ニュース

4K Readyが進む欧州テレビ市場。IFA GPC開幕

4Kテレビは1,000ユーロから。白物シフトの進む家電業界

 ドイツ・ベルリン国際見本市会場で9月5日~10日(現地時間)に開催される家電ショー「IFA 2014」のプレイベント「IFA 2014 Global Press Conference」(IFA GPC)がトルコのアンタルヤで開催された。ここでは協力企業によるIFA 2014に向けた製品展開紹介の模様などをお伝えする。

 今回のプレス向け説明会に参加したのは、GRUNDIG、BSH、VESTEL、WOOX(Philipsのオーディオ)、TP Vision、TCL。Philips以外は、日本ではあまり馴染みのない、欧州メーカーだ。しかし、4Kテレビの推進や、白物/デザイン家電へのシフトなどの市場トレンドは似通っており、また各社の展開からは意外な日本とのつながりも見えてくる。

隠れたテレビ大国トルコを牽引する「VESTEL」

VESTELのTuran Erdogan CEO

 トルコの「VESTEL」は、IFA GPCの会場であるトルコを拠点とした家電メーカー。欧州の薄型テレビ市場で高いシェアを持つほか、モバイル端末や白物家電、LED照明、ディスプレイなど幅広い製品展開を行なっている。

 VESTELのTuran Erdogan CEOは、同社が24年前に初めてIFAに出展した時は、100m2規模の小さなブースだったが、いまは30倍以上に拡大していること、IFAへの出展が同社の成長を後押ししたことを紹介し、「IFAは特別な場所」と語った。また、同社に代表されるトルコのテレビ産業は、EU圏内の約30%のテレビを作っており、欧州の家電産業の中心地であることをアピールした。

 VESTELの欧州テレビ市場におけるシェアは20.3%。Samsung(32.1%)に次いで2位となっている。また、VESTELは大手メーカーのOEMや、ODM(相手先ブランドでの設計/製造請負)なども行なっており、トップグループの大手メーカーとも協力。日本でも1社を除くほぼ全社と取引しているとのこと。

 2014年にテレビで注力する領域は「4K」。3Dの失敗を笑い話にしながらも、4K市場がすでに立ち上がっており、高いニーズがあること。チューナもコンテンツも無い段階ではあるが、4K入力/表示に対応したテレビを「4K Ready」として、消費者が認知しており「将来に対して対価を払っている」と説明。大型を中心に同社も4Kテレビを強化する方針を示した。

欧州の薄型テレビシェア
4Kテレビに注力

 一方でスマートTVについてはネット接続率が約20%と低いため、4Kを中心に展開。有機ELについては「歩留まりが非常に低い」ため、重視していないとのこと。また、天然資源の少ないトルコのメーカーとして注力しているのが、省エネ性能。テレビのLED化のほか、LED照明にも力を入れているという。

 日本市場については「難しい市場。多くのメーカーがいて、消費者は日本のメーカーの日本製を好む。ただし、1社を除くテレビメーカーとは取引しており、協力関係にある。また、韓国市場は関税などで保護された市場。欧州のような自由でオープンな市場が望ましい」と語った。

スマートホームなどの省エネ対応も強化
VESTELの製品展開

TCLの4Kテレビは1,000ユーロ。110型4KをIFA 2014出展

 世界シェア3位のテレビメーカーで、欧州ではTHOMSONブランドも展開するTCLは、欧州地域のマーケティングディレクターAntoine Salome氏が同社のビジネスを説明し、1,000ユーロの4Kテレビなどの製品を紹介した。

 Salome氏は、同社の強みとして「垂直統合型」のビジネスであることを紹介。子会社の「CSOT(China Star Optelectronics Technology)」の8.5世代工場における大型パネルのコスト競争力や調達安定性などを活かしており、2015年には液晶7割、有機EL3割の8.5世代工場を、2016年には第6世代の有機EL工場を新設予定という。

TCL Antoine Salome氏
有機ELの工場も新設予定
THOMSONは第4四半期に曲面4Kテレビ

 TCLでも、2014年に強化するのは「4K(UHD)」だ。Salome氏は「UHDで欧州トップ3を狙う」と述べ、THOMSONブランドは35歳以上のファミリー層向けの上位製品を展開。第4四半期には曲面(Curved)の4Kテレビも発売予定としている。

 TCLブランドは20~35歳の若い世代に向けた製品展開を行ない、4Kテレビは40/49型から用意し、価格は49型で1,000ユーロ(約14万1,000円)と安価に設定。4K支持層の拡大を図る。一方で75型以上の「Jumbo UHD TV」も展開し、75/85/110型まで展開。また、IFA 2014では、曲面(Curved)テレビで最大の110型を発表予定としている。

TCLは1,000ユーロの4Kテレビ
110型までのJUMBO UHD TV
世界最大の110型CurvedをIFAで発表

TP VisionはAndroid TV。Philipsの新DJヘッドフォン「A5-PRO」

PhilipsのAndroid TV「8000シリーズ」

 Philipsブランドのテレビを手がける「TP Vision」のプレゼンテーションは、4K/UHDにはそれほど触れず、Android TVやLED照明を内蔵した「Ambilight」(アンビライト)の活用などに触れた。

 Android TVについては、アプリやゲームの追加が可能で、テレビを購入するだけで、ゲームを楽しめることや、スマートフォン/タブレットからの操作や連携が容易なことなどを強調した。

 Ambilightは、発表から10年以上経過しているが、「時代遅れな技術ではない(Chief Commercial OfficeのNico Vernieuwe氏)」として、LED照明の「Hue+」との照明色自動連動や、サッカーの応援チームのフラッグを指定し、ゴールと同時にAmbilightを点滅させる機能などを新モデルに追加しているという。

Android対応でゲームプレイも
スマホとの親和性も高い
Ambilightでサッカーの得点に連動して点滅

 Philipsブランドのオーディオ製品を手がけるWOOX Innovationは、DJ Armin Van Buurenと共同開発した新DJヘッドフォン「A5-PRO」を紹介。50mmドライバを搭載したPhilipsのDJヘッドフォンとなり、脱着式ケーブルなどでDJ対応を強化したという。

 また、Fidelioブランドの新スピーカーとして、フロントスピーカーの上部に取り外し可能なサラウンドスピーカーを内蔵した「Fidelio E5」を紹介。上部のスピーカーを外した場合はワイヤレスのリアスピーカーとして利用でき、ステレオ、4chのサラウンドを切換えできる「Surround On Demand」として提案している。

Philips「A5-PRO」
Surround On Demandを謳う新Fidelioスピーカー「E5」

洗濯機作っていないけど、そう思われていたから……「GRUNDIG」の白物シフト

GRUNDIGのChristian Struck氏

 「GRUNDIG」(グルンディヒ)は、テレビやオーディオ製品を手がけ、ドイツを中心に欧州で人気のブランドだ。2014年の新製品として、4K(UHD)テレビや、オーディオ製品を強化し、秋のIFAでも新製品を投入することを明らかにした。

 ラジオからスタートし、音響、映像メーカーとして展開していたGRUNDIGだが、欧州でのブランド認知はとても高いという。その「ブランド」を活かし、2013年からはホームアプライアンス(白物家電)に参入した。洗濯機や冷蔵庫、調理家電などを発売している。

 同社のDirector Brand ManagementのChristian Struck氏は、白物家電参入の理由について「最新の技術で最良の製品を」という同社の目標に一致する製品ができただけでなく、2009年のFacebookでの同社調査において、「GRUNDIGは冷蔵庫を作っている」、「洗濯機を作っているブランド」などと「誤解」されていることがわかったという。誤認ではあるが、GRUNDIGにそうしたイメージを持たれていることを知ったことが、白物家電参入を後押ししたとのこと。白物家電においても、ブランドとデザインを活かした製品展開を図るとする。

GRUNDIGも4Kテレビを積極展開
白物家電に参入
(発売していないが)洗濯機などを作っていると思われている「GRUNDIG」

B/S/HのHome Connect提案

Home Connectの狙い

 B/S/H(Bosch & Siemens)は、ネットワーク化された家電製品を「1つのアプリ」で管理/操作可能にする「Home Connect」を提案。9月のIFA 2014に向けて製品開発を進めることを発表するとともに、パートナーの参加を呼びかけた。

 シーメンスやBosch、NEFFなどの対応製品発売が予定されており、2014年中にiOSアプリが、2015年にAndroidアプリが提供される。機器の操作だけでなく、音声コントロールなどにも対応予定という。

 BSHでHome Connectを担当するClaudia Haepp博士は、同ソリューションをオープンに展開し、参加企業は機器やプラットフォームなどに依存せずに、家庭内の家電コントロールを行なえることを強調。Home Connectの実現には、独自のプロトコルを使っているが、対応やパートナーの参加はオープンにやっていくとのこと。

様々なデバイスをアプリからコントロール
Home Connectアプリのイメージ
ロードマップ
パナソニックはプレゼンテーションは行なわないが、4Kテレビのデモを行なっていた
4K対応のウェアラブルカメラ「HX-A500E」

(臼田勤哉)