ミニレビュー

リニューアルした「Mac Studio」と「15インチMacBook Air」を試す

先週のWWDCではMacの新製品も発表になっている。

その中でも「Mac Studio」と「15インチMacBook Air」の試用機材が手元にあるので、どう変わったかをチェックしてみよう。

画面サイズと「音質」が魅力の15インチモデル

まずはMacBook Airから。

15インチMacBook Air。カラーはミッドナイト

昨年出たM2搭載の13インチモデルの中身はそのままに、ディスプレイを15.3インチに大型化したモデル、と言っていい。

14インチMacBook Proと大きさを比較。ひとまわり大きい印象だ
キーボードやタッチパッドのサイズは他モデルと同じ

シンプルすぎる説明だが、実際そうだ。ベンチマークを取ってみたが、性能も13インチモデルとほとんど同じ。カタログ上のバッテリー動作時間も18時間で同じだ。

とすると、本質は「大きい画面が必要かどうか」。これはけっこうアリなのではないか、と思う。

作業はもちろんだが、動画視聴などでも画面は大きい方がいい。個人向けとしては十分な迫力だと思う。これで昔のように2.5kg近い重量なら困ってしまうが、MacBook Airの場合1.51kgなのでそこまで重くない。見た目の大きさから受けるイメージに比べると軽い、とも感じる。

MacBook ProのようにミニLED + ローカルディミング採用ではないので、輝度の突き上げなどはそこまででもない。だが、液晶採用製品の中で、Macはおしなべて高画質であり、MacBook Airもその例に漏れない。

なにより画質以上に驚いたのが「音質」だ。ウーファー搭載になって、MacBook Proのものにかなり近くなっている。サイズが大きい分音の鳴りも良好に感じる。空間オーディオの効果は13インチMacBook Airより良好で、音楽だけでなく映画を観るときにも向いている。

M2世代になって高速化した「Mac Studio」。 GPU強化 + 新ソフトでゲームの魅力アップも

ではMac Studioに移ろう。

Mac Studio。プロセッサーの世代は変わったがデザインは同じ

今回、Mac Studioも「M2世代」に移行し、M2 MaxもしくはM2 Ultra搭載になった。同じプロセッサーを使ってPCIバスでの拡張性を持たせた「Mac Pro」もあるが、今回貸し出されたのはMac Studioだ。

評価機はM2 Max(CPU12コア・GPU38コア、メインメモリー96GB)を搭載したモデル。

昨年M1 Ultra(CPU20コア・GPU64コア、メインメモリー128GB)搭載モデルをレビューする機会があったが、その時のベンチマークと比較してみよう。

マルチコア性能ではかなわないものの、シングルコア性能では2割近く速くなっており、GPUもコア数に比べかなり有利な値が出ている。同クラスのもので比較すれば、2割程度は着実に性能アップし、その分お買い得になっているとみていい。グラフィック制作や動画編集など、性能による時間短縮が重要な用途では魅力的である。

また、GPU性能の向上はゲームにもプラスになる。

今回は現行のmacOS Venturaを使い、「バイオハザード ヴィレッジ」でのフレームレートを比較してみた。解像度は1,920×1,080ドット・グラフィック設定は一番ヘビーな「限界突破」にしている。

「バイオハザード ヴィレッジ」の冒頭シーンで、設定を同じにしてフレームレートを比較

比較したのは、15インチMacBook Air(M2)と14インチMacBook Pro(M1 Pro)、そしてMac Studio(M2 Max)である。

結果はご覧の通り。負荷の低いシーンでのものだが、Mac Studioで圧倒的な値になった。解像度を高くしても快適なままだろう。

順に、MacBook Air 15インチ(M2)、MacBook Pro 14インチ(M1 Pro)、Mac Studio(M2 Max)での結果。Mac Studioは流石のフレームレート

Macでゲーム……と思うかもしれないが、WWDCでは、MacにWindows用のゲームを移植しやすくする「Game Porting Toolkit」が公開された。これは実質的なエミュレータであり、Direct X12で動作するWindows用のゲームを、ほとんどそのままで動作させられる。だとすると、Macでゲームをするのがさほど不思議ではない時代がやってくるかもしれない。

そのときには、プロだけでなくゲーマーがMac Studioを買う時代が来るかもしれない。そう考えると、このベンチマーク結果はかなり興味深いもの、と言えるのではないだろうか。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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