ミニレビュー
Clovaスピーカーが全部入りに。家電操作の「Clova Friends Dock」が結構イイ
2018年9月17日 08:15
LINEが展開するスマートスピーカー「LINE Clova」シリーズの周辺機器として、赤外線リモコン「Clova Friends Dock」が8月21日に発売された。名前の通り、新モデルの「Clova Friends mini」を含むClova Friends向けの製品で、 LINE ClovaシリーズのうちClova WAVEのみに標準搭載されていた赤外線リモコン機能を、このDockと組み合わせることでClova Friendsでも利用できるようになる。価格は3,780円。
スマートスピーカーとしてはGoogleの「Google Home」、Amazonの「Amazon Echo」などさまざまなメーカーから製品が展開されているが、テレビやエアコンを操作できる赤外線リモコン機能を自ら提供するのはLINE Clovaシリーズのみ。また、LINEによるメッセージ送受信や音声通話など、LINEならではの機能も多数備えており、他社と比べても独自性の高いスマートスピーカーだ。
今回は新たに発売されたDockを中心に、Clovaシリーズならではの特徴的な機能を紹介する。
Clova Friends/Friends miniと一体化できるドック
Dockの本体サイズは直径が75mmの円形で、直径72mmのClova Friends/Friends miniがちょうど上に納まるサイズ感。本体前面には動作確認のためのLEDと赤外線受光部、背面には電源用のUSB Type-Cコネクタとリセットボタンが配されている。給電用の電源ケーブルやアダプタは付属しておらず、Clova Friends/Friens miniに付属する電源ケーブルを利用することになる。
本体上部はClova Friends充電用ピンに加え、Clova Friends mini充電用のUSB Type-Cケーブルが内蔵されている。これはClova FriendsとClova Friends miniの充電方法が異なるためだ。
Clova Friendsは底面に充電端子を備えているため、Dockに置くだけで充電できるのに対し、底面に端子を備えないFriends miniの場合は、Dock上部のケーブルをFriends miniの充電端子に接続する必要がある。持ち運びという点では上に持ち上げるだけでいいFriendsに対し、毎回ケーブルの脱着が必要なFriends miniは若干ながら手間だ(余談ながらニュースリリースにあるClova Friends miniの充電イメージ画像は本体を置くだけで充電できているように見えるが、前述の通り実際にはケーブルで接続しなければ充電はできない)。
Clovaとはネットワーク経由で接続
初期設定はClovaのスマートフォンアプリから行なう。iOSとAndroidで多少手順は異なるが、本体背面のリセットボタンを先の細いピンなどで5秒間長押しすると、「Friends Dock_xxx」というSSIDの無線LANアクセスポイントが立ち上がり、このアクセスポイントにスマートフォンから接続した上で、Dockを接続させたい無線LANのSSIDとパスフレーズを設定するという流れだ。
ドックタイプの製品ではあるものの、Clova Friends/Friends miniとの接続は無線LANを介して行なわれており、仕様としてはClova Friends/Friends miniの充電機能を備えた専用のスマートリモコンに近い。そのため別途USB Type-Cの電源ケーブルを用意すれば、Clova Friends/Friends miniとは異なる場所に置いて利用することも可能だ。
テレビ、エアコン、照明が操作可能
初期設定が完了したら、続いて操作したい家電を登録する。Dockが対応するのはテレビ、エアコン、そして照明の3種類。初期設定と同様にIoT設定から「Clova Friends Dock」を選択し、画面に表示される「テレビ」「エアコン」「照明」から設定したい機器を選択する。なお、現時点でエアコンが操作できるのはDockのみで、Clova WAVEはまだエアコン操作に対応していない。また、テレビ、エアコン、照明以外の製品はClova Friends/Friends miniでは利用できない。
テレビと照明の場合は型番または動作テストから、エアコンは型番から機器登録が可能。どちらもまずメーカーを選択し、型番の場合は登録したい型番を検索、動作テストの場合は画面に表示されるボタンで該当の機器が正しく動作するかをチェックしながら設定を進めていく。
筆者宅では10年前に発売されたREGZA「42Z7000」を今も使っているが、残念ながらDockが対応する型番のリストには存在しなかったため、動作テストから設定を行なった。テストで試したボタンは電源やチャンネル、メニュー表示だけだったが、設定が終わると音量やHDMI入力切り替えなども問題なく利用できた。
電源オンオフのほかチャンネル変更もデフォルトで可能
操作については「Clova」などのウェイクワードに続いて操作したいフレーズを発声する。「テレビをつけて/消して」といった電源のオンオフだけでなく「テレビを8チャンネルにして」といったチャンネル指定や「テレビをBSにして」といった放送波の切り替えも可能だ。
少しおもしろいところでは「音量をちょっと上げて」「音量をもっと下げて」と変更する音量の幅を変えられたり、「テレビの入力を×回切り替えて」と外部入力をまとめて切り替える機能も用意されている。実際にテレビを音声で操作していると欲しくなる操作で、かゆいところにも手が届いていると感じた。
リモコンの精度も悪くない。筆者宅ではDockをテレビの赤外線受光部に対して真横に設置しているのだが、音声がきちんと認識されればほぼ間違いなくテレビが動作する。また、音声の認識もLINEが推奨する「ねえ Clova」に切り替えたことで精度も高まり、ミスなく操作できるようになった。
エアコンは型番のみで登録。細かな温度変更も音声で可能
エアコンについては自宅で使っている製品が残念ながら対応するリストに存在しないため、「対応率順」という項目で1位になったリモコンの設定を試したところ問題なく動作した。とはいえこの設定方法は結果オーライに近く、できればテレビのように動作テストをしながら設定したいところだ。
Dockでのエアコン操作は、冷房や暖房、自動や除湿といったモードごとにそれぞれ温度を決めておく仕組み。そのため「冷房をつけて」というと必ず同じ温度で起動することになる。電源を入れる時は「エアコンをつけて」と発声すれば前回のモードで、「エアコンを冷房/暖房にして」と発声すれば運転モードの指定が可能だ。
温度の変更も「エアコンの温度を28度にして」「エアコンの温度を2度上げて/下げて」と発声することで操作が可能。また、現状の動作モードや設定温度もLINE Clovaアプリのエアコン設定から確認できる。とはいえ確認までの階層が深く手間がかかるため、できればDock関連の機能はもう少しアクセスしやすい場所に置いて欲しい。
LINEを使ったメッセージ送受信や音声通話も対応
LINEとのメッセージ送受信や音声通話もClovaならではの機能だ。Amazon Echoもメッセージ送受信やビデオ通話機能の提供を開始したが、日本国内で幅広く使われているコミュニケーションツールであるLINEに対応しているのはClovaならではのメリットと言えるだろう。
なお、Clovaシリーズのうち、テキストメッセージの送受信はすべての機種で対応しているが、音声通話はClova Friends/Friends miniのみ。LINE ClovaのTwitterアカウントによるとハードウェアの仕様上、音声通話は今後も対応の予定がないという。
メッセージは専用アカウントでやりとり。送信先もリストに登録
Clovaシリーズ共通で利用できるメッセージ機能は、Clova専用の家族アカウントを作成し、自分やメッセージをやりとりしたい相手のアカウントを個別に登録するホワイトリスト方式になっている。
すでにLINEでつながっている相手でも、Clova用に作成した専用のLINEアカウントから招待メッセージを送り、Clovaアカウントの友だちとして追加されないとメッセージがやりとりできない。手間はかかるものの、自分がいない間に自分宛てのLINEメッセージがClovaで読み上げらてしまう、ということもない。
メッセージを送る時は「LINEを送って」と話しかけると、誰に送るのか、どんなメッセージを送るのかを質問してくれるのでそれに答えていく。最後に送る内容をClovaが読み上げるので、内容が正しければ「はい」と答えればそのメッセージを送ってくれる。
何度かやり取りが発生するため手間がかかるという場合は、「【相手の名前】に【メッセージの内容】をLINE送って」と話しかければ、メッセージ内容の確認をするだけで送信できるまた、「おはよう」などの一部のフレーズは確認不要でメッセージを送信可能だ。
受信の際は通知音がなると同時にLEDが黄緑色に点灯。受信メッセージは最大14日間保存されており、「LINEを読んで」と話しかけると受信したメッセージを古い順に読み上げてくれる。
自宅にいるけれども作業をしていてスマートフォンを常に見ている余裕がない、という時にClovaのメッセージ送受信機能はとても便利。作業に集中していても通知音で教えてくれるし、席を外していてもLEDの点灯状態でメッセージが来ているかどうかがわかる。「仕事が終わったら連絡して欲しい」というように、あらかじめメッセージを受け取る予定があるときなどは、いちいちスマートフォンを確認する必要もなく、作業しながらメッセージの内容を把握することができる。
一方で音声でメッセージを送る時には疑問形の文章でも「?」がつかずにテキストで送られるため、意図が理解されないこともある。「喫茶店にいる?」と聞きたい場合でも「喫茶店にいる」と自分が喫茶店にいるかのような文章になってしまうため、「喫茶店にいますか」などと記号がなくても成立する文章にしておく工夫が必要だ。
また、メッセージを読み上げている最中に次のメッセージが届くと、読み上げ中のメッセージがキャンセルされてしまう。履歴からメッセージの内容は読み取れるのだが、わざわざスマートフォンを取り出して内容を確認しなければいけないのが手間だ。メッセージを読み上げている時は次のメッセージを受け取っても通知のみにして、内容はキャンセルせずそのまま読み上げてもらえると嬉しい。
ビデオ通話は自分のアカウントを利用。プライバシーには課題も
専用アカウントでやりとりするメッセージ送受信機能と異なり、ビデオ通話は自分のLINEアカウントを利用する。また、前述の通り本機能はClova Friends/Friends miniのみで、Clova WAVEでは利用できない。
通話を発信する場合は、メッセージ送受信と同様に相手の呼び方を登録しておき、「【相手の名前】に電話して」と話しかけるとClovaが自動的に発信する。また、通話を受けるときはリストに登録していない相手でも、スマートフォンとClovaが同時に着信する。自分が外出している時にLINEの着信があると自宅のClovaも同様に着信するため、自分にかけたはずの通話を自分以外の家族が受け取る、という可能性があるところも注意が必要だ。
文章を工夫する必要のあるメッセージ送受信と異なり、音声通話はそのまま話ができるので当然ながら内容は伝えやすい。一方でClovaの音量設定はすべて共通となっているため、音声通話の音量を大きくするとシステム音も非常に大きくなってしまう。音量は使う人にもよるが、筆者としてはシステム音でちょうどいい設定にしていると音声通話では物足りず、音声通話に最適化するとシステム音が大きすぎるので、ここは別に設定できると嬉しい。
非常に便利な機能だが、前述の通り音声通話は自分のアカウントにかかってくるため、プライバシーという点では少々使いにくい。家族向けの機能としてメッセージ送受信のように専用アカウントでやりとりするか、もしくは応答時の声で誰宛ての音声通話かを認識する話者識別機能なども欲しいところだ。
子供がいる家庭向けに童話を朗読する機能も
対象が限られるものの、LINEならではの機能が童話の朗読機能だ。「童話を読んで」と話しかけると、国内外50種類の童話をランダムで読み上げてくれる。「【作品名】を読んで」と作品を指定したり、「日本/世界の昔話を読んで」とエリアを指定することも可能だ。
読み上げは合成音声ではなく朗読された音声のためとても聞きやすい。BGMもついているので童話の臨場感も高まる。万人向けの機能ではないものの、子供のいる家庭には喜ばれるだろう。
また、ClovaというよりLINE Musicの機能ではあるものの、「落語を読んで」と話しかけると、LINE Musicの落語カテゴリから落語を再生してくれる。これも落語好きには便利な機能だろう。なお、これはLINE Musicの落語を再生しているだけなので、終了時は「落語を終了」ではなく「音楽を終了」と話しかける必要がある。
Dock装着で「全部入り」になったClova Friends
Clova Friends Dockの登場により、これまでLINE WAVEのみだった家電操作機能がClova Friends/Friends miniでも可能になった。前述の通り、Clova WAVEは音声通話に非対応なことを考えると、Clova Friends/Friends miniとClova Friends Dockの組み合わせが、Clovaを最大限に活用できる「全部入り」のスマートスピーカーになったと言えるだろう。
家電操作は他のスマートスピーカーでも別途スマートリモコンを組み合わせれば実現はできるが、端末のセットアップやアカウントの取得といった準備が別途必要。Clova Friends Dockは無線LANの設定こそ必要だが、Clovaのアカウント1つで管理できる手軽さは魅力だ。
LINEのメッセージ送受信や音声通話も使ってみると便利。スマートスピーカーの魅力はながら作業ができる点にあると筆者は感じているが、その点では家で作業をしながら家族や知人とメッセージがやりとりできることが地味にありがたい。とはいえプライバシー面の課題などもあるため、指定した相手のみ着信する機能などの実装も望みたいところだ。