ミニレビュー
5,000円以下のハイレゾイヤフォン比較。リケーブル挑戦、理想の音を探す
2020年9月11日 08:30
AV Watchに異動してきて早5カ月。高価格帯の機器にまだ馴染みが浅い筆者が、現在愛用しているソニーのヘッドフォン「WI-1000X」は、2016年の発売開始当時4万円くらいしたので「5~10年くらい使ってやるぞ」という気持ちで購入した。それ以前はウォークマンの付属イヤフォンや、高くても5,000円台までのイヤフォンを使っていた。
そんな金銭感覚の筆者が最近気になっていたのが、直販価格2,178円(税込)でリケーブルできる伊藤屋国際のプライベートブランド SoundsGoodの「SE01」。低価格ながら、ハイレゾ対応でダイナミック型×1、BA×1のハイブリット構造。リケーブルできるイヤフォンを持ってなかったこともあり、「色んなケーブルの差異がわかったら楽しいだろうな」と思い、アップグレード用のケーブル「SC01-TS」と合わせて購入してみた。
また、同じく低価格帯のハイレゾイヤフォンとして、筆者が以前使っていたような5,000円台までではどういったモノ、どのような違いがあるかと、intime 碧(SORA)、final E1000、茶楽音人 Co-Donguri Brassも用意して聴き比べてみた。再生に使った端末はウォークマン「NW-A100」。ボーカル+ピアノや弾き語りなどで聴き比べつつ、筆者の好みなロックやEDM調な曲で一番気分が上がるイヤフォンはどれかなど、試してみた。
衝撃のパッケージデザイン。ケーブル交換できる「SE01」
一番手はSE01から。まず驚くのはパッケージだ。ネットで見たときはてっきり画像の上に機能の説明を加工で載せてあるだけかと思ったのだが、まさかパッケージデザインであったとは。ダンボールを開けて目を疑った。
付属のケーブルはリモコン・マイク付きで、スマホなどでの使用時に操作や通話に利用できるものだ。価格は2,178円(税込)。アップグレード用の交換ケーブル「SC01-TS」は1,650円(税込)で、同時購入したところ550円引きになったので、今回は計3,278円(税込)。
装着してみると、ハウジングの形状が優れていて、耳にフィット。しっかりと密閉されて、外音もかなり遮断される。
まず付属のケーブルで音を聴いてみると、自然な広がりのある音で、低域やボーカルなどの中音域もしっかり出ている。「春はゆく(the late spring ver.)/Aimer」ではピアノの伴奏とハスキーな女性ボーカルが遠くの方へ拡がっていき、奥行きが感じられた。一方で、高域はかなりシャリシャリ聴こえ、ロックやEDMなどで激しめな曲調で男女ともにハイトーンなボーカルではサ行の発音にノイズが乗ってしまっていた。
ケーブルを「SC01-TS」に替えてみると、全体的に解像度が上がり、奥行きの感じられる音はそのままに、低音は締まりがあって少し厚めに、高域のシャリシャリは抑えられ、「劣等上等/Reol」のようなハイトーンな女性ボーカルの曲でも耳当たりの優しい音に変わった。
正直なところ、この価格でケーブルによる音の違いが実感できるか、あまり期待していなかったのだが、ケーブルの交換による音の変化がはっきり感じられたのが嬉しい。ケーブルによってここまで音が変わるのであれば、別のケーブルも色々試してみたくなる。
約2,500円の本格派イヤフォン「E1000」
次はfinal E1000。価格はオープンプライスで店頭予想価格は2,480円前後。6.4mm径のダイナミックドライバーを搭載したEシリーズのエントリーモデルで、中高生のお小遣いで買える価格帯の本格イヤフォンだという。
音の印象は、低域高域ともに抑えめで、長時間聴いていられる優しい音。決して平坦でつまらない音というわけではなく、抑揚が感じられるので、飽きずに聴いていられる。そして、ボーカルはしっかりと前に出てきて、解像度も良く、歌詞が聞き取りやすい。
「春はゆく(the late spring ver.)/Aimer」では、ピアノやバイオリンが柔らかい音色で拡がるなかで、ハスキーなボーカルがしっとりと歌い上げ、「平行線-『め』弾き語りver.-/さユり」では、ギターを激しめにかき鳴らすシーンでもほどよく抑えられてゆったりと聴いていられる。
「激しい曲でテンションを上げまくる!!」といった用途には向かないが、どんな曲でも作業用BGMとしてずっと聴いていられるような、価格帯も含め、学生の頃の勉強のお供には持ってこいな印象だ。
音が拡がる、見た目も可愛い「Co-Donguri Brass」
3番目は茶楽音人 Co-Donguri Brass。元々評判が良いのを見かけて気になってたハイレゾドングリ。見ためもコロッとしていて可愛らしい。筐体に真鍮を採用しており、不要共振を抑えて引き締まった低音と、トルネード・イコライザーによる音の拡がりが特徴だという。ドライバーは10mm径ダイナミック型。e☆イヤホンで3,819円(税込)で購入した。
音を聴いてみて最初に感じたのが、広い空間で聴いているような音の拡がり。「春はゆく(the late spring ver.)/Aimer」ではピアノとバイオリンの音が遠くの方へ消えていく様子をしっかり感じられ、ボーカルはその少し前に出て、息づかいまでしっかりと聴こえた。
そして低音が引き締まっていて力強く、「劣等上等/Reol」ではキックの圧力がビシバシと伝わってきて、ハイトーンな女性ボーカルが広く響き渡るので、気分をがっつりと上げてくれる。試聴時はそこそこ音量を上げて聴いていたのだが、普段の生活で、かなり控えめな音量で聴いても、しっかり低音と音の拡がりを感じられた。
セラミックツイーター採用で4,830円の初代「碧(SORA)」
最後にintime 碧(SORA)。セラミックのツイータ「VST」とダイナミック型のハイブリット構造で、発売当時の価格は4,830円(税込)と5,000円を切るが、今回集めた4種の中では1番高価なイヤフォン。こちらは初代モデルなので、すでに生産終了してしまっている。なお、現在販売している後継機の碧(SORA)-2は6,499円(税込)だ。
中高域の解像度が高く、ボーカルの声は透き通るように聴こえる。低域は主張しすぎず適度に力強く、高域の響きはさっぱりとしていて、こちらも長時間じっくり聴いていても疲れない優しい音だと思う。
「春はゆく(the late spring ver.)/Aimer」のようなピアノとヴァイオリンと女性ボーカルの落ち着いた曲もぴったりだが、「レイメイ/Sayuri×My First Story」や「Phantom Joke/UNISON SQUARE GARDEN」のように演奏が激しめのロックでもボーカルがピックアップされ、演奏がほどよく抑えめになるので聴き疲れせずに気分を上向きにできる。
低価格帯でも素材や構造、音も違いがはっきりわかる
4つのイヤフォンを聴いてみた結果、音の好みだけで判断すると、激しめなロックやEDM調な曲でテンションを上げていくのが好みの筆者にとっては、Co-Donguri Brassが1番好きな音をしていた。
一方、コストパフォーマンスで考えると、2,480円でどんな曲でも安定して聴けるE1000が、理想的だと感じた。そしてSORAは、そんなE1000に没入感がプラスされたような印象で……、毎月のお小遣いが3千円くらいだった中学生時代に遭遇していたら1カ月くらい売り場に通って悩みそうだ。
音の傾向としては、SE01とCo-Donguri Brassがより広く音が拡がっていき、低域はしっかりと迫力を感じられる。E1000とSORAは、拡がりは少し抑えめだが、中音域の解像度が高く、ボーカルがより前に出て、透き通るように聴こえた。意外だったのは、ドライバーユニットの種類や構成が違うイヤフォンであっても、音の傾向が似た製品があるという事。ダイナミック型のみと、ダイナミック+BA/VSTのハイブリッドで、傾向が別れると予想していたが、それだけで音の傾向が決まるものではないというのが実感できた。
また、今回の4モデルの中で、唯⼀リケーブル対応のSA01は、ケーブル交換によって音をカスタマイズするという面白さがある。別の素材のケーブルに変えてみたらどんな音になるのだろう? と、色々試してみたくなる。この価格で、そんな“ポータブルオーディオの楽しさ”を味わえるのが魅力だ。