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アユート、出力3Ω化した日本限定音質強化版「AK100 MKII」

32GB+32GB SD×2枚。AK120にも迫る高音質

AK100 MKII 32GB ソリッドブラック

 アユートは、iriverのハイレゾ対応ポータブルオーディオプレーヤー「Astell&Kern AK100」の“日本限定発売の音質強化型モデル”として、出力インピーダンスを22Ωから3Ωに変更した「AK100 MKII 32GB ソリッドブラック」を9月14日に発売する。直販サイトでの価格は76,800円。プレーヤー本体に加え、レザーケースや32GBのmicroSDHCカード×2枚、予備のディスプレイ&背面保護シート×2などもセットになっている。

パッケージを展開したところ
内容物一覧

 昨年10月から販売されている「AK100」(直販54,800円)は、販売している日本以外の各国の基準に合わせるため、出力インピーダンスを22Ωにしている。しかし、編集部で試聴したところ、組み合わせるイヤフォン/ヘッドフォンによっては、低域の音圧が薄めに感じられる傾向があった。

 同じようなユーザーの声を受けて、6月に公開されたファームウェア「2.01」で出力を3dBブーストする機能を追加。また、6月に発売された上位モデル「AK120」(直販129,800円)は、出力インピーダンスを3Ωに下げている。

左がAK100のシルバーモデル、右がAK100 MKII。筐体はそのままだ
AK100 MKIIの背面に「MKII」の文字が見える

 今回“音質強化型モデル”と位置付けられ、日本限定販売される「AK100 MKII」は、AK100の出力インピーダンスを、AK120と同様の3Ωに下げたモデルで、出力の向上や、低域の音圧アップと共に、「低インピーダンスのイヤフォンやヘッドフォンとのマッチングをより向上させた」というモデル。なお、3dBのゲインブースト機能は引き続き搭載されている(ユーザーがON/OFF可能)。

 出力インピーダンスの変更だけでなく、イコライザの設定にある、プロのエンジニアが調整した「PRO EQ」設定も、AK100 MKII専用に調整したものを新たに搭載。「3dBゲインブースト機能と合わせて使用することにより、その真の効果を体験いただける」としている。

AK100 MKIIにも3dBのゲインブースト機能は搭載されている
「PRO EQ」はAK100 MKII用に新たに設定された

 内蔵の32GBストレージメモリに加え、microSDカードスロットを2基搭載しているが、「MKII」にはSanDisk製の32GB microSDHCカード(クラス10)を2枚同梱。合計96GBが利用可能(システム領域を除く)。さらに、24bitのサンプル曲を5曲収めたMQS 2GB microSDカードも同梱。

 セットの本皮ケースはBUTTERO製で、AK100 MKII限定のもの。表面には、Astell&Kernブランドを象徴する「A」の刻印が入っている。ディスプレイ用、背面用の予備保護シート2枚も付属。専用ポーチやmicroUSBケーブルも同梱する。

セットの本皮ケースはBUTTERO製
入れたままでも各種ボタンや端子にアクセスできる

 その他の仕様はAK100と同じ。DACにWolfsonの「WM8740」を採用。WAV、FLAC、APE、MP3、WMA、OGG、AAC、AIFF、Apple Losslessの再生が可能。WAV、FLAC、AIFF、Apple Losslessは24bit/192kHzに対応する。ギャップレス再生も可能。

 出力はステレオミニのイヤフォン出力(光デジタル出力兼用)に加え、光デジタル入力も装備。外部DACと連携したり、AK100 MKIIをDACとして利用する事も可能。また、USB端子も備え、PCと接続してUSB DACとしても動作する。USB DAC時には、16bit/192kHz、24bit/96kHzまでの対応となる。対応OSはWindows XP/Vista/7/8(32bit/64bit)、MAC OS X 10.7.5以上。

microSDカードスロットを2基搭載
光デジタルの入力、出力も備えている
ダイヤル式のボリュームがAKシリーズのトレードマーク

 Bluetooth機能も備えており、バージョン3.0に準拠。プロファイルはA2DP、HFPをサポートする。ディスプレイは2.4型で、解像度は320×240ドット。静電容量タッチパネルタイプ。本体のカラーはソリッドブラック。バッテリの持続時間は、128kbpsのMP3再生で約20時間、24bit/192kHzのFLAC再生で約12時間。外形寸法は79×59.2×14.4mm(縦×横×厚さ)。重量は約122g。

試聴してみる

 AK100とAK100 MKIIを聴き比べてみたい。イヤフォンはShure「SE535」、ヘッドフォンはソニー「MDR-1R」を使用した。

左からAK100、AK100 MKII、 AK120

 まずノーマルのAK100で、3dBのゲインブーストをOFFにした状態で「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best Of My Love」を再生する。AK100のサウンドは、繊細かつ音場の見通しが良く、広々とした透明度の高い空間に、中高域が気持よく広がっていくイメージ。後からいろいろと改良が加えられているので“AK100自体の音はイマイチなのでは”と思われるかもしれないが、まったくそうではなく、これはこれで非常にクオリティが高い。低域の量感が控えめであるため、確かにバランス的には高域寄りだが、逆に低域がモリモリ出るカナル型イヤフォンなどと組み合わせるとバランスが良い。

 次にAK100の3dBブーストをONにすると、控えめだった中低域の量感がグッとアップ。1分過ぎから入るアコースティックベースの迫力が増して、躍動感や低重心化した安定感がプラスされる。それだけでなく、ヴォーカルの中低域もブーストされるので、音像が1歩近づいたように感じるのが面白い。楽曲や好みにもよると思われるが、恐らく多くの人が3dBブーストONを常用するだろう。

AK100 MKII

 次に「AK100 MKII」の出番だ。気になるのは「出力インピーダンスが3ΩになったAK100 MKII(3dBブーストOFF)」と、先程の「AK100(3dBブーストON)」の違いだ。ぶっちゃけ、「AK100(3dBブーストON)」の音はとりたてて不満の無いクオリティなので、「そんなに違いが出るものかな」と半信半疑で「AK100 MKII」の再生ボタンを押したが、結論としてはクオリティにかなりの違いがある。

 やはり、特に中低域で違いが顕著。「AK100 MKII」のベースは、3dBブーストしない状態で迫力があるだけでなく、低音自体の沈み込みが「ズシン」と深く、またその低音に締まりと芯がある。「AK100(3dBブーストON)」に戻ると、芯が弱く、「ボワン」という膨らみのある低音に聴こえてしまう。ボリュームを上げていくと、「AK100 MKII」の低域は骨に響くのに対し、「AK100(3dBブーストON)」は胸(肺)に響いてそこで終わってしまう。

 低域がしっかりと伸びているので、高域もより抜けが良く感じる。また、音の1つ1つが力強くなる事で、細かな音が聴き取りやすい。繊細さは維持されているので、音場に広がる音の余韻が消え入る様子もクリアに見通せる。

 なお、「AK100 MKII」ではここからさらに、3dBブーストも可能だ。試しにONにしてみると、ノーマルのAK100と同様に、低域の音像が膨らみ、より迫力のあるサウンドに変化。ヴォーカルも勢いが増して前に浮き出てくる。だが、OFFの状態で中低域のパワーは十分感じられたので、そこがアップしても、ノーマルAK100で感じたような“劇的な変化”は感じにくい。

 ライブ録音やハードなロックなど、迫力のある音がガツンと飛んで来て欲しい楽曲や、打ち込みの低域がうねるような楽曲では3dBブーストが心地よく、マッチする。だが、個人的にはOFF時の方がバランスが良く感じ、中低域の細かな音は聴き取りやすい。音像と音像の隙間もOFFの方がスッキリ見通せるため、音場の広さや立体感を感じやすい。再生する音楽のジャンルに合わせて使い分けるとよさそうだ。

左からAK100、AK100 MKII、 AK120

 結論として、3dBブーストしたノーマル「AK100」を上回る音質を実現しており、その差は「MKII」と言うよりも、“上位モデル”と言った方が良いだろう。

 気になるのは価格差だ。直販価格で比べると、「AK100」は54,800円、「AK100 MKII」は76,800円と、22,000円の違いがある。出力インピーダンスを変更しただけで2万円以上アップすると考えると高価に感じるが、「AK100 MKII」には32GBのSanDisk製microSDHC(クラス10)×2枚や、本皮ケースなどを同梱している。SanDiskのmicroSDは12日現在、通販サイトなどで1枚5,000円程度。また、ケースは、上位モデル・AK120用のものが直販7,580円で販売中だ。これらを加味すると、本体のみの価格差はさほど大きくはなさそうだ。「microSDは既に持っているのでバンドル無しバージョンを」という声もありそうだが。

 こうなると、出力インピーダンスに違いがない上位モデル「AK120」(直販129,800円)との違いも気になる。聴き比べると、ノーマルAK100との間にあった距離は大幅に縮まり、かなり良い勝負になる。低域がパワーアップした事で、全体のバランスの良さに、両機種とも大きな違いはない。ただ、音そのものの情報量の多さ、生々しさが「AK120」の方が一枚上手だ。DACの「WM8740」をL/R個別に搭載したデュアルDAC仕様になっているためで、音場にもより深みがあり、上位機種の“余裕”のようなものを感じさせる。だが、曲によっては密度感のある「AK100 MKII」の方がマッチするというシーンもあるだろう。

 「さすがに10万円を超えるAK120には手が出ない」という人で、「AK100はちょっと音が大人しいかな」と感じていた人には、文句なしでオススメできる。また、このハイレベルなサウンドでAK120よりもコンパクトなのも見逃せないポイント。最初から32+32+32=96GBの環境が整っているので、とにかくハイレゾファイルや沢山の楽曲を持ち歩きたいとうユーザーにも気になるモデルの登場と言えるだろう。

(山崎健太郎)