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「この世界の片隅に」新作は「大人っぽいすずさんに」

のんさんと片渕須直監督

ロングラン上映を続けているアニメ映画「この世界の片隅に」に、約30分の新規シーンを追加し、12月に公開される新作映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」。「この世界の片隅に」のテアトル新宿での“再上映”を記念したイベントが8月15日に開催され、片渕須直監督と主演声優のんにより、舞台挨拶が行なわれ、ロングラン上映や新作について2人がコメントしました。

  • 作品名:この世界の(さらにいくつもの)片隅に
  • 公開日:2018年12月
  • 配給:東京テアトル
  • 製作:2018「この世界の片隅に」製作委員会

登壇した、のんは「久しぶりにテアトルに来られて嬉しいです、今日は宜しくお願いします」と挨拶し、監督も「642日を超えて1日も欠かさず全国で上映を続けていただいて。初めて舞台挨拶をさせていただいたこの会場で、このコンビで舞台挨拶ができて嬉しいです」と、思い入れのあるテアトル新宿という劇場への思いを語りました。

いまなおロングランが続いていることに関して監督は、「映画を作っているときは、クラウドファンディングでたくさんの方々に支援をお願いして、出来上がった後も沢山の人が作品を応援してくれて今日に至っていると思っています。お客さんも、マスコミの皆さんも、劇場も、私たちのため上映の場所を与えてくださっているのです」と語り、のんも「この作品に参加して、これほどまでに長く作品と付き合うことが初めてなのでとても貴重な体験をさせてもらっています。こんなにみなさんに愛されている作品は、世界中どこを見てもこの作品だけなのではないか。と思ってしまうくらいです」語りました。

舞台挨拶が行なわれた8月15日は終戦記念日。劇中のすずさんが、終戦を知り悔し泣きをするシーンで、のんは「すずさんのリアルな気持ちを表現できるように、スタジオの照明を消して頂いて、真っ暗の中で集中してアフレコをしました」と語った。

片淵監督は、8月15日の舞台挨拶について、「この映画を作っている最中に、公開するなら8月だよね。というお話をたくさん頂きましたが、すずさんの人生は8月だけでなくその他にも長い日を生きて来ています。そのことを皆さんにも伝えたくて、11月の公開になりました。でも8月は終戦記念日や、原爆投下の日があるので、この映画を観てもらって、皆さんのおじいさんやおばあさん、親戚の方たちが、すずさんが生きて来た時代をどのように過ごしていたのかを、重ねて思い浮かべてもらえる機会になったらありがたい」とコメント。加えて、「8月15日はポツダム宣言受諾の日で、実際に戦争が終わったのは8月22日の午前0時。その間に色々なことがあって、例えばラジオは、もし玉音放送が入らなかったら「民謡の旅」という番組をやっているはずでした。戦争中だけど、そういう日常が流れていたのが終戦によって途切れて、ラジオはその後時報とニュースだけになりました。そのあと、一番最初に復活したのが天気予報で、その次がラジオ体操。このように、ラジオの放送をとっても、戦時中に“普通の暮らし”があったことがわかります」と語った。

のんは、12月に上映する本作の長尺版「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」の本編アフレコについて、「これから付け足していくすずさんのシーンは、大人っぽいすずさんなので、その部分の解釈を自分なりに掘り下げて、監督と密に相談しながら、演じていきたいです」と次回作への意欲を見せました。

この世界の(さらにいくつもの)片隅に

ここではひとりぼっち、と思ってた。

広島県呉に嫁いだすずは、夫・周作とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。昭和19(1944)年、日本が戦争のただ中にあった頃だ。戦況が悪化し、生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。ある日、迷い込んだ遊郭でリンと出会う。境遇は異なるが呉で初めて出会った同世代の女性に心通わせていくすず。しかしその中で、夫・周作とリンとのつながりを感じてしまう。昭和20(1945)年3月、軍港のあった呉は大規模な空襲に見舞われる。その日から空襲はたび重なり、すずも大切なものを失ってしまう。そして昭和20年の夏がやってくる――。