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DALI、ペア57200円の“もっとも小さなKORE”「KUPID」。日本先行発売

KUPID、ゴールデン・イエロー

ディーアンドエムホールディングスは、DALIの新コンパクトスピーカー「KUPID」(クーピッド)を9月26日に発売する。価格はペアで57,200円。最上位スピーカー「KORE」と同じように、特別な開発プロセスから生まれた製品であり、KOREで培った技術も投入。“もっとも小さなKORE”でもあるという。なお、このスピーカーは日本でプレミア先行発売される。

カラーはダーク・ウォルナット、ブラック・アッシュ、キャラメル・ホワイト、ゴールデン・イエロー、チリー・ブルーと豊富かつ、カラフルなラインナップとなっており、ウーファー振動板の色味も、筐体のカラーに合わせたものになっている。

カラーはダーク・ウォルナット、ブラック・アッシュ、キャラメル・ホワイト、ゴールデン・イエロー、チリー・ブルー
チリー・ブルー

DALI開発部門責任者、クリスティアン・モラー・エステルゴー・ペダーセン氏によれば、KUPIDは、この価格ながら、同社のCEOが開発とチューニングに直接かつ積極的に関与して作られており、KOREのように「特別な開発プロセスを経た製品。KOREを大切に思うのと同じくらい、KUPIDも大切に思っている」とのこと。

キャラメル・ホワイト

KOREでは、ソフトドームなど、DALI伝統の有機素材を使いながら、ロスが大きいという素材の欠点を補完し、ハイスピードなサウンドを再生できるドライバーを搭載。温かみがあり、聴き疲れしない音でありながら、微細で広大な空間表現も実現。“オーディオサイエンスの矛盾をひとつに体現した”という。こうした要素を、小さなKUPIDでも実現しているという。

左がKUPID、右はハイエンドのKORE。KUPIDは“もっとも小さなKORE”だという

ユニットは26mmのソフトドームと、新開発115mmスフェリカル型(球型)ウーファーの2ウェイ、2スピーカー構成。シリーズ化を度外視した、コンパクトスピーカー専用設計を随所に採用している。

26mmソフトドームツイーター

ツイーターは、DALIハウスメイドで、超軽量の26mmソフトドーム振動板を採用。この振動板は、向こう側が透けて見えるほど、細くて軽い繊維で作られているのが特徴。

振動板は、向こう側が透けて見えるほど、細くて軽い繊維で作られている

磁気回路には、コストの問題で低価格なスピーカーには一般的には使えないネオジウムマグネットを採用した。(DALIエントリーモデルのOBERON1はフェライト)。薄くて軽量な振動板と組み合わせ、極限までトランジェントを高めており、「OBERON1を超えるトランジェント性能を実現した」という。

ネオジウムマグネットを採用

また、一般的なソフトドームのユニットでは、磁気ギャップ部分に粘性が3,000cp程度の磁性流体を入れている。これは反応をはやくするための工夫だが、この磁性流体の粘性がユニットが振幅する際のブレーキになる事を避けるため、KUPIDでは粘性500cpという、粘性がかなり柔らかいものを採用。磁性流体を使っていないにも近い、トランジェントを実現したという。

D&Mの澤田龍一シニアサウンドマスターによれば、「一般的なユニットでは磁性流体を入れるものだが、それが(振幅の)ブレーキになるのは避けたい。しかし、生産性の問題で入れないわけにはいかない。そこで、かなり粘性が柔らかいものを使っている。ツイーターは、超高域が出るかが問題とされる事が多いが、このツイーターでは2,100Hzと、けっこう低い音まで出ている。磁性流体は、通常はいい感じのブレーキとして機能し、振動板が振幅する時の暴れを抑えてくれるが、KUPIDのツイーターの場合(磁性流体の粘性が)柔らかいので、他のブレーキが必要となる。そこでネオジウムの強力なマグネットで制御し、暴れを抑えている」という。

D&Mの澤田龍一シニアサウンドマスター

ウーファーは、新開発の115mmスフェリカル型(球型)ペーパー&ウッドファイバーコーン・ドライバー。ウーファーの口径が小さいと、高い周波数まで再生できてしまうものだが、既にツイータ―がある2ウェイスピーカーの場合、あまり上が伸びてほしくはない。そこで、ウーファー振動板の形状を、深いお椀型にしたのがスフェリカル型コーン。

新開発の115mmスフェリカル型(球型)ペーパー&ウッドファイバーコーン・ドライバー

この形状にする事で、不要な中高域を綺麗に落とすことができ、ネットワークへの負荷を抑えられ、ネットワーク構成をシンプルにできる。

しかし、澤田氏によれば、深いお椀型にすると、振動板中心部分の強度が不足しがちになるという弱点がある。そこで、ボビンとコーンの接合部分に、アルミのリングを形状工夫して追加する事で、中央分の強度の不足をカバーしている。

深いお椀型のスフェリカル型コーン

ウーファーの磁気回路には、独自のSMC 2nd Gen.を採用。チタン製ボイスコイルボビンも採用している。振動板はウッドファイバー。

ネットワークは、SMCコア入りチョークと高品位パーツを投入。前述の通り、適度な高域減衰性能をもつスフェリカル型コーンを採用したことで、シンプルで、浅いネットワークフィルターを実装できている。また、OBERON1のネットワークには電解コンデンサーが使われているが、それを超えるグレードのフィルムコンデンサーを実装した。

筐体は、デンマークの木工技術を活用し剛性の高いものに仕上げている。バッフルの板厚は18mmで、OBERONの15mmよりも厚い。素材は、より剛性の高い厚いPVCを採用。形状も、ラウンド加工されている。表面は塩化ビニールシートで仕上げており、ネジが露出せず、デザイン性を高めているほか、響きもこれでコントロールしている。

リアバスレフで、専用設計のデュアル・フレア・バス・レフレックス・ポートを採用。後ろ側だけでなく、筐体内の内側ポートも含め、裾が広がったフレア形状になっており、空気の流れを最大化し、歪も抑えている。

再生周波数範囲は63Hz~25kHz±3dB、感度は83dB@1m for 2.83V。公称インピーダンスは4Ω。最大音圧レベルは103dB。推奨アンプ出力は40~120W。グリルを含む外形寸法は、150×198×245mm(幅×奥行き×高さ)、重量は2.96kg。

グリルを取り付けたところ
スピーカーターミナル

音を聴いてみる

発表会において、短時間だが試聴したので、ファーストインプレッションをお届けする。

サウンドの前に、実機を目にした感想として、非常にコンパクトで可愛いスピーカーだ。ポップだが、落ち着きもあるカラーリングであり、ウーファーの振動板が、カラー毎にマッチする色に染められているのも一体感があって良い。

ネジ穴がまったく見えないなど、ペアで57,200円という、DALIのスピーカーとしては手に取りやすい価格ながら、凝った作りだ。

サウンドも立派だ。

コンパクトなスピーカーなので、低音はそれなりだろうと予想していたが、それを良い意味で裏切ってくれ、ジャズピアノの左手はしっかり沈み、決して腰高なバランスではない。フロア型のような地鳴りのような重低音は厳しいが、「アデル/Strangers By Nature」の歌声も、肉厚で張り出しの強さも感じられ、サウンドの満足感は高い。

音の傾向としては、DALIらしい、しなやかでウォームなサウンドだが、決して眠い音ではなく、ハイスピードでトランジェントの良さも感じられる。ボーカルのブレスや、バイオリンの弦の震える様子など、微細な音も聴き取れる。それでいて、エッジを強調したような不自然さは無く、ナチュラルなサウンドを維持している。これらの特徴は、KOREの特徴でもあり、“もっとも小さなKORE”というコンセプトも頷けるサウンドだ。

小型ブックシェルフの特性を活かし、音場は広大で、奥行きも深い。立体的な音場に包みこまれる。ゆったりと聴きながら、情報量もしっかりと得られる。小粒だが、ポテンシャルは非常に大きいスピーカーに仕上がっている。