レビュー

Anker、“カップ焼きそば大”のフルHDプロジェクタを試す

カップ焼きそばサイズのプロジェクター「Nebula Vega Portable」(左)と「Nebula Solar」(右)

“新しい生活様式”が求められるようになって1年近くが経過し、自宅でドラマや映画、アニメを視聴する機会が増えたという方も多いのではないだろうか。普段はスマートフォンやタブレット、テレビなどで楽しんでいるという方のなかには、より大画面で楽しみたいと考えている人も多いはず。そんなときに検討候補に入ってくるのがプロジェクターだろう。

だが、本格的なプロジェクターは高価だしサイズも大きい。そこで注目を集めているのが、Ankerが展開しているプロジェクターブランド「Nebula」。一番安いモデルは29,980円からと、リーズナブルで小型な製品が多く、ラインナップも豊富だ。

御存知の通り、小型のプロジェクターは輝度の低さが弱点となる。しかし、高輝度とコンパクトさの両立を図った注目モデルがNebulaから2月17日に発売された。それぞれ重さが約1.5kg、約1kgと軽量ながらフルHD&HDR10に対応した「Nebula Vega Portable」と「Nebula Solar」という2モデル。価格はVega Portableが79,990円、Solarが69,990円。

フルHDプロジェクターが自宅にあると、“おうち時間”はどれだけ充実するのか。この2機種を使って体感してみた。

「日清焼そばU.F.O.」大のコンパクトサイズ

今回試用した2モデルは、どちらも最大120型までの投写ができるDLPプロジェクター。フルHD/1,920×1,080ドットの投写画面解像度で、HDR10にも対応するほか、本体にスピーカーも内蔵しており、Dolby Digital Plusに対応。従来モデルからサウンド面も強化されている。

「Nebula Vega Portable」はバッテリーを内蔵

2モデルのもっとも大きな違いはバッテリー搭載の有無。上位機種にあたるVega Portableは約3時間の連続再生が可能なバッテリーを内蔵しており、屋外でも利用できる。

「Nebula Solar」はバッテリー非搭載。電源も専用のACアダプターを使う

もう一方のSolarはバッテリー非搭載で、屋内での利用が想定されている。輝度とスピーカー出力にも違いがあり、輝度はVega Portableが500 ANSIルーメン、Solarが400 ANSIルーメン。スピーカー出力はVega Portableが4W×2、Solarが3W×2。

またVega Portableの給電には専用のACアダプターではなく、USB Type-Cケーブルを使用する。本体にはAnkerブランドで発売されている出力65Wの「Power Port III」が付属していた。

本体の大きさはカップ焼きそばとほぼ変わらない

筐体デザインは、GOOD DESIGN AWARDを受賞したミニマルデザインで、どちらも丸みを帯びたスクエア型。形状やサイズ感に既視感を感じたので比べてみると、日清食品の「日清焼そばU.F.O.」大盛りとほぼ変わらないサイズ感だった。

本体底部にフラップを内蔵。三脚なしでも角度が付けられる

両モデルとも底面に最大13度まで角度調整可能なフラップを備えるほか、三脚用ネジも用意されているので、幅広い設置方法に対応している。

筆者が使っている「Nebula Apollo」

筆者は2020年12月ごろに、各種動画配信サービスやコロナ禍で増えている配信ライブを堪能するべく、同じNebulaブランドのプロジェクター「Nebula Apollo」を入手してプロジェクター生活を楽しんできた。このモデルは350ml缶サイズながら、最大100型の投写ができるDLPプロジェクターで、投写画面解像度は854×480ドット、輝度は200 ANSIルーメン、出力6Wのスピーカーを備えている。

Amazonで購入した布スクリーン。カーテンレールに引っ掛ける形で設置している

当初は壁面投写を想定していたのだが、設置位置の関係から壁に大画面での投写ができなかったため、Amazonで72インチの壁掛け型布スクリーンを2,089円で購入。近所の雑貨屋で購入した園芸用ポールとS字フック、結束バンドを組み合わせて、カーテンレールに引っ掛ける形で設置している。

最初はApolloで大画面を楽しんでいたのだが、もう少し輝度が高いとどんな映像なのだろう? とか、サウンドもさらに迫力が欲しいと感じていた。そこで、新たな2機種を試そうと考えたわけだ。試用した2モデルは、そのApolloと入れ替える形で設置した。部屋の隅にある本棚上から見下ろすような形でスクリーンに投写するので、自宅にあったManfrottoのミニ三脚「PIXI」を使って角度を調整している。ちなみに本体からスクリーンまでの距離は約2.2m。

セットアップはスマホ経由で。オートフォーカス/台形補正で簡単設置

両モデルともOSにはAndroid TV 9.0を採用しており、セットアップは簡単。初回起動後、無線LANへのアクセス設定を行なったあとは手持ちのスマートフォンを使ってGoogleアカウントとの紐付けができる。リモコンを使ってスクリーンキーボードで入力するといった煩わしい操作はほとんど必要なかった。

またセットアップを進めていくとHuluやAmazon Prime Videoのような動画配信サービス用アプリをインストールするか選択できるので、いちいちGoogle Playで検索することなく、好みのサービスの利用準備を整えられる。

NetflixアプリはGoogle Playではなく「Nebula Manager」経由でインストールする必要がある

ただし、NetflixについてはGoogle Play経由ではなく、「Nebula Manager」というアプリからインストールする必要がある。このアプリではDiesney+視聴用アプリもダウンロードできるが、「お客様のお住まいの地域ではご利用いただけません」と表示されて利用できなかった。

オートフォーカスしている様子

Vega Portable/Solarともにオートフォーカス機能が搭載されているので、手動でのピント調整は不要。起動時に自動でフォーカス合わせが行なわれるほか、付属リモコンで操作すれば任意のタイミングでフォーカスを合わせられる。

台形補正機能も搭載されているので、細かな調整をしなくても、スクリーンに合わせて最適な投写をしてくれる。設定画面からズームを調整すれば投写する画面サイズも微調整できる。

ただ、今回は設置位置の関係からプロジェクター本体とスクリーンを正対させることができないため、スクリーンに向かって左斜め後方から投写する形になっている。その影響か、台形補正機能を使っていると画面が小刻みに揺れる現象が何度か起きてしまった。

台形補正機能はオフにでき、オフにした場合でも自動補正時の設定が維持されるので、一度自動補正して画角を調整したあとは、機能をオフにして運用することで症状を回避できた。

ホーム画面の時点で映像の鮮明さに驚いた

先にSolarを使ってみたところ、ホーム画面の時点で投写される映像の明るさと、色の鮮明さに驚かされる。それまで使っていたApolloが自宅プロジェクター初体験だったこともあり、画質にそこまで大きな不満は感じていなかったのだが、SolarはフルHD&HDR10で輝度も倍なので、格段にクリアな映像体験ができる。

上位機種のVega Portableに変えてみても、投写される映像は鮮明だ。ただ、輝度はSolarより100 ANSIルーメンアップするのだが、その点について大きな差は感じられなかった。

それでも今まで使ってきたApolloより輝度が上がったことの恩恵は大きかった。上述したようにスクリーンをカーテン越しに設置している関係上、日中はどうしても外光がスクリーンに透けてきてしまうので、輝度が高くないApolloの利用は厳しかった。以前、夕方ごろに開演した配信ライブをスクリーンで観ようとしたものの、あまりの視認性の悪さに断念したこともある。

しかし、Vega PortableやSolarの場合、多少カーテン越しに外光が差していても、カーテンを閉め切って部屋を暗くすれば、映像を確認できるようになった。PCディスプレイなどが点いていても影響はほとんどない。

本体の操作にはリモコンのほか、専用アプリ「Nebula Connect」も使用できる。アプリを使えばタッチスクリーンを使って、より直感的に操作ができる。アプリ内で表示できるスクリーンキーボードを使えば、文字入力もできる。

付属リモコンを使えば音声入力もできる

ただ、YouTubeを視聴する際、アプリ内の検索ボックスでスクリーンキーボード入力を試したところ、うまく文字が入力できなかった。アプリを立ち上げずに、ホーム画面上部にある検索を使った場合は正しく文字入力できた。またYouTubeアプリ内の検索では付属リモコンを使った音声入力を利用できる。

まずはHuluで映画「アイアンマン」を視聴してみた。マーベル・シネマティック・ユニバース1作目で戦闘シーンなど激しいアクションが多い作品だが、映像がブレてしまったり、白飛び、黒つぶれするようなことはなく、内蔵スピーカーも激しい爆発が続くシーンでも音が割れるようなことはなかった。

続いて、先日Netflixで配信がスタートしたジェームズ・スペイダー主演のアクションサスペンスドラマ「ブラックリスト」を視聴。シリアスなシーンと銃撃戦などアクションシーンが入り乱れる内容で、こちらも映像・音声ともに不満はなし。

普段、HuluやNetflixは、12.9インチのiPad Proで視聴することも多いのだが、それとは比較できないほどの大画面で繰り広げられるアクションシーンや、予想もつかない展開に、あっという間に引き込まれてしまった。

YouTubeも視聴してみた。普段使っているGoogleアカウントでログインすれば、登録チャンネルや履歴などの情報も同期される。上述したようにリモコンにはマイクが装備されているので音声検索も利用できる。

YouTube動画では4Kも選択可能だった

動画の画質を設定する項目に表示はないものの、本体の設定でHDRをオンにしておけば、HDR動画も発色豊かに視聴できた。またSolarとVega Portableはどちらも投写できるのはフルHDまでだが、4Kも選択可能だった。

バッテリー内蔵なら自宅内でも気軽に持ち運び。Netflixアプリには難点も

Vega Portableはバッテリーを内蔵し、電源不要で運用できるので、自室から持ち出してリビングでも使ってみた。ここにはスクリーンなどは設置していないため、壁面に投写している。

リビングで壁面投写にも挑戦

リビングの壁紙は桜色なのだが、映像に違和感を感じることはなく、床に設置して内蔵のフラップを使って角度調整して、ちょうど目線の高さに映像を投写できた。キャンプなどアウトドアだけでなく、屋内でも例えばじっくり観たい作品は自室で、家族や友人と盛り上がりながら観たい作品はリビングでといったように、作品にあわせて気軽に設置場所を変えられるのは、Vega Portableのようなバッテリーを内蔵モデルの強みだろう。

2週間ほど、楽しく使っていたが、気になる部分もある。内蔵ファンの騒音とNetflixアプリの使いにくさだ。ファンの駆動音は仕様では30dB以下とされているものの、自分の近くに置きがちな小型プロジェクターなので、実際に使ってみると意外と気になってしまう。

Netflixアプリについては、上述したようにGoogle Play経由ではなくNebula Managerという専用アプリを経由してインストールする必要があるのだが、実はアプリインストール後も、Netflixを視聴するには一度Nebula Managerを立ち上げ、そのあとにNetflxアプリを起動するという形で、手順が1ステップ増えてしまう。

さらにNetflixアプリ自体もプロジェクターに付属するリモコンでの操作に最適化されていないため、使用時にはアプリのNebula Connectを使った操作が強く推奨されるなど、コンテンツを視聴するまでの手間が多くかかってしまうのが難点だった。

Google Play経由で直接Netflixアプリをインストールできないのは今回レビューしている2機種に限らず、Nebula ApolloやNebula Capsule IIなど、ほかのNebulaプロジェクターでも同じ仕様なのだが、ここはアップデートなどでの改善を願うばかりだ。

カップ焼きそばサイズの筐体を置くだけで、気軽に大画面で映画やドラマ、アニメ、YouTubeなどを楽しめる環境があるのは、やはり格別。週末はもちろん、平日の夜でもお風呂に入りながら「寝る前に何を観よう」と考える日々が続いている。

映像面ではSolarとVega Portableに大きな違いは感じられなかったので、バッテリー搭載の有無、将来的に持ち運んで運用する可能性があるかどうか、そして1万円の価格差をどう考えるかが、判断基準になるだろう。

スクリーンについては、壁投写でも大丈夫だが、映像のクオリティが格段にアップするので設置できる環境があるのであれば用意することをおすすめしたい。筆者のように「多少スクリーンにシワがあっても、それなりに映像が映し出せればいい」のであれば、設置方法も創意工夫でなんとかなる。Amazonなど通販サイトでは据え置き型だけでなく筆者が購入したような布タイプも販売されており、価格もリーズナブル。小型プロジェクター導入とあわせて、検討してほしい。

酒井隆文