パナソニック、尼崎のプラズマパネル第5工場で竣工式

-ガラス基板投入ラインを報道関係者に公開


パナソニックプラズマディスプレイPDP国内第5工場

12月22日開催


 パナソニックは22日、兵庫県尼崎市のパナソニックプラズマディスプレイ株式会社PDP国内第5工場の竣工式を行なった。

手前に見えるのがPDP国内第5工場
 PDP国内第5工場は、延床面積で27万7,000m2を誇る世界最大規模のPDP工場で、2010年4月からの第1期稼働では42型換算で月産約12万台を生産。2010年半ば以降には30万台規模の生産が可能になり、2013年度以降に予定されているフル稼働時には月産100万台を生産できる。

 1枚のパネルから、42型で16面、50型で9面取りが可能で、すでに2009年11月からは、50型で9面取りが可能な150型クラスのパネルを生産。これを4K2K(4,096×2,160画素)ディスプレイに活用し、2010年2月に開催されるバンクーバーオリンピック会場に設置されることになっている。

 42型、46型、50型などのPDPのボリュームゾーンとなるパネルサイズに向けた量産は、2010年4月から開始する予定で、大阪・茨木で稼働させていた第1工場に比べて約5倍、尼崎の第3工場に比べて約2倍の生産性を実現できるという。

 また、多面取りによる量産効率の高さに加えて、工程数の削減や各設備におけるタクトタイムの短縮を図ることで、トータルの生産リードタイムは、尼崎の第4工場に比べて約2割(0.3日)、第3工場比では約3割(0.5日)短縮できるという。

 さらに、第4工場に比べて、42型1台を生産する際に排出するCO2を、約20%削減することに成功。生産設備の排出熱を空調エネルギーに活用するほか、工場の省エネ運営やガラス材料のリユースによるゼロエミッションへの取り組みなどを進めるという。



■ 大画面化や新興国の需要に対応可能

竣工式の会場入口

 22日午前10時から行なわれた神事では約80人が出席。

 パナソニックプラズマディスプレイ・長野寛之社長、パナソニック代表取締役専務 AVCネットワークス社社長の森田研氏、パナソニック常務役員 AVCネットワークス社上席副社長の宮田賀生氏などのパナソニック関係者のほか、総合監修を行なった双星設計の陸田信彦会長、施工を行なった竹中工務店の竹中統一社長、大林組の中本修司常務執行役員、きんでんの吉本圭司会長などの関係者が出席。さらに、兵庫県企業庁公営企業管理者の岡田泰介氏、尼崎市産業経済局局長の芝俊一氏、尼崎商工会議所会頭の吉田修氏などの地元関係者が出席した。


竣工式の様子玉串奉奠を行なうパナソニックプラズマディスプレイの長野寛之社長(左)とパナソニックAVCネットワークスの森田研社長(右)

直会で挨拶するパナソニックプラズマディスプレイの長野寛之社長

 午前11時から行なわれた直会(なおらい)では、パナソニックプラズマディスプレイ・長野寛之社長が挨拶。「2010年はプラズマテレビが飛躍する1年になる。新工場で生産するパネルは、2007年度の製品に比べて約半分となる低消費電力化、パナソニックが先行する3Dテレビの実現、150型を使用したライフウォールやデジタルサイネージ、エンターテイメント用途の提案などが行なえるようになる。つまり、低消費電力、3Dテレビ、ライフウォールといった提案の原動力となるのが、PDP国内第5工場ということになる。業界初となる42型の16面取りが可能な高効率工場であり、環境にも配慮した工場となっている」とした。

 また、「デジタルサイネージに関しては、大画面化に強く、縦置きでも横置きでも柔軟に生産できるプラズマテレビの方が優位であるのは明らか。尼崎で生産する10分の1から5分の1はデジタルサイネージになる可能性がある」などとした。


来賓を代表して挨拶する兵庫県企業庁公営企業管理者の岡田泰介氏

 また、来賓を代表して挨拶した兵庫県企業庁公営企業管理者の岡田泰介氏は、「尼崎の臨海部は、戦前、戦後を通じて阪神工業地帯として大活躍した。だが公害や人口集中などの問題を経て、平成10年度以降規制がようやく緩和され、再開発が進むようになった。平成17年度にパナソニックが進出し、さらにパナソニックは、姫路にも液晶パネルの大型工場を建設中。兵庫県は薄型テレビ用パネルの一大生産地として、世界に冠たるものができあがったと考えている。歴史を象徴する出来事であり、工場の竣工を歓迎したい」などと語った。

 一方、パナソニック代表取締役専務 AVCネットワークス社社長の森田研氏は、「2009年における全世界のテレビ市場の規模は、年間2億台となっている。そのうち、薄型テレビが1億5,000万台を占めている。ブラウン管が中心だった2000年には、1億台~1億3,000万台の市場規模であり、薄型テレビによってテレビ市場が倍増している。中国やインドにおける需要も旺盛で、大画面テレビが、さらに薄型化することで、年間2億台を超え、3億台に近づく可能性もある。省エネ、3Dテレビ、ライフウォールといった動きに加えて、今後は好きなときに、好きな映像を見られる双方向型のIPテレビの広がりも期待できる」などと語った。

 また、パナソニック常務役員 AVCネットワークス社上席副社長の宮田賀生氏は記者の質問に答える形で、「高効率で生産性が高いPDP国内第5工場が稼働することで、より競争力が高まる。また、42型以上のパネル生産において柔軟性を持った形でパネルを切り出すことができるため、需要動向の変化にも対応したモノづくりが可能になる。新興国に向けて出荷を増大する一方で、先進国においても42型以上の大画面ではプラズマテレビの構成比が増加していることから、その点でもPDP国内第5工場の稼働は大きな意味がある」などとした。

乾杯の音頭をとる東レの藤川淳一専務取締役挨拶するパナソニックAVCネットワークス社の森田研社長万歳和唱の音頭をとる竹中工務店の竹中統一社長


■ 150型のガラス基板投入ラインも公開

公開されたマザーガラス基板の投入ライン

 一方、今回の竣工式にあわせて、報道関係者にガラス基板の投入ラインの様子を公開した。

 PDP国内第5工場では、4階東側スペースに、プラズマパネル生産の最初の工程となるガラス基板投入ラインを設置しており、外部の企業から運び込んだマザーガラスを、吸盤をつけたロボットとアームロボットによって、1枚ずつ生産ラインに投入する。

 公開時には、150型のガラス基板が投入されており、バンクーバーオリンピックや上海万博などで使用される150型プラズマディスプレイ用のパネルになるという。

 なお、今後、プラズマテレビの量産用として生産される42型で16面取りが可能なマザーガラスは、今回公開した150型1面取りのマザーガラスよりも、サイズが大きくなるという。

PDP国内第5工場の4階に設置されているガラスメーカーから入庫したマザーガラスをこちらから投入するマザーガラスを吸盤で吸い付けて移動させる
150型のマザーガラスアームでガラスの間の合紙と呼ばれる紙を取り除くこの状態で生産ラインへと投入されることになる

マザーガラス基板の投入ラインの様子
 

(2009年 12月 22日)

[Reported by 大河原克行]