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「ヤマハにしかできない」密閉型最上位ヘッドフォン「YH-C3000」。こだわりの木製ハウジング
2025年9月10日 13:00
ヤマハは、密閉型ハウジングのハイエンドヘッドフォン「YH-C3000」を10月30日に発売する。価格は305,800円。
開放型のハイエンドヘッドフォンにはオルソダイナミックドライバーを使っているが、密閉型のYH-C3000は、ダイナミックドライバーを採用している。しかし、このドライバーは約10年に渡って研究開発を続けてきた、新たな振動板を採用した新開発のもの。そこに、楽器メーカーとしての技術も組み合わせ、「ヤマハにしかできない密閉型ヘッドフォン」を実現した。
ドライバーは「アルモダイナミックドライバー」と名付けられたもので、イタリア語のArmonia(音楽用語で調和)から採用。もともとギリシャ語で、ハーモニーという言葉の由来でもある。
ハイエンドヘッドフォンのために、こだわりを持って作られたダイナミック型ドライバー。振動板は、一般的なドライバーではPETや金属が使われるが、PETは軽量で内部損失もあるが剛性が不足し、解像度が出にくかったり歪みやすい。金属は剛性は高いものの、重くて内部損失も少なく、固有音が出たり、応答性に劣るなどの欠点がある。
これらを解決し、解像度の高さ、音の滑らかさ、応答性の高さをバランスよく実現する振動板を、単一素材で作る事は難しい。そこで、特性の違う3層の振動板を、1つに組み合わせる事で、理想の特性を追求した。
具体的には、ヤマハのハイエンドスピーカーで使っているPBO繊維ザイロンと、紙、樹脂、発泡樹脂を組み合わせている。化学繊維のザイロンと紙を混ぜ合わせた配合層を使い、軽量発泡層をサンドイッチした構造で、剛性の高さと適度な内部損失、軽さを両立させた。
開発中は、全てザイロンを使う事も試したそうだが、ヘッドフォン用ユニットとしては重くなってしまったり、コストも高くなってしまう。そのため、ザイロンを独自配合した混抄紙とし、軽量さを持ちながら特性を出し、新たにアルモダイナミックドライバーが作られたという。
ドライバー内部のパーツにもこだわり、鉄の中でもより純度の高い純鉄を選定した、純鉄製ポールピースを採用。純度の低い鉄と比べてより磁力を逃がすことなくユニットを駆動し、応答性を高めている。
ハウジングは木製。「楽器ブランドとして長年にわたり木材の調達から加工技術までを磨いてきた、ヤマハだからこそ製造できる木製ハウジング」だという。
約70年にわたり、木材を扱ってきた秋田の子会社(現ヤマハミュージッククラフト秋田)で選定、加工した上質な木材を使用。色々な木材を扱う中で、水分が絞れており軽量かつ剛性も高いドイツ産のブナを選んでおり、音の立ち上がりの良さや解像度に貢献するという。
さらに、楽器で培ったノウハウを活かし、ブナ材の鳴りを最大限に活かすウレタン塗装を実施。ギターのボディなどでも使用する塗装であり、ひとつひとつ手作業で削り、磨き、塗装の工程を重ねることで、楽器を紡彿とさせる艶のあるハウジングになっている。
ハウジング用の木材は調達から加工に至るまで自社で実施。YH-5000SEと同じ国内工場で、熟練の職人が1台ずつ組み立てている。
YH-5000SEと同様の技術を取り入れ、ステップレススライダーや2レイヤーヘッドバンドを使うことで、快適な装着感も追求。密閉型ながら330gの軽量性も実現した。
独自開発の低反発イヤーパッドが付属。3.5mmのアンバランスケーブル(2m)が付属。標準プラグへの変換アダプタや、キャリングケース、クリーニングクロスが付属する。
再生周波数帯域は5Hz~55kHz。インピーダンスは34Ωで、感度は94dB/mW。重量は約330g。
音を聴いてみる
付属のアンバランスケーブルで「グレゴリー・ポーター/ホエン・ラブ・ワズ・キング」や、「上原ひろみ/ドリーマー」などを聴いた。
木製ハウジングなので、「木の響きがたっぷり出る、ウォームなサウンド」を想像するが、実際にYH-C3000を聴いてみると、その印象とは異なり、クリアでハイスピード、モニターライクなサウンドだ。音像も近めで、1つ1つの音をしっかりと聴き取るタイプだ。
これは、木製ハウジングが、ギターのボディなどでも使用するウレタン塗装で仕上げる事で、かなり硬くなるためだと思われる。密閉型らしい1つ1つの音のパワフルさ、密度感がたっぷり味わえる。それでいて、余計な響きは抑えられているため、ボワボワした音にはならず、クリアで抜けの良さも感じられる。
特筆すべきは、パワフルさと解像度、そして滑らかさを両立した音の質感だ。押し出しが強く、ハッキリした音であり、歌手のブレスなど、細かな音がクリアに聴き取れるのだが、音色自体はナチュラルで、滑らかさがある。
金属質な響きが乗ったり、声が乾いている事もなく、自然なサウンドでありつつ、ハイスピードで情報量が多く、そして中低域のパワフルさも味わえる。今までの密閉型ヘッドフォンでは、なかなか味わえない世界を堪能できるヘッドフォンだ。