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【CEATEC 2013】SeeQVaultで動画視聴の自由度拡大へ

テレビ買い替え後も録画用USB HDDを継続使用可能

SeeQVaultのブース。今回がCEATEC初出展

 10月1日~5日まで行なわれている「CEATEC JAPAN 2013」から、録画コンテンツのフルHD持ち出しなどをデモしていた著作権保護技術「SeeQVault」ブースの展示内容をレポートする。

 SeeQVault(SQV)は、東芝とパナソニック、サムスン電子、ソニーが共同開発した次世代著作権保護技術。SDメモリーカードなど、フラッシュメモリを利用した様々なストレージデバイスで利用でき、デジタル放送の番組をHDのままメモリーカードに保存して持ち出せることなどが特徴。

 2月よりライセンス提供が開始されており、8月にはDTCP-IPをライセンスするDTLAとDpa(デジタル放送推進協会)から記録メディアとして認定された。SQV対応製品として、東芝やソニーがmicroSDHCカードを発表。また、ソニーはポータブルワイヤレスサーバー「WG-C20」(10月25日発売/実売1万円前後)でもサポート。利用できる機器が登場したことで「普及に向け本格始動する」とアピールしている。

東芝のSQV対応microSDHCカード
ソニーのWG-C20内に収めたSQV microSDHCカードのコンテンツを、スマホでワイヤレス再生
nasneの録画番組を持ち出すデモ
WG-C20での持ち出しにはアプリ「おでかけ転送 for WG series」を使用

 CEATECのSeeQVaultブースでは、このWG-C20を使った録画コンテンツのフルHD転送デモを行なっているほか、同方式を用いた新たなコンテンツ管理の提案などを行なっている。

 WG-C20と対応microSDカードで録画番組を持ち出す「おでかけ転送」には、Androidスマートフォンアプリの「おでかけ転送 for WG series」を使用。WG-C20とスマホを無線LAN接続することで、外出先でもフルHD録画番組を視聴できる。視聴対応スマホはXperia Z/A/UL。

 WG-C20の製品発表時に案内された通り、番組を持ち出しできるレコーダとしてはSCEの「nasne」のみサポートしているが、これはnasneがDLNA/DTCP-IPの「ダウンロード型ムーブ」(スマホからの操作でダビング/ムーブできる)に対応しているため。ソニーが動作確認済みの機器はnasneのみだが、ダウンロードムーブ対応のレコーダは他社製のBDレコーダにも存在しているため、こうした機器であれば、同様にフルHDで持ち出しできると見られる。

 一方、市販されているDLNA/DTCP-IPダビング/ムーブ対応BDレコーダやUSB HDD録画対応テレビの多くは「アップロード型ムーブ」対応機種(レコーダの操作でダビング/ムーブする)。これらの機種でもフルHD持ち出しできる解決策として、ダビング操作をPCから行なえるソフトも開発。これをどのような形でユーザーに提供するかは決まっていないが、もしポータブルサーバーなど対応ハードウェアに同梱されれば、対応のレコーダが拡大するため、より多くの人が利用できるようになりそうだ。このソフトの開発にはデジオンが協力している。

アップロード型ムーブ機器と接続してダビング/ムーブするためのPCソフト画面
ポータブルサーバー内のコンテンツをスマホで再生するイメージ(WG-C20発売時点でiPhone再生アプリは用意されない)

 また、東芝はWindows 8タブレットとUSB接続のテレビチューナ、SQV対応カードリーダー/ライターを使って、録画番組をフルHDで持ち出すというデモも行なっている。チューナで受信した映像をSQVカードリーダーで書き込み、カードだけをタブレットに入れて外出先でも再生できるというもの。SQVメディアを利用するには、ホスト機器もSQV対応が必要となるが、東芝はSQV対応コンテンツ保護ソフトを2014年に発売予定で、これを使ってSQV対応ホスト機器の開発をOSを問わず迅速に行なえるという。

東芝が参考出展したタブレットでの録画/持ち出しソリューション
録画したmicroSDをタブレットに挿入して、専用プレーヤーで再生

専用カードで簡単に動画購入/視聴するサービスの提案も

 SQVを採用することで、現在では当たり前の著作権保護が緩和される点もある。例えばテレビからUSB HDDに録画している場合、テレビを買い替えるとUSB HDD内の録画コンテンツはもう視聴できなくなる。ネットワーク経由でUSB HDDから他のレコーダなどに書き出できる機種もあるが、大量の番組をダビングするのは手間がかかる。

 今後、SQV対応のテレビとUSB HDDが登場すれば、テレビを買い替えてもそのままUSB HDDを付け替えて視聴できる。リビングで録画したUSB HDDを寝室のテレビに接続して観ることも可能だ。東芝はSQV対応のUSB HDD向けブリッジICを開発中で、2014年に量産を開始予定としている。そのほか、スマートフォンがSQVに対応すれば、購入/録画したmicroSD内の著作権保護コンテンツを、機種変更後もそのまま使い続けられるというメリットもある。

1枚のカードにSQVとFeliCa、TransferJetの機能と動画コンテンツを収録

 ブースでは、SQVを使った新たな提案として、レンタルDVD店などのキオスク端末でコンテンツを購入/ダウンロードするというソリューションを紹介。SQVとFeliCa、TransferJet、非接触充電の技術を組み合わせたメモリーカードと、クレードルを接続したPCでデモを行なっており、利用の流れは、店頭のキオスク端末でカードに動画などをダウンロード購入し、自宅のテレビにHDMI接続したクレードルにカードを置くと、自動でテレビ画面に動画を映し出すというイメージ。カード1枚にコンテンツと著作権保護、通信機能を持たせることで、簡単に購入から再生まで行なえることを長所としてアピールしている。

家で視聴するためのクレードルにカードを置くと、自動で再生が始まる
キオスク端末を使ったコンテンツ購入の例
SQV対応製品の参考展示。スマホ/タブレットの対応製品は、最初はUSBドングルを接続する形となる見込みだが、将来的には内蔵することを検討している
SQV/USB 3.0対応のSDカードリーダーコントローラ
SQVによるAndroid機器向け著作権保護のソリューション

(中林暁)