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ゼンハイザー「500シリーズとは思えない音質」新開放型ヘッドフォン「HD 550」。ハイエンドの技術投入
2025年3月19日 08:00
Sonova Consumer Hearing Japanは、有線ヘッドフォン「HD 500」シリーズの新モデルとして、ラミネート加工を施した振動板を採用した開放型「HD 550」を、4月2日に発売する。Amazonを除いた販路で発売するモデルで、価格はオープン。店頭予想価格は54,450円前後。
またAmazon専売モデルとして、ポリマーブレンド素材の振動板を採用し、コッパーカラーを施した開放型「HD 505」も用意している。こちらは2月に発売済みで、価格は50,600円。
「オーディオ愛好家からオーディオ初心者、動画編集・視聴など、幅広いユーザーが使っている」というHD 500シリーズ。今回の2機種は、そんなHD 500シリーズを今後牽引していくモデルと位置づける。ドライバー口径はどちらも38mm径。
HD 550
「オーディオファイルクラスの音質を提供する」と謳うモデルで、アイルランドの自社ファクトリーで製造したドライバーを搭載する。HD 660S2やHD 620Sなどと同じく、ラミネート加工を施した振動板を採用している。
ラミネート層の厚みを調整することで高音域の共振を低減し、高域描写力とインパルスレス応答特性を高めている。ボイスコイルは超軽量のアルミ製。
またドライバー背面のバックプレートには、ハウジング内のエアフローを適切にコントロールしながら不要な音を吸収するアコースティックフォームも内蔵。これにより高域の描写力をさらに高めつつ、キレのある低域再生を実現している。
これらの振動板やマグネットシステムといったサブアッセンブリーは、上位機種であるHD 620Sと共通で「HD 500シリーズながら、ハイエンド級の技術を盛り込んだ」という。バッフルは振動板が透けて見えるほど薄いメッシュ製で、音を忠実に耳元に届ける。
ドライバーは角度を付けて配置する「アングルトランスデューサー」となっており、「スピーカーのセンターに居るような臨場感あるサウンド」が楽しめる。
サウンドは「500シリーズとは思えない音質」だといい、その傾向は「よりニュートラルなサウンドで、低音が強め。高音域にもより広がりがある」とする。再生周波数帯域は6Hz~39.5kHz、インピーダンスは150Ω、感度は106.7dB(1kHz/1Vrms)。
既発売の開放型ヘッドフォン「HD 599」との比較では、最高域の描写力がアップしているほか、中高域と中音から高音へのつながりがフラットに。また低域の再現性もアップし、より深い表現力を持つとしている。
デザインは黒を貴重としたシックな仕上げ。イヤーパッドは柔らかなベロア地を採用したほか、ヘッドバンドもレザーライクの素材を使って高級感を高めている。
ケーブルは着脱可能で、3.5mmステレオミニ端子のアンバランスケーブル(180cm)が付属する。別売りで4.4mmバランスケーブルも用意する。ケーブルを除いた重さは約237g。6.3mmプラグへの変換アダプター、キャリングポーチが付属する。
HD 505
「HD 500シリーズのヘッドフォンの音響性能にさらなる磨きをかえ、低域の滑らかなレスポンスを実現した」というモデル。こちらも自社開発、かつアイルランドの自社工場で製造したドライバーを採用している。
振動板はポリマーブレンド素材で、軽量のボイスコイルを採用。さらに振動板の特性に合わせて、メッシュダンピングリングを一体型とした新ドライバーとなっている。なお、HD 550とは異なり、アコースティックフォームは非搭載。
サウンド傾向は「より分析的なサウンドを持ち、低音の強調が控えめ」とのこと。同じくAmazon専売の「HD 599SE」との比較では、高域を持ち上げつつ、ピークが耳に刺さらないように調整。中域も持ち上げて滑らかにしたほか、低域も改善されている。低域は「太さ、しつこさのない、キレの良さ」が味わえるとのこと。
再生周波数帯域は12Hz~38.5kHz、インピーダンスは120Ω、感度は107.9dB(1kHz/1Vrms)。
デザインは、ゼンハイザーロゴやヘッドバンド部にコッパー(銅)のカラーリングを施すことで高級感を演出。HD 550と同じくベロア製のイヤーパッドなどを採用している。
こちらもケーブルは着脱式で、付属ケーブルは3.5mmステレオミニ端子のアンバランスケーブル(180cm)。別売りの4.4mmバランスケーブルを使うことができる。6.3mmプラグへの変換アダプターが付属する。
実機を聴いてみた
短時間ながら両モデルを試聴した。試聴にはAstell&Kernのプレーヤー「A&ultima SP2000T」をオペアンプモードで使用し、音源にはApple Musicを使っている。
まずはHD 505から。開放型ヘッドフォンらしい伸びのあるサウンドが特徴で、曲始まりなど無音状態から音がスッと浮かび上がってきてトランジェントも高い。「怪獣/サカナクション」(96kHz/24bit ALAC)では、ボーカル・山口一郎の歌声が伸びやかで心地良い。低域はズシンと沈み込むような迫力はないものの、適度なアタック感があって十分に音楽に没入できる。
「月面着陸計画/tuki.」(44.1kHz/16bit ALAC)では、tuki.のボーカルが鮮明でクリア。ブレスなど細かな音の表現力もあり、楽曲の魅力をしっかりと味わえた。
続いてHD 550に切り替えてみると、HD 505でも広さを感じていた音場がもう一歩大きくなって、解像感もアップ。低域もHD 505より沈み込み、量感を感じられるように。「怪獣/サカナクション」では曲中に入るクラップがより印象的に聴こえてくる。
そして女性ボーカルの「月面着陸計画/tuki.」では、tuki.の口の動きがしっかり見えるような、きめ細やかな描写が味わえる。低音の表現力もアップしているため、モニターライクなサウンドではなく、楽曲が持つ迫力を楽しめる。
外観は、両モデルとも高級感のある仕上がり。特にHD 505はコッパーカラーがアクセントになっていて、より上級な雰囲気を醸し出している。サウンド傾向の違いだけでなく、約4,000円という価格差やカラーの違い、販路の違いなど、いろいろと悩ましい2機種と言えるだろう。
ちなみにHD 550をAmazonで販売しないという方針は「グローバルでの戦略」だという。また、これら2機種の登場に伴って終売になるHD 500シリーズはなく、いずれも継続販売される。