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REGZA Z20Xの画質が進化。すごく暗い映像の描写力向上

'14年モデルもHDR対応。国内展開に変更なし

 東芝ライフスタイルは、4Kテレビ「REGZA」のフラッグシップ「Z20Xシリーズ」のソフトウェア・アップデートを12月17日から開始する。対象製品は65Z20X、58Z20X、50Z20Xの3機種で、これにより、スカパー! プレミアムサービスの4K放送録画にも対応。さらに、ひかりTVの4K-IP放送サービスとHDR対応の4K VODサービスにも対応する。

65Z20X

 ここまでは既報の通りだが、実はこのアップデートにあわせて、映像エンジン「4KレグザエンジンHDR PRO」のファームウェアも更新され、高画質化が図られるという。主な強化ポイントは以下のとおり。

・LEDエリア駆動の性能改善による画質向上
・HDR復元プロの効果を最適化

 まずは、エリア駆動の改善だ。Z20XではHDRのダイナミックレンジのために、エリアコントロールの分割数拡大だけでなく、点灯時間制御+駆動電流制御によるLEDの輝度制御を導入し、暗部の表現力を高めた。輝度の向上+暗部の再現性の向上いより、HDR時代のハイコントラストと高画質を目指している。

 今回のアップデートはその考えをさらに進めたもの。具体的には、「真っ暗な映像の時に何かがうごめいている、といった“本当に暗い”映像の描写力が向上した」(画質設計担当のTV映像マイスター住吉肇氏)という。

 具体的には、エリアコントロールを決めるための、バックライトの点灯値を決めるアルゴリズムを変更した。これまでのバックライト制御は、それぞれのエリアの特徴抽出に加え、エリアの平均輝度を(APL)とピーク輝度のそれぞれの値を参照しながら、一定のブレンド比率でエリアブロックの点灯値を決めていた。この制御ではブレンド値が一定のため、ピークの明るさにつられて暗部の情報量が出ないシーンもあったという。そこで、新ファームウェアでは、ピーク輝度が高い場合のブレンドを変えることで、暗部をより細かく制御できるようにしたという。

 もう一点が「HDR復元プロ」の効果の最適化。上記のバックライトが暗部の改善とすると、こちらは明部の改善で、スタジオ撮影などの明るい部分の「白が飛びかけている領域の階調性」の表現向上に注力したことで、特にデジタル放送の生放送や、明暗差の大きな音楽ライブなどでの表現を向上しているという。

 なお、最新のZ20Xだけでなく、2014年モデルの「REGZA Z10X/J10X」も、HDMIのHDR信号対応と、「ハイダイナミック復元」の性能を向上し、12月22日よりアップデートを行なう。Z10Xシリーズ開発時にHDRが盛り上がりつつあったことから、対応を検討していたとのことだ。

 実際にHDR/BT.2020の信号を入力したZ10Xを見たところ、HDRらしいダイナミックレンジの広さはもちろんだが、精細感も高まったように感じられる。輝度700nitのZ10Xと、最高1,000nitを誇るZ20Xを隣において見比べると差はあるが、昨年モデルも最新スペックの映像対応できる点は歓迎したいところだ。

HDR対応の65Z10X(左)と65Z20X(右)。どちらもHDR/BT.2020信号を入力している

 また、ダイナミックレンジ復元も改善。より積極的にHDRに近づけるようチューニングを改善したという。従来はSDR信号から撮影時のHDR信号を“推測”していたが、HDRの盛り上がりにより、“本物のHDR映像”が見られるようになったことで、チューニングのターゲットが明確になった。そのため、Z20Xの画作りの思想をZ10Xに入れ、Z20Xに近づけたという。

 実際に比較映像(HDR撮影信号をSDRでグレーディングしたもの)を見てみると、その差は顕著。海の波頭の白さやそのディテール感、砂浜の描写に大きな違いが見られる。現状HDR映像が普及していない中で、地デジや既存コンテンツの高画質化が図れるという点では、重要なアップデートだ。

従来の65Z10X(左)と新HDR復元を導入した65Z10X(右)。海の波頭や砂浜の描写に大きな違い
従来の65Z10Xの「質感リアライザー」
アップデート後の65Z10Xの「質感リアライザー」
SDR信号の輝度分布
HDR信号の輝度分布。表現可能な範囲が大幅に広がっている

REGZA国内展開に変化なし。新エンジンで次世代対応も

 この年末商戦は、4Kテレビが伸長しており、11月のリビングテレビ(49型以上)では、4Kテレビの構成比が約7割となっている。東芝も、Z20Xの投入だけでなく、HDR時代に向けた細かな画質や4K録画対応など改善を続けている。テレビの生産撤退や海外工場売却など、気になる報道もあるが、国内における開発や販売体制の大きな変化はないという。

 REGZAの商品企画を担当する本村裕史氏は、「REGZAは来年10周年を迎える。Z20Xも、Cell REGZA等に並ぶエポック・メイキングな製品として、画質やその技術について評価いただいている。『本物を作る』というブランド立ち上げ時の目標が実現でき、共有されつつあり、さらに10周年に向けて新製品の開発を進めている」と言及。画質はもちろんだが、タイムシフトマシンを軸としたクラウド連携の2本柱に開発に取り組むという。

 また、Z20Xシリーズで新搭載した映像エンジン「4KレグザエンジンHDR PRO」も、「5年先を見据えて開発した」とのことで、さらなる進化の余地は残されているという。エリアコントロールを始めとして新規のハードウェアを搭載しているが、ソフトウェア/ファームウェアの改善により、画作りをより緻密に進化させられるよう設計し、内部処理も完全12bit化されている。

 将来的には同エンジンでの8K対応も想定。また、具体的な製品計画は未定だが、有機ELにも対応できるよう、マルチデバイス化を想定したエンジンとしている。

(臼田勤哉)