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Focal Professional、集大成スタジオモニター「UTOPIA MAIN」披露
2025年9月25日 17:31
Media Integrationは25日、Focal Professionalブランドのスタジオ向けラージモニター新製品である「UTOPIA MAIN」を中心に、同社製品の試聴体験会を関係者向けにビクタースタジオで開催。開発責任者らも来日し、最上位モデルの3.5ウェイ「Utopia Main 212」と、3ウェイ「Utopia Main 112」を紹介した。
Utopia Mainは、Focalが40年以上にわたるドライバ設計の研究と、Pro Audio Divisionにおける20年にわたるスタジオモニターの技術革新を組み合わせたモデル。価格のイメージは、専用アンプとのセットでUtopia Main 212が約800万円、Utopia Main 112が約500万円。
2モデルに共通する特徴として、一般的な電圧方式ではなく、電流制御型のクラスHアンプがセットになっている。グローバルセールス責任者のVincent Moreuille氏が「かなりの時間をかけ、研究して完成させた」というアンプで、電流制御で駆動することで、自然な増幅で、ドライバーに直接パワーを伝え、レスポンスを正確にコントロールできるとしており、無響室での測定では「これまでのFocal史上、最も低いTHDレベルを達成した」という。
DSPなどは使っていないアナログアンプだが、背面に調整用のコンソールを用意し、設置した環境に合わせてアナログ領域で補正ができる。バスレフだが、ポートを塞いで使うことも可能。
ツイーターの振動板素材にはベリリウムを採用。Focal Professional部門のプロダクトマネージャーであり、開発責任者のSylvain Gondinet氏は、良いスピーカーを作るために必要な振動板の素材には「軽量」「剛性」「ダンピング」の3つが必要だと説明。
軽量であれば素早く動作でき、剛性が高いと振動板が振幅した時に歪まない、適度なダンピングで共振を抑えることで、素材固有の音が出にくく、原音に忠実な再生ができるとする。
その上で、アルミやチタンなどと比べても、これらの特性に優れるチタンを採用したことを紹介。各素材で作られた音叉を使い、ベリリウムは剛性が高いことや、音叉を鳴らした時にも、倍音が少なく、響きも収まりやすいことなどを実現した。
このベリリウムを使ったツイーターは1.5型で、横から見た時に「M字型」になっている。エッジ部分に、Tuned Mass Damper(TMD)と呼ばれるサスペンションを装備。振動板が綺麗に振幅するようにサポートする工夫であり、歪を抑え、コイル径を大きくすることができるようになった。トランジェントを高めるInfinite Acoustic Loading(IAL)技術も使われている。
ミッドレンジドライバーは、新しいM字型かつ、W膜を採用したもの。剛性の高い素材を使いつつ、剛性をさらに高める形状にしているほか、強力な磁石により、共振のない正確な中音域と低歪みを実現するという。
ウーファーは33cm径のWコーンメンブレンを採用。
ユニット構成としては、Utopia Main 212がウーファーとミッドレンジを各2基、ツイーターは1基搭載。Utopia Main 112は各ユニットを1基搭載する縦型モデルとなる。
筐体は、鳴きを抑えるために30mm厚のMDFパネルを採用。強固な補強も内部に施して剛性を高めている。バスレフ型で、フレア型のポートを採用。ポートノイズが出ないよう工夫している。
Sylvain氏は、プロ向けモニタースピーカー事業について、「SM7などの大ヒットモデルもリリースし、多くのスタジオでエンジニアの皆さんに活用していただいている。そして我々は継続的に進化をしており、その集大成としてUtopia Mainにたどり着いた」と説明した。
体験会にはゲストとして、 Mrs.GREEN APPLEやTWICEなどの作品でレコーディング、ミックスも手掛けるエンジニアのグレゴリ・ジェルメン氏が登壇。実際にモニタースピーカーとして体験した感想を語った。
グレゴリ氏は、「Utopia Mainで凄く感動したのは、ローエンドがハイスピードであり、難しい楽曲を再生した時に、他のスピーカーでは見えてこなかった音が見えること。212では特にそれがわかりやすかった」と説明。
さらに、長時間使った際の感触として「1時間くらい、いろいろな曲を聴き続けても、ハイが痛くないので疲れないという特徴もある。オーケストラからダンスミュージック、R&Bなど、どんなジャンルでもキチンと聴けるモニター」と評価した。
筆者もそのサウンドを現場で体験したが、グレゴリ氏の感想と同様に「モニターとして、解像度の高さを備えながら、ナチュラルで聴きやすいサウンド」という印象を受けた。プロ用のスピーカーではあるが、このサウンドであれば、リスニングスピーカーとしても音楽が楽しめるサウンドだ。
会場にはほかにも、手が届きやすい価格帯の「SHAPE」シリーズや「ALPHA EVO」シリーズ、モニターヘッドフォンなども用意されていたが、この「高解像度でありつつナチュラルで聴きやすいサウンド」という特徴は一貫しており、例えばSHAPEやALPHA EVOシリーズなどはサイズも小さいものがラインナップされているので、コンシューマーのデスクトップオーディオ用スピーカーとしても注目すべきシリーズと言えそうだ。