオリジナルのシルバーアルマイト仕上げになっています。

シルバークローム仕上げの天面プレート。専用ロゴとシリアルナンバーを刻印する
前面のレンズリングは、シルバーアルマイト仕上げ

――海外でも「DLA-25LTD」などの名称で販売されるようだが、実際にはどれくらいの数を用意しているのか。

那須:北米、欧州、中国、そして日本の4エリアで展開します。それぞれ限定25台ずつ販売し、全世界で100台を用意します。センタープレートには「1/25」などのようなシリアルナンバーを刻印しますが、エリア毎に微妙に表記を変えていますので、まったく同じ製品は二つと存在しません。また万が一、当該製品が故障してしまった場合ですが、同等クオリティで修理・お戻しできるよう準備しています。

――リリースには“厳選したパーツの組み合わせ”とあるが、どの部分を厳選しているのか? D-ILAデバイスやプリズム、レンズなど、通常モデルと比較してどこを変更したのか、具体的に教えて欲しい。

那須:残念ながら、詳細は非公表なのですが、D-ILAデバイスおよびワイヤーグリッドを含む光学パーツを厳選しています。もちろん通常モデルにおいても、一定レベル以上の品質を確保したデバイス、パーツを使用しているのですが、限定品ではさらにグレードのいいものを選別しています。デバイスであれば、コントラストがよいもの、という意味です。選別品と選別品を工場の方で組み合わせることで、限定モデルでは素のコントラスト比を拡げています。ただ、選別する以上、多くは用意できませんので、世界限定100台と数を絞らせていただきました。なお、プリズムやレンズは通常モデルから変えていません。

通常モデル「DLA-V90R」と、限定モデル「DLA-V90RLTD」との比較

――限定モデルでは、ネイティブコントラスト比が、従来の10万:1から15万:1へとアップしているが、明部側と暗部側のどちらのレンジが改善したのか。

那須:明部はそのままに、暗部側の階調表現が一段と拡張されます。暗部の表現については、評論家やユーザー様から既にご好評いただいている部分ではありますが、限定モデルでは、より緻密で豊かな暗部描写で映画などの様々なコンテンツをお楽しみいただけると思います。

――25周年プレートの販売や、既存V90RユーザーのV90RLTD化サービスなどは考えていないのか。

那須:25周年記念プレートの付属を含め、今回のDLA-V90RLTD購入者様のみの限定仕様とさせていただいております。

購入者に後日送付される「25周年記念プレート」

FILMMAKER MODEはハリウッドや製作者公認の「シネマ」モード

――11月中旬予定のDLA-V90R/V80R/V70R/V50向け機能追加アップデートについて聞きたい。新たに「FILMMAKER MODE」という画質モードに対応しているが、これはどのようなモードなのか。

那須:FILMMAKER MODEは、映像制作者の意図を忠実に再現するための画質モードです。ハリウッドの映画スタジオ、テレビスタジオ、コンテンツ配信会社ほか、家電メーカーやデバイス開発メーカーなどが加盟する団体「UHD Alliance」によって開発されました。

このモードを使用する際は、ディスプレイはフレーム補完やノイズリダクションなどの画質調整機能をオフにし、かつ色温度をD65(6500K)にするルールとなっています。これにより、映画製作者が作品に込めた意図を家庭で忠実に再現できるようになります。

FILMMAKER MODEをサポート

――FILMMAKER MODE対応コンテンツというものは存在するのか。

那須:いいえ、対応コンテンツはありません。FILMMAKER MODEはあくまで画質モードの1つです。

――どのような状況下で、FILMMAKER MODEが動作するのか。

那須:HDMIのビットストリームに重畳された情報(以下フラグ)をもとに遷移します。弊社が確認できている機器としては、パナソニックのレコーダーやプレーヤー、およびkaleidescape(カレイデスケープ)のメディアプレーヤーです。ただ、kaleidescapeは日本では提供していませんので、実質はパナソニックのレコーダーとプレーヤーに限られます。

パナソニックのレコーダーやプレーヤーは、UHD BDやBDを24pで出力する際、HDMIのコンテンツタイプフラグを伝送しています。その場合は、コンテンツタイプフラグ設定で「オート」にする必要があります。我々のプロジェクタはソースから受け取ったフラグを参照して、FILMMAKER MODEに自動で切り替えるようにプログラムしています。

――フラグを送るプレーヤーは他にないのか。また今後、フラグを立てるプレーヤーが登場した場合は、パナソニック以外でも自動切り替えできるようになるのか。

那須:我々が調べた範囲では、Apple TVやFire TV Stickなどもダメで、現状はパナソニックのDIGA、BDプレーヤーだけのようです。ただその場合でも、UHD BD/BDに限られ、動画配信でのフラグは確認できませんでした。将来、他社からフラグが立つ製品が出てきた場合は、自動切換えに対応します。

FILMMAKER MODEは[画質モード]の項目に入る
FILMMAKER MODEの自動切り替えは「オート」「手動」で選択可能

――FILMMAKER MODEを選んだ場合、映像調整設定はどう変わるのか。

那須:例えばHDRコンテンツで言えば、カラープロファイルは「BT.2020」、色温度は「6500K」となります。超解像系のMPC、補完系のClear Motion Drive、弊社独自のHDR最適化であるTheater Optimizerはメニューがマスクされて調整できなくなります。画素ずらしのe-shiftやMotion Enhanceは調整可能です。

ご説明したように、現状ソース機器を選ぶ形にはなっていますが、このモードを選べば、一発でマスターに忠実な画質になってお楽しみいただけるので、何の調整も入っていない画を確認したいなど、用途に応じて活用いただきたいと思っています。

FILMMAKER MODEでは、色温度が「6500K」、Theater Optimizerは調整できない
e-shiftは調整可能。MPCは触れない
Motion Control部分は[Motion Enhance]のみ調整できる

――Disney+などで提供しているIMAX Enhancedや、Dolby Visionなどの規格に対応する予定はないのか。

那須:今のところ予定はありません。なおDolby Visionは、テレビ向けの規格はありますが、プロジェクタ向けの規格が存在しません。

――ダイナミックコントロールで加わった「モード3」とはどのようなものか?

岡本:従来は「オフ」「モード1」「モード2」がありました。

「オフ」はレーザーのコントロールを一切しない状態です。「モード1」「モード2」は、画面全体の平均輝度(APL)を基にコントロールするもので、モード2の方がよりダイナミックに制御するようになっています。具体的には黒がより沈む。ただ沈み込むタイミングは1よりも遅くなっています。

で、新しい「モード3」ですが、ピーク輝度を基準に調整することで、よりきらびやかな映像美を実現しました。漆黒の闇にきらめく星や夜景などは「モード3」にすると、よりダイナミック感あふれる映像で楽しめます。

これはあくまで好みではありますが、落ち着いたトーンが主体の映画は従来の「モード1」「モード2」がおススメで、夜景だとかCG系のアニメーションなど、少しキラキラさせたいときは「モード3」がいいかと思います。

ダイナミックコントロールに[モード3]が追加された

――Frame Adapt HDRのモードが新たに追加されたが、これは従来と違うのか?

岡本:Frame Adapt HDRは、HDR10用画質モードなのですが、従来は1つしかなくHDRコンテンツによって設定を逐一切り替える必要がありました。アップデート後は「Frame Adapt HDR1」「Frame Adapt HDR2」「Frame Adapt HDR3」と3モードになります。例えば映画、アニメ、ドキュメンタリーなど、HDRコンテンツによって調整値をメモリーできるので、好みの設定値をモード切り替えだけで呼び出せるようになります。

それから、Frame Adapt HDRのHDRレベルに新しいモード「オート(ワイド)」を追加しました。これはコンテンツのマックスCLLを見て、ある程度のオフセットをかける機能なのですが、ユーザーから『もうちょっと明るくしたい』という声を受けて、クリップポイントを低めにとるモードにしました。多少パンチのある映像、ハイライトが多少飛んでもいいから明るめにしたいという場合に効果的だと思います。

HDRレベルに「オート(ワイド)」が追加された

――スクリーン補正モードでは、どのような製品が加わったのか。

那須:今回新たに19種類にスクリーン幕面に対応し、計199種類をサポートしました。

具体的には、国内ブランドではキクチの「ソルベティグラス」とイーストンの8K音響透過スクリーン「E8K」、海外ブランドではスチュワートとスクリーンイノベーションの最新スクリーンに対応しています。

――最近は50万円を超えるような液晶プロジェクタでも、3D機能を標準で対応しない製品が増えている。プロジェクタの3D対応をどのように考えているか。

那須:3Dブルーレイなど、コンテンツの数は少なくなっていますが、画のチューニングも行なっていますし、エミッターやメガネも引き続き用意しています。現状のシステムが利用できる間は、引き続き提供する予定です。