ミニレビュー

350ml缶サイズで持ち運べるAndroid搭載プロジェクタ。アプリや動画が大画面に

 Ankerが発売した「Nebula Capsule」は、“350ml缶サイズ”のモバイルプロジェクタ。Androidを搭載するためYouTubeやAmazonプライム・ビデオ、Netflixなどが単体で楽しめて、本物の350ml缶と同様、カバンの隙間にねじ込んで持ち運べるサイズ感。バッテリを内蔵し、電源のない場所でも白い壁面か天井があれば投影できる。スピーカーも内蔵していて、機動性は抜群だ。

Nebula Capsule

 発売したAnkerは、モバイルバッテリやBluetoothスピーカーなどのスマホ周辺機器で知られるメーカーであり、実績もあり品質面でも信頼できる。価格はAmazon.co.jpのAnkerDirectで39,800円(税込)。普段使っている動画サービスやアプリを大画面で楽しめるこの製品で、色々と遊んでみた。

スマホのミラーリング表示はHDMIケーブルでもスマホでも

 Nebula Capsuleを手に取ってみると、本当に350ml缶と同じ円筒形状で、重さは約470g。Nebula Capsuleで映像を投影する方法は、大まかに「(パソコンやBD/DVDプレーヤーなどと)HDMIケーブルで接続する」、「スマホ画面をワイヤレスでミラーリング表示する」、「Nebula Capsule単体でアプリを動かす」の3つがある。

背面にHDMIとmicroUSB端子がある。どうせならフルサイズのUSB端子も欲しかったかも

 Nebula Capsule側のHDMI端子は、マイクロタイプではなく通常タイプ。スマホやモバイルPCはアダプタやマイクロHDMIケーブルが必要になることが多いが、両端が特殊形状だとケーブルが面倒になりがちなので、Nebula Capsule側が通常のHDMI端子になってるのは地味にありがたい。ちなみにNebula Capsuleはスピーカーを内蔵していて、どの接続方法でも映像と同時に音声も出力可能だ。

iOSのコントロールセンターですぐにNebula Capsuleに接続できる

 スマホの画面をワイヤレスでミラーリング表示することもできる。Nebula Capsuleと同じWi-Fiに接続していれば、iOSデバイスならAirPlay、AndroidデバイスならMiracastの接続が可能だ。

 AirPlay接続はやけに簡単で、Nebula Capsuleがスリープ中でもiOSデバイス側から接続し、投影を開始できる。ちなみにmacOSからも同様にAirPlayで映像出力できる。

Miracastの接続画面。Android前提の説明が書かれているが、Windowsでも接続できた

 Miracast接続の場合は、Nebula Capsule上でミラーリングのメニューを開き、スマホからMiracast接続先にNebula Capsuleを選んで接続する。Nebula Capsule上で操作が必要なのがAirPlayと違うところだ。ちなみにMiracastを使えばAndroidデバイスだけでなく、Windowsからも画面出力できる。

 AirPlayもMiracastも画質が劣化し、遅延も生じるので、ゲームの表示には向いていない。また、いずれも権利上表示できないアプリもある。一方、HDMI接続なら遅延や劣化はないが、スマホは操作するために手に持つ必要があり、そこから太くて取り回ししにくいHDMIケーブルが伸びている状態はかなり邪魔だ。そういった意味でも、ワイヤレス接続はスマホにとって実用性が高い。

 なお、最近流行りの18:9比率ディスプレイのスマホで16:9動画を表示すると左右に黒枠が入るが、ソレをさらに16:9のNebula Capsuleに表示すると、さらに上下に黒枠が追加。つまり上下左右全部に黒枠が入ることになる。それはHDMIでもAirPlay/Miracastでも同様だ。仕方ないところかもしれないが、ちょっと残念感が強い。AirPlayだと一部アプリ(アップルのアプリやYouTubeなど)ではミラーリングではなく16:9のまま転送表示してくれたが、対応アプリはあまり多くない。

単体でAndroidアプリが動かせる、けどGoogle Playは非対応

ホーム画面。最下段で見切れているのは自前でインストールしたアプリ群だ

 Nebula CapsuleはAndroidベースのOSを搭載していて、単体でスマートデバイスとして動作する。といっても、あくまでAndroidベースのOSであり、Googleが認証するAndroidデバイスではない。つまりGoogle Playは使えないし、GmailやGoogleマップなどのGoogle純正のアプリも搭載されていない。

 この点は仕方ない。タッチディスプレイではないので、普通のAndroidスマホのように使うことはそもそも不可能だ。「プロジェクタなのにタッチディスプレイ」というソニー驚異のメカニズムによりGoogle Playにも対応している「Xperia Touch」というデバイスもあるが、そちらは実売14万円、それに対してこのNebula Capsuleは3.8万円である。Google Playが使えた方が圧倒的に便利ではあるが、10万円も圧倒的な価格差だ。

スマホの連携アプリ。ポインタ操作や文字入力などができる。2本指スワイプでスクロールなどの操作もできる

 Nebula Capsuleの操作は同梱のリモコンを使う。このリモコン、レスポンスは良好だが赤外線方式で、受光部はNebula Capsuleの後ろにあり、置き方によってはちょっと使いづらい。しかし同梱リモコン以外でも、スマホの連携アプリでもコントロールできる。標準リモコンの十字キーで操作しづらいアプリも、スマホの連携アプリならノートパソコンのトラックパッドのようにポインタで操作できるようになるので、いろいろなアプリを活用するためにはほぼ必須となる。

Aptoideの画面。いろんなアプリがある

 Nebula Capsuleには標準で「Aptoide」というアプリストアがプリセットされていて、テレビ端末にカスタマイズされた「Aptoide TV」に接続するようになっている。各アプリに「マウスが必要」などの注意書きも表示され、怪しいアプリは表示・検索されにくいようになっている。海賊版アプリを掴まされる可能性は少なそうだが、それでもアプリをダウンロードするときは、配信元や「信頼済アプリ」マークの有無を確認しよう。

 標準ではAmazonプライムビデオとNetflixのアプリアイコンがプリセットされている。これらはダウンロードリンクで、しかもAptoideで配信されている両アプリはともに「マウスが必要」とされているが、連携アプリがあればOKだ。同様にプリセットされているYouTubeはAndroid TV向けバージョンのようで、こちらは付属リモコンだけで操作できる。ただしサインインやチャンネル登録ができず、お気に入り動画を探すのはちょっと面倒だった。なお、Webブラウザは搭載していない。

プリインのYouTube。ちゃんと日本語メニュー表示にも対応しているが、チャンネル登録のやりかたがわからなかった
Aptoideのアプリ紹介画面。「信頼済アプリ」と「マウスが必要」マークの有無と配信元のチェックは重要

 このほかにも標準アプリとしてファイルマネージャーとアプリマネージャーもプリインストールされている。内蔵ストレージは8GBだけだが、付属のアダプタでUSBストレージを接続し、ファイルマネージャーで中身を表示できる。しかしmicroSDカードスロットはなく、USBストレージを使っていると給電できないので、USBストレージ内の動画再生はちょっと使いづらい。

Google Play前提のアプリだと、こんな感じに「非サポートだよ」とエラーが表示。でもそこそこ動いた

 試したところ、アプリファイル(APKファイル)をパソコンでダウンロードし、USBストレージ経由でNebula Capsuleに読み込ませ、ファイルマネージャーでインストールもできた。例えばAptoide以外のサードパーティのアプリストアなんかは、最初にこの方法でインストールすることになる。しかしAPKファイルを自分でインストールする場合、自己アップデートできないアプリはアップデートの手間が若干面倒だったりする。Google Playをどうしても使いたいなら、Nebula CapsuleではなくXperia Touchを選ぶことになるだろう。

Amazonアプリストア。ゲームもあるが、ほぼプレイできないと思った方が良さそうだ
保証外だと思うが、DAZNは動作した。ただし位置情報が必要なコンテンツ(マツダスタジアムの広島カープ戦)は再生できなかった

 筆者は個人的に、この手のデバイスではAmazonアプリストアを使うことが多い。同ストアは日本語対応していて、日本向けアプリ、日本製アプリも多く、いろいろと実用性が高い。ただしNebula Capsuleの付属リモコンだけでは操作しにくく、連携アプリがほぼ必須となる。

 試しにAmazonアプリストアからDAZNアプリをダウンロードしてみたが、dアカウントでログインして動画を視聴できた。どこでもNebula Capsule単体で野球中継を投影できるのは、便利だし面白い応用方法もありそうだ。

付属のリモコン。一応ポインタモードでも使えるけど、アプリによってはスマホ連携アプリがないとツラい

 しかしAptoideとAmazonアプリストアの両方を合わせても、配信されていない大手の動画配信サービスが多い。たとえばdアニメ、ニコニコ動画、AbemaTVは配信されていない。また、バンダイチャンネルはAmazonアプリストアからダウンロードできたものの、動画再生しようとするとアプリがシャットダウンしてしまい使い物にならなかった。アニメファンにとってはちょっと寂しいところかも知れない。

 スマホからAirPlayやMiracastでミラーリング表示する手もあるが、権利関係で使えないこともあるし、前述のとおり18:9ディスプレイのスマホだと上下左右に黒枠が入り、全画面を使い切れずにやや残念な感じになってしまう。

定番のビデオプレーヤーのひとつ「VLC」はAptoideでも配信しているので、DLNAでLAN上のビデオを見るとかはけっこうカンタン

 また、Amazonアプリストアでは本来、「DiXiM」などのDTCP-IP対応のビデオプレーヤーも配信されているのだが、なんらかの制限(リージョンかデバイスか)がかかっているようで、Nebula Capsuleではダウンロードできなかった。一方で実機を持っていないので今回は動作確認はできなかったが、ピクセラのワイヤレステレビチューナ「Xit」向けのアプリ(本来はKindle Fire向け)がダウンロードできたので、機器やアプリの組み合わせ次第では、地デジの視聴なんかも可能かも知れない。

モバイルプロジェクタとしては十分なスペック

上部には電源キー、音量キーとBluetoothスピーカーモード切替キーがあり、中央の「NEBULA」のロゴは動作状況に応じて点灯するステータスランプになっている

 プロジェクタとしてのスペックは、解像度854×480ドットとやや控えめだが、映像はフォーカスさえ合えばかなりシャープ。なお、フォーカス調整は手動で行なう。一方、明るさは100ルーメンなので、明るい昼間の室内なんかではちょっとツラいところもある。3m離れれば100インチになるが、そこまでいくと暗い屋内でも明るさ不足を感じる印象だ。

 キーストーン補正(台形補正)は自動。上下方向であれば±40度までの補正が可能で、天井に映すときも、同様に自動キーストーン補正をしてくれる。左右を反転させる背面投影モードや天地を逆転させる天井設置(天吊り)モードも用意されている。ズームやレンズシフトはない。

 プロジェクタはDLP方式で、発熱もあるため、投影中は本体内の冷却ファンがフル回転する。このファン音はそこそこ大きく、静かな映像を楽しむときは気になるかも知れない。

 カタログスペックでは、内蔵バッテリは5,200mAh(3.85V、20Wh)で、動画再生時間は最大約4時間となっている。給電端子はmicroUSBだが、QC(Quick Charge)2.0の9V-2Aとなっているので、モバイルバッテリなどでは給電できない可能性もある。

三脚に固定できる。ゴリラポッドなどの特殊なミニ三脚とも相性が良さそう

 Bluetoothを内蔵していて、Nebula CapsuleをBluetoothスピーカーとして使うこともできるが、逆にNebula Capsuleの音を別のBluetoothスピーカーに出力することもできる。なお、オーディオジャックなどはないので、アンプなどと連携したい場合は接続方法を考える必要がありそうだ。あとはBluetoothキーボードなども接続でき、カーソルキーとEnterキー、ESCキーでリモコン代わりにすることも可能だ。

 大きさは350ml缶そのもので、上部に簡易操作キー、側面には投影レンズとピント調整ダイヤル、赤外線受光部、底面近くにmicroUSBポートとHDMI端子、そして底面にカメラ三脚に固定できるネジ穴がある。重量が約470gあり、重心も高めなので、レンズ交換カメラが固定できるくらいの三脚(雲台)が必要だ。しかしそこそこの三脚であれば自由自在に配置できるのはかなり便利でもある。

様々な場所で大画面を楽しめる

 はっきり言って、Nebula Capsuleはプロジェクタそのものの性能は高いとは言えない。100インチクラスまで大きく投影すると暗さやコントラストの低さが気になった。内蔵スピーカーもスマホやタブレットよりマシだとしても、そこそこのBluetoothスピーカーには劣るという印象だ。

Nebula Capsule

 しかし、こうしたスペックが気になるのは、通常のプロジェクタやテレビと比較したときの話である。モバイルプロジェクタとしては十分すぎるスペックだ。

 そしてモバイルプロジェクタのカテゴリ内で比較すると、バッテリ内蔵やAirPlay/Miracast対応、単体でのアプリ動作は、Nebula Capsuleの大きな強みとなっている。どこでもケーブルレスで、すぐに映像投影できる機動性は、Nebula Capsuleならではのメリットだ。

 この機動性は家の中でも役に立つ。普通のプロジェクタは、大画面を高画質で楽しめる便利なものではあるが、使い始める前の設置は面倒だ。ちゃんと映すならスクリーンが必要で、投影面とプロジェクタの位置関係に制約があり、高い場所に設置しないと邪魔になりがち。その上で、太いHDMIケーブルや電源ケーブルも必要となる。

自作部品でルーフレールから吊ってみたが、思いのほか使いやすかった(サポート外の使い方なので常設はできそうにない)。右の天吊りプロジェクタはケーブル付け替えなどが面倒でここ数年使っていない

 しかしNebula Capsuleだと、まずケーブルが不要なので、部屋の中央だろうが棚の上だろうが、ただ置くだけで使える。元々、スクリーンが欲しくなるほどの画質ではないので「白い壁や天井にちょっと投影」程度の使い方が適している。三脚ネジで好きなところに設置できるので、耐荷重大きめのミニ三脚やクリップ三脚を使えば、投影面に対してベストな位置に設置しやすい。90度上に向けても安定するような三脚を使えば、天井投影も簡単だ。

 設置も持ち運びも簡単なので、どこかに固定するような使い方より、投影したい場所に毎回設置し直すような使い方にも適している。リビングのテレビが家族に使われているときに隣の壁に投影する、ベッドルームの天井に投影する、会社や学校に持ち出す、みたいな柔軟な使い方が可能だ。こうなると風呂場でも使いたくなるところだが、残念ながら防水ではないので、水気のある場所での使用は厳禁である。

 Nebula Capsuleは、液晶テレビや普通のプロジェクタの代わりに使うようなデバイスではない。しかし1台持っていると、液晶テレビとは違ったシーンで映像コンテンツを楽しめるようになる、そんなワクワクするデバイスである。自宅に白い壁や天井が多い人は、Nebula Capsuleでスマホの画面や配信動画を投影を楽しんでみてはいかがだろうか。

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白根雅彦