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「10月からは新生シャープに」。シャープが社内カンパニー制導入

 シャープは、2015年10月1日付で、社内カンパニー制を導入したのにあわせて、同社社員を対象にした「2015年度下期 全社キックオフ」を同日午前9時から、大阪市阿倍野区のシャープ本社ビルで開催。シャープの髙橋興三社長は、「カンパニー制導入をはじめとする新しい組織や制度は、新生シャープを生み出すためのものだ」と宣言した。

シャープ髙橋興三社長

 全社キックオフの様子は、本社を起点に、国内および海外の各事業所へテレビで中継。時差の関係で同時刻に参加できない場合はビデオ視聴とした。

 髙橋社長は、「社長に就任してからの2年4カ月は、再成長軌道に乗せられず、3,200人を超える希望退職を募集せざるを得なかったことを改めてお詫びする。経営陣には大きな責任があり、なんとしても立ち直らせる覚悟で取り組む」と語りながら、「社長就任以来、『けったいな文化』である過去の破壊に注力していたことは私の大きな反省である。新しいシャープを創っていくことが私たちの使命。カンパニー制導入をはじめとする、10月1日からの新たな組織や制度は、新生シャープを生み出すためのものである」と位置づけた。

 シャープでは、コンシューマーエレクトロニクスカンパニー、エネルギーソリューションカンパニー、ビジネスソリューションカンパニー、電子デバイスカンパニー、ディスプレイデバイスカンパニーの5つの社内カンパニーを設置。髙橋社長は、「カンパニー制の導入で、自律と統制の最適バランスを保ちながら、経営のスピードを高め、収益基盤の強化を図る。また、組織構造のフラット化およびシンプル化を行う。経営トップから担当者までの各階層において全面的なフラット化とシンプル化を実施し、社内調整業務の削減、意思決定やコミュニケーションの迅速化を図る。市場変化に即応でき、競争力のある組織体に変革する」と述べた。

 さらに、「5月14日に発表した中期経営計画では、3つの重点戦略として、事業ポートフォリオの再構築、固定費削減の断行、組織・ガバナンスの再編・強化を掲げた。下期も引き続き、3つの重点戦略に沿った取り組みを進める。具体的には、カンパニー制導入のほか、新規事業をカンパニーへ移管して事業化を加速し、成長分野へのリソース集中や各事業領域において、新規分野への取り組みを進める。ビジネスソリューションカンパニーは、メディカル・ヘルスケアやロボティクスのバリューチェーンを整備し、本格的な事業化フェーズに入るなど、各カンパニーでの事業立ち上げを加速していく」と語った。

 また、「シャープの『ブランド』、『技術』、『人』の3つを残したい。シャープブランドは、創業以来 104年目となる歴史のなかで築き上げてきたものであり、しっかりと残していきたい。また、技術とは、エンジニアリングの技術だけではなく、営業、サービス、生産などの会社を運営する上で必要なすべての技術を磨き上げることを指す。そして、それらを実現するのは、人であり、組織。この3つにしっかり取り組んでいきたい」とした。

5つの社内カンパニー社長から発表されたコメント

コンシューマーエレクトロニクスカンパニー社長 長谷川祥典氏
コンシューマーエレクトロニクスカンパニー長谷川祥典社長

 当カンパニーの傘下には、デジタル情報家電事業本部、健康環境事業本部、通信システム事業本部の3つの事業本部がある。この3事業本部は、液晶テレビ「AQUOS」やスマートフォン、白物家電「ヘルシオ」や「プラズマクラスターイオン」など、独自の製品群を創出してきた。この3事業本部が連携して、液晶テレビの画像処理技術やスマートフォンの通信技術、白物家電のプラズマクラスターイオン技術など、長年にわたって培ってきた特長技術の融合をはかり、新たな製品と事業分野の創出に努める。

 本格的なIoT時代を迎え、コンシューマーエレクトロニクス分野でも、あらゆる家電製品がインターネットにつながろうとしており、我々はクラウドサービスを通じて家電製品の人工知能化をすすめ、お客様に新たな生活体験を提供していく。人工知能を持った家電製品はクラウドサービスの活用により、お客様の生活スタイルを学習し、より快適な生活環境をご提供することができる。

 また、これまでの家電製品は、購入後はあらかじめ備えている機能しか使うことができなかったが、クラウドサービスを利用すれば様々な機能を付加することも夢ではない。コンシューマーエレクトロニクス事業を展開する上で鍵となる、ブランドや販売基盤が強固な日本とアジアにリソースを集中して経営の安定化を図る。そして、長年にわたり培ってきた「独自特長技術」の革新と融合により、人々の生活を豊かにする製品の創出に努め、社会に貢献していく。

ディスプレイデバイスカンパニー社長 和田正一氏
ディスプレイデバイスカンパニー 和田正一社長

 企業は、社会から必要とされていることが礎となってこそ存続できる。この主旨に沿い、当社が取り組んでいる液晶をはじめとする様々なディスプレイデバイスができる社会貢献は何かを第一に考えていく。1973年に初めて電卓に液晶ディスプレイが採用されて以来、当社は液晶ディスプレイのリーディングメーカーとして、新たな技術開発を先導し続けてきた。いまやディスプレイは、スマートフォン、パソコン、タブレット端末、モニターといった様々な情報機器や、液晶テレビ、ゲーム機器、さらには自動車など、幅広い商品に搭載されている。私たちの生活に無くてはならないデバイスになっている。

 そして、「情報を表示する機能」だけでなく、タッチパネルにより「情報を入力する機能」が加わり、まさに「情報の窓口」として進化を遂げ、低消費電力、高精細表示による画面の見やすさ、入力のしやすさなど、世界の人々に認めていただける様々な価値を提供 している。

 今後も、「人への貢献」、「社会への貢献」、「産業への貢献」に視点をおいて、「真の社会貢献とは何か」を軸に、さらに必要とされるデバイスとして事業の成長を図っていきたい。例えば、「お年寄りにやさしく目が疲れないディスプレイ」や「身体が不自由な人にも簡単に入力ができるタッチパネルの開発」、「 どこでも情報を表示できるIoTに最適なディスプレイの実現」、「液晶アンテナのような液晶技術を応用した新しい機器の創出」など、独自のポテンシャルを有する技術を磨き、人々のライフスタイルを変えるような無限の可能性を追求し続ける。

 高齢化、省エネルギー、セキュリティーなど社会の変化をいち早くとらえ、変化に即した新たな「驚きと感動」の技術をもって、世の中から求められる価値を提供し続けていく。

エネルギーソリューションカンパニー社長 佐々岡浩氏
エネルギーソリューションカンパニー佐々岡浩社長

 エネルギーソリューションカンパニーの主力事業である太陽光発電は、国内においては、2014年度をピークに縮小傾向にあるが、世界的にみると、アジアなどの新興国を中心に、市場は今後も拡大基調にある。さらに、太陽光発電に蓄電池やエネルギーマネジメントシステムなどの関連部門を含めた新エネルギー産業としては、2020年には86兆円規模に拡大することが見込まれている有力産業である。 そのなかで、当カンパニーは、海外売上比率で3割、ソリューション事業の売上比率を5割に引き上げることを中期目標に掲げ、事業の拡大に取り組んでいく。

 事業の基盤となる太陽電池事業においては、高効率化を目指した技術開発の手を緩めることなく取り組んでおり、2015年6月には国内最高レベルの変換効率19.1%を達成した新製品を発売した。研究開発レベルではすでに、変換効率25.1%のセルの開発に成功しており、この技術を量産レベルへ発展させていく。また、事業拡大の柱となるエネルギーソリューション事業においては、各地域の市場ニーズに合わせたソリューション提案が重要。国内では、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指し、クラウド技術と蓄電池を活用したエネルギーマネジメントシステムを推進し、米国では蓄電池を活用したピークカットシステム、欧州ではソーラー発電と太陽熱を活用したPVサーマルシステム、アジアではディーゼル発電にソーラー発電を加えたハイブリッドシステムなど、様々なエネルギーソリューション事業を展開していく。エネルギーは水や空気と同様に、我々の暮らしになくてはならないものである。人類にとって必要なエネルギーを自然環境に優しく創出し、賢く活用することによって、より豊かな生活を創造し、地球レベルで社会に貢献していく。

ビジネスソリューションカンパニー社長 向井和司氏
ビジネスソリューションカンパニー 向井和司社長

 ビジネスソリューション事業は、非常に幅広い技術の利用により、ビジネスの環境変化に速やかに対応し、マルチファンクションプリンター(複合機)やインフォメーションディスプレイなど、様々な製品を開発し、広く世の中で利用されてきた。こうした機器の特長を活かして多様なサービスやソリューションを創出し、利便性や快適性といった付加価値を、ビジネスシーンはもとより生活シーンにおいても提供していく。そして、モノクロおよびカラー複合機によるオフィスソリューション、インフォメーションディスプレイやインタラクティブホワイトボードによるビジュアルソリューション、ECRやPOSなどによるシステムソリューションにより、快適で効率的なビジネス環境の創造に貢献する。

 2015年10月からは、生産技術開発本部、新規事業推進本部で開発してきたロボティクスやメディカル機器も、当カンパニーが新規事業として取り組んでいくことになった。極めて将来性が豊かで、中核事業になり得る可能性を秘めている。従来の複合機やインフォメーションディスプレイなどは、今後も安定的な収益をもたらす事業だが、今後さらなる成長を目指すには新たに中核となる事業への取り組みが重要。新生ビジネスソリューションカンパニーは、これまで蓄積してきた特長技術の革新で従来の事業を確固たるものにするとともに、新たな事業の育成により、安定と事業領域の拡大を実現していく。

電子デバイスカンパニー社長 森谷和弘氏
電子デバイスカンパニー 森谷和弘社長

 1978年に電子部品事業を母体として発足し、様々な電子機器に使用されるLSIや電子部品の製造、販売により事業を拡大してきた。現在は、広島県福山市を本拠地として世界トップのシェアを誇るスマートフォン用カメラモジュールをはじめ、各種センサーデバイス、オプトデバイス、LED、半導体レーザーを中心とした事業を展開しており、世界各国の取引先から、技術と信頼性に高い評価をいただき、安定した事業展開を進めている。

 事業発足時のデバイス単体の小型・薄型化の追求から、モジュール化による付加価値の提供により、搭載機器の高機能化に貢献してきたが、今後は、これまでのデバイス製品カテゴリーを軸とした事業体制から、産業別アプリケーションを軸とした事業体制に転換を図る。具体的には「車載向けソリューション」、「IoT向けソリューション」、「産業向けソリューション」、「医療向けソリューション」など、アプリケーションごとの事業形態に変革する。これにより、成長領域へのカテゴリシフトを加速していく。また、カンパニー制を活かし、より早い意思決定と経営の効率化を推し進めるとともに、シャープグループ内の各カンパニーとのシナジー効果を生み出し、オールシャープの競争力強化に貢献していきたい。

 お客様の声に耳を傾け、培ってきた技術を礎として、デバイス事業からモジュール、さらにはソリューション事業へと進化していくことにより、社会の発展に貢献していく。

(大河原 克行)