【Inter BEE】25万円のマイクロフォーサーズシネマカメラ

P2カムのiPad編集や、NHKの高画質3D放送など


会場の幕張メッセ

 映像と音響、通信に関する国内最大の放送機器展「Inter BEE 2012」が14日~16日まで、幕張メッセで開催されている。

 今回の出展社数は過去最多となる871社/団体(うち海外は35カ国/地域から491社)、出展小間数は1,423小間。幕張メッセ4ホールから8ホールまでの33,936平方メートルを使用。開催3日間で、3万人を超える来場者を見込んでいる。

 このレポートでは、各社の放送/配信関連の新製品や、新サービスを中心に紹介する。なお、Inter BEE 2012については小寺信良氏の「Electric Zooma!」でもレポートしているほか、4K対応の新製品については、別記事で掲載している。



■ Blackmagicのマイクロフォーサーズ対応シネマカメラ

Blackmagic Cinema Camera MFTモデル

 ブラックマジックデザインは、小型のシネマカメラ「Blackmagic Cinema Camera」を展示。欧州のIBC 2012で発表されたマイクロフォーサーズ対応「MFTモデル」は12月発売。発売中のEFマウント対応「EFモデル」も展示しており、ブース内に撮影コーナーも設けている。価格はいずれも253,800円。

 いずれも、15.81×8.88mm/2.5K解像度(2,432×1,366ドット)のイメージセンサーを搭載し、12bit RAW記録が可能なシネマカメラ。フレームレートは24/25/30p対応。13ストップのダイナミックレンジで記録できる。2.5型のリムーバブルSSDを内蔵し、記録形式はRAW 2.5K非圧縮またはフルHDのApple ProRes、Avid DNxHD。ビデオ出力は10bit HD-SDI 4:2:2が1系統。

 マウント以外の基本機能はほぼ共通だが、EFモデルにのみアイリスの自動調節機能を備え、MFTモデルはマニュアルのみとなる点が異なる。

 背面の液晶モニタは5型/800×480ドットでタッチ対応。バッテリを内蔵し、持続時間は約90分。外形寸法は166.2×113.51×126.49mm(幅×奥行き×高さ)、重量はEFモデルが1.7kg、MFTモデルが1.5kg。


EFモデル液晶モニタ(MFTモデル)撮影コーナーで両モデルを使用できる


■ ソニーの7.4型有機ELモニタなど

7.4型有機ELモニタ「PVM-741」

 有機ELモニタ「TRIMASTER EL」シリーズの新機種として、7.4型「PVM-741」を展示。解像度は960×540ドットで、入力はHDMIやSDI×2(BNC)などを装備する。価格は299,250円。

 高開口率の「スーパートップエミッション」構造を採用し、屋外撮影時でも高いコントラスト性能を実現。10bitパネルドライバを搭載し、階調表現を向上させている。外形寸法は約222.4×161.8×183.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約2kg(ACアダプタ装着時は約2.6kg)。

 ストレージ関連では、12枚の光ディスクを内蔵したアーカイブカートリッジ「ODC1500R」や、3層リライタブルのプロフェッショナルディスク「PFD100TLA」などの新製品を展示。

 カートリッジの「ODC1500R」は、1つのカートリッジの12枚のディスクを内蔵。容量は300GB~1.5TBを用意。対応ドライブ「ODS-D55U」を使って、1つの大容量ストレージとして、ファイルベースでデータを扱える。保存時の湿度や温度の変化の影響を受けにくく、防塵性や耐水性に優れたメディアを採用しているため、コンテンツの長期保存性に優れているという。想定価格は2,800円~24,800円。

 プロフェッショナルディスク「PFD100TLA」は、MPEG HD422(50M)コーデックで約190分の記録が可能な3層リライタブルディスク。容量は100GBで、長時間のスタジオ収録や、頻繁な書換えが必要な一時保存の用途を想定している。

アーカイブカートリッジの「ODC1500R」対応ドライブ「ODS-D55U」一番右が、3層100GBのプロフェッショナルディスク「PFD100TLA」
そのほか、IPを活用したライブ伝送システム「NXL-IP55」も紹介。1対で3台のHDカメラ映像とリターン信号を伝送でき、放送グレードの高画質と低遅延を実現したという


■ パナソニックのP2カムワイヤレス編集や、SDカード型miroP2カードなど

パナソニックブースにはP2HDカムやAVCCAMを展示されている

 パナソニックは、P2HDカメラ向けに、PC/MacやiPadをコントローラとしてワイヤレス編集できるシステムを参考展示。USB接続型の無線LANモジュールをカメラに接続することで、プロキシファイルを使ったフレーム単位のトリミングとプレイリスト編集が行なえるというもの。

 カメラ本体からのHD-SDI出力による再生で、編集した内容をチェックすることも可能。また、iPadなどを使って取材先でプレイリスト編集した内容をP2カード側に保存し、会社などのPCにあるEDIUSへインポートして本格的な編集に利用できる。そのほか、ワイヤレス編集時にファイルを切り出して1つクリップとしてP2カード内に保存することも可能。

 iPadなどWebアプリとしてブラウザ上で動作。プレビューにはプロキシファイルを使うため、iPadでもスムーズに再生できる。対応カメラ「AG-HPX600」に対し、'13年春に、有償でソフトウェアアップデートによりこの機能を提供予定としている。


P2カムのワイヤレス編集の説明コーナーiPadでプレビューしながらイン/アウト点を指定してプレイリスト編集などができるワイヤレス編集の概要

 P2カードの新提案としては、SDカード型の「microP2カード」を来春に発売予定。「SDメモリーカード UHS-II」規格に準拠し、小型化とコストダウンを実現。汎用性も高めた。

 別売の「microP2カードアダプター」を介してP2対応カメラなどに装着して記録可能。AVC Intra 200までの書き込みに対応する。また、緊急時は同アダプタに一般のSDカードを使って代用することも可能となっている。パソコンとの接続用にUSBアダプタを別売で用意。USB 3.0接続したパソコンで2Gbpsの読込み速度を実現している。

microP2カードの説明コーナーアダプタにカードを挿入して、対応カメラで利用できるUSB 3.0接続対応のPCアダプタ


■ NHKが高画質3D放送の規格化へ

左が「Advanced Stereo 3D」、右がサイドバイサイド3D

 NHKメディアテクノロジーが出展する「4K3Dシアター」ブースでは、新たな3D放送方式「Advanced Stereo 3D」を紹介している。今後、画質評価や、3D多重化方法の決定などを経て、'13年春の規格化を目指している。

 これは、現在のサイドバイサイド方式の放送とは異なり、左目用の映像にMPEG-2のフルHD、右目用にMPEG-4 AVC/H.264のフルHDを利用し、多重化して放送。大幅な画質向上が見込めるというもの。非対応テレビではMPEG-2のみ表示されるため、互換性も確保するという。また、テレビが新しい3D放送に対応していなくても、HDMI入力がフレームパッキングの3Dに対応していれば、新しいレコーダなどから入力して表示できるようとのこと。ブースでは、偏光3D対応のテレビを用いてデモしていた。

 左目用の映像は、従来のMPEG-2との互換性を維持しながら高圧縮できる「MPEG-2 AD」(仮称)方式を採用。これは、「フィールドピクチャーストラクチャーモード」という技術を利用したもので、左目用を約13Mbps、右目用をAVC高圧縮で約7Mbpsとすることで、最終的な画質としては左右が同等程度に感じられるとしている。技術としては以前から存在していたものだが、これから放送への採用へ向けた働きかけを進めていくという。

Advanced Stereo 3Dの概要MPEG-2 ADエンコーダとMPEG-4 AVC/H.264エンコーダの2台を利用ブース内で、4K3D映像のデモも行なっている


■ Android搭載スティック型STBを使った映像配信

「Broadcast on IP」の展示コーナー。STBの映像をテレビにHDMI出力している

 映像制作やIP配信などを手掛けるフェアーウェイは、有料の放送チャンネルをスマートフォン/タブレットアプリとして提供し、Android搭載のスティック型STB「toto」でテレビに表示できるという新しい配信プラットフォーム「Broadcast on IP」を紹介。

 「toto」はグルーバが開発したスティック型のAndroid STB。単体発売はせず、映像配信事業者などが配信サービスと組み合わせてユーザーに提供することを想定している。無線LANを搭載し、映像/音楽/写真などをスマートフォンやタブレット、テレビなどのマルチスクリーンで再生可能。DLNAにも対応し、NAS(LAN HDD)にある動画などをスマートフォンで操作して、テレビで再生するといったこともできる。

 現在、’13年春のサービス開始を目指し、コンテンツホルダらと交渉中。コンテンツホルダは、映像配信サービスを1つのアプリとして提供可能。この配信プラットフォームは、動画サービス以外にも、電子書籍やサイネージといった利用も想定している。


STBの「toto」スマートフォンで視聴することも可能アプリの形で配信サービスを提供できる


■ フォステクスのiPhone用外部マイク試作機など

AR101の試作機。製品版はデザインなどが変わる予定

 フォステクスのブースでは、iPhoneに装着してライブ配信などに利用できる、ハンドルグリップ付きの外部ステレオマイク「AR101」の試作機を参考展示。発売時期や価格は決まっていない。

 接続を現行モデル「AR-4i」のDockコネクタ(30pin)直挿しから、ケーブル接続に変更したことで、iPhone 5などのLightningコネクタにも対応可能。画面を縦/横に回転させてライブ配信などの音声収録用に利用できる。ハンドルを外して三脚に設置することもできる。

 本体にロータリーエンコーダを備え、左右の音量レベルやパン調整を独立して設定できることが特徴。iOSアプリを使って、リミッタやローカットなども設定できる。モニタリング用のヘッドフォン出力(ステレオミニ)も備える。また、ステレオミニ入力も備え、iOS以外の機器とも接続可能。電源はiPhoneなどから給電できるほか、背面に給電用のmicroUSBを備えており、iPhoneのバッテリ充電も行なえる。


ロータリーエンコーダを中央に備える背面1chマイクプリアンプや、4chラインミキサーも展示
エーディテクノは、デジタル一眼カメラやビデオカメラに装着するIPSパネル採用の7型フィールドモニタ「CL76SDI」などを展示同社ブースには、年内をメドに発売予定の9.7型/IPS液晶モニタ「VZ-097FM-3G」も展示。HDMI-SDI、SDI-HDMIコンバータを内蔵したマルチフォーマットモニタで、2K映像までの入力に対応。価格は30万円以内営電のブースには、V-Lowマルチメディア放送対応の「デジタルラジオステーション」や「防災ラジオ」が展示されている

(2012年 11月 15日)

[AV Watch編集部 中林暁]