小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第912回
明るいは正義! 大容量バッテリも搭載で“使い出”があるプロジェクタAnker「Nebula Mars II」
2019年9月20日 07:30
思い切った大型化
そもそもプロジェクタというのは、“平たい箱型”というのが一般的なスタイルだ。だが学校や職場ではそれでアリだとしても、家庭内においては無骨な感じがする。天井に吊って常設してあるならともかく、仮設の場合はわざわざプロジェクタを持って来ました、設置しました感が、どうにも大げさだ。さりげなく置いて、「え、なにそれプロジェクタなの?」というライト感覚が欲しいところである。
そんなニーズに応えてくれるのが、Ankerから発売されているNebulaシリーズだ。過去2回、⽸ジュース型の⼩型プロジェクタをご紹介してきたところだが、特に今年6⽉から発売が開始された「Nebula Capsule II」は、OSにAndroid TV 9.0を搭載し、使い勝⼿を⼤きく前進させたモデルとして注⽬を集めた。
そこから約1カ月後に発売が開始されたのが「Nebula Mars II」である。7月19日よりAmazon他ECサイトで販売が開始、価格は69,800円(税込)。ボディが大型化し、輝度やバッテリー容量を増やした、いわゆる大容量モデルである。だが実際には機能的にかなり違う、別物としての魅力がある。
今回はこのNebula Mars IIをじっくりテストしてみよう。
ランチボックス型!?
そう言えば一般的なプロジェクタも平たいお弁当箱みたいな形をしているが、本物のお弁当にしてはちょっと大きい。一方でNebula Mars IIは、いわゆる縦積み型ランチボックスのような形である。上部に合皮と布製のハンドルも付いており、まさに常設ではなく持ち出すことを前提とした作りだ。アクティブに使えるような作りだが、本体は防水・防滴仕様ではないので、ご注意願いたい。
まずプロジェクタ部からチェックしていこう。0.3型 DLPを採用し、解像度は1,280×720画素。明るさは300ルーメンで、コントラスト比は1,000:1。Nebula Capsule IIの200ルーメンよりもさらに明るい。近くはもちろん、離れて大スクリーンに投影しても見応えのある明るさだ。
今年のNebulaシリーズのポイントは、オートフォーカスの搭載である。Nebula Capsule IIでも搭載されていたが、本機にももちろん搭載されている。なお自動で台形歪みを補正してくれるオートキーストーン補正は上下のみなのは共通。ただマニュアルモードにすれば、左右方向の台形歪み補正も可能だ。
外部入力インターフェースとしては、HDMI 1.4(最大1080p入力)とUSB2.0端子がある。HDMIはカメラなどの出力信号がそのまま出るだけだが、USBのほうはUSBメモリーなどに収録された映像を再生できる。さらにスマートフォンなどを繋げば、充電もできる。
左側にあるのはDC入力で、専用の充電器が付属する。バッテリーはフル充電で4時間保つので、基本は充電したのちバッテリー駆動で使うという想定だろう。バッテリー容量は12,500mAhだ。一番右にあるのはヘッドフォンとスピーカー出力だ。
背面の大半を占めるスリットは排気口で、手を近づけるとかなりの風量の風が出ている。ファンノイズは近くにいればわかるが、1mぐらい離れてしまうと他のノイズに混じって気にならない。
本体上部には操作ボタンがある。基本的にはメニューを出して十字ボタンで選択していくスタイルである。背面側にLEDインジケーターがあり、本体のバッテリー残量を示す。本機には電源ボタンがないが、正面のレンズカバーを開ければ電源ONとなる。
スピーカーは左右にステレオ仕様で内蔵されており、各10Wとなっている。
マルチな使い方が生きる設計
ではさっそく使ってみよう。Nebula Capsule IIはOSにAndroid TV 9.0を搭載していたが、本機のOSはAndroid 7.1だ。昨年のNebulaシリーズも7.1で、Google Play Storeが使えず、独自のアプリストアを展開するスタイルである。
とはいえ、本機単体をスマートフォンのように使うというのは考えられない。YouTubeやNetflix、Amazon Video、Spotifyといった有名どころはショートカットが登録されており、インストールすればそのまま使えるので、スタンドアロン機能としては十分だろう。
加えて本機はAirPlayにも対応しているので、スマートフォンと同じネットワークに繋がっていれば、スマホの画面をミラーリングして投影することもできる。
赤外線受光部は背面にあるが、リモコンの反応は良く、正面や横から操作しても問題なく動作する。反射光をよく拾うのだろう。加えてスマホのコントロールアプリでも操作できる。アプリによってはリモコン動作に非対応でマウス操作が必要になる場合があるので、スマホアプリも入れておいた方がいいだろう。
実際にいくつかのコンテンツを視聴してみたが、レンズの投影角が広く、2mも離れれば80インチ程度に投影される。距離が近いので、そのぶん明るい。日本の家庭環境にはちょうどいいだろう。
先日友人家族と庭でバーベキューをやったが、自宅の壁に投影したら、日常生活の中に別次元の窓が空いたような感覚になった。外でのプロジェクションは、なかなかインパクトがある。
ただ、一般的なお弁当箱スタイルのプロジェクタと違って、投影の上下角が調整できる足などが付いていないため、狙った位置に固定するのは本体だけではちょっと大変だ。そのへんの石でも挟んでおけばいいのだが、ちゃんとやるならなんらかの三脚は必要だろう。
なお明るさに関しては、バッテリー駆動の場合は投影時間を稼ぐため、若干暗めになるようだ。バッテリーを気にせず全力で投影すると、1.5時間となる。
音声はスピーカーがステレオ仕様となっているので、音楽ものの再生などはかなり良好だ。ただ昨今では小型Bluetoothスピーカーでも低音がドッコンドッコン出るのが主流なので、それに比べれば低音は大人しめではある。
プロジェクタとして使わない時は、本体のBluetoothボタンを押すことでBluetoothモードに切り替わり、本機をBluetoothスピーカーとして使用できる。このモードでは約30時間の音楽再生が可能だ。
プロジェクタとして2時間、スピーカーとして10時間ぐらいは使える事になる。1泊のキャンプのお伴としては、十分なスタミナだろう。なお賢明な読者諸氏には申し上げるまでもないことだが、周囲の方々や自然環境への配慮はお忘れ無きようお願いしたい。
総論
パーソナルプロジェクタも、その有用性は多くの人の認めるところだが、なかなか決め手がないというのが本音ではないだろうか。サイズ感で言えばNebula Capsule IIはいい選択肢だが、59,800円(税込)という値段に躊躇する。
一方Nebula Mars IIは、サイズは大きくなるが輝度、バッテリー容量も向上し、ステレオ仕様のBluetoothスピーカーとしても使える。加えてモバイルバッテリーとしても使える。ちゃんとしたスクリーンに投影しなくても、照明を消した部屋で壁や天井に向かってデタラメに投影し、YouTubeでインドのヒットチャートとか再生すると、めっちゃ楽しい。
価格は1万円ほどアップするが、生活を変えるアイテムとしてここまで使い出があると、69,800円(税込)はアリかなという気がする。
形も悪くない。円筒形よりも四角い方が、ちょっと上向きにしたいといった時に安定度が違う。ソファの肘掛けに立てかけて上向きに投影するみたいなことが簡単にできる。
こうして本機を触ってみると、つくづくプロジェクタは明るさが正義だと思う。白壁じゃなくてもちゃんと見えるのは、明るさがあってこそである。300ルーメンは、パーソナルユースで十分に楽しめる一つの基準として考えてもいいだろう。