ミニレビュー

“空間表現”と“反応”どう違う? finalゲーミングイヤフォン「VR3000/VR2000」聴き比べた

VR3000と新発売のVR2000

finalから、有線のゲーミング用イヤフォンが2種類発売されている。「VR3000 for Gaming」と「VR2000 for Gaming」だ。価格はVR3000が7,980円、VR2000が6,980円と、どちらもリーズナブル。ただ、同じような価格帯に、どうして2モデルあるのだろうか?

理由は「音の特性の違い」だという。VR3000は「空間表現」に拘ったモデル、VR2000は「音への反応」に拘ったモデルだそうだ。

ただ、「空間表現」や「音への反応」と言われても、フワッとしていて、違いがよくわからない。また、各イヤフォンにマッチするゲームに、どんな違いがあるのだろうか。実際に2機種を聴き比べてみた。

早速開封し装着してみる

まずは開封。ハウジングの形状はほとんど同じだが、色味が若干異なる。VR3000はブルー寄り、VR2000はグリーン寄り。どちらも仕上げはマットな質感で、1万円を切る2機種だが、安っぽさは無い。見た目は重厚感があるのだが、手にすると思ったよりも軽い。筆者が持っているコンビニで買ったイヤフォンよりも軽く感じる。

VR3000 見た目とは裏腹にとても軽い
VR2000 こちらもとても軽い

この“軽さ”は、ゲーム用イヤフォンとしてはありがたい。ゲームに熱中すると数時間装着したままになる事もあるため、軽ければ軽いほど耳への負担が少ないためだ。また、この値段でこれだけしっかりとしたデザインであるならば、デザイン面も十分だろう。

形状が同じなので、付け心地も同じだ。どちらもケーブルを耳裏にまわす耳掛けタイプだが、ケーブルが肌に触れた時の不快感はほとんどない。よりホールド性能を高めたい人は、付属のイヤーフックを組み合わせる事もできる。フック自体は軽いので、イヤフォンの軽量さを損ねずに安定感が増すはずだ。

ただ、イヤーフックを取り付ければ多少ケーブルの動きが制限されるため、耳から外したり、収納する時などにおいては少し邪魔に感じた。

また角ばった形からは想像できないほど、装着した際の痛みや疲れは感じられなかった。しばらく2モデルを装着してみたが、ハウジングがコンパクトで軽量なので、耳穴に痛みや疲れを感じる事はなかった。密閉度も高く、遮音性も良好。周囲のノイズも適度に遮断し、ゲーム世界に没頭できる。この価格のイヤフォンとしては、十分すぎるパフォーマンスだ。

FPSゲーム「VALORANT」をプレイ

まず、銃で敵を倒す一人称視点のFPSゲームで試してみよう。選んだソフトは足音やサウンドによる情報が非常に重要な「VALORANT」だ。

5人 VS 5人のタクティカルシューティングゲームで、足音を聞いて敵の位置を判断したり、また、足音を消してエリアを奪取するなど、“音”に関する情報が重要なゲーム。足音1つの聴き落としで勝敗が決する……なんてこともザラであるため、このイヤフォンで、細かな音がしっかり聞き取れるかどうかが大事なところ。

ゲーミングPCに接続しているインターフェース「Presonus Audio box itwo」にイヤフォンを接続し、プレイしてみた。

VR3000 for Gaming

まずは既発売のVR3000。空間表現に拘ったというだけあり、足音のする方向が聞き取りやすい。壁の向こうにいるのか、もっと遠い通路にいるのかなど、敵の位置を、目で見ずとも音で大体の位置が予想できる。

耳からの情報で、マップのどこに敵がいるのか予想できるというのは、実際に体験してみるとすごく便利だ。普段、目からの情報に頼ってプレイしてきたプレーヤーが使ってみると、勝率が上がるかもしれないと感じる。

VR2000 for Gaming

続いて「音への反応」にこだわったというVR2000。

VR3000より音の粒が細かく、ゲームサウンドやBGM、キャラクターボイスなどがとてもクリアに聞こえる。そのため音による情報を整理しやすく、結果的に音に対する反応がしやすい印象だ。

また、VALORANTは歩く場所によって足音が変わる。例えば、鉄っぽい廊下を歩くときは「ゴンッゴンッ」と、砂利道を歩くときは「ザッザッ」といったような感じ。その音を聞き分けることで敵がどこにいるか判断できる。

VR2000では、その違いを聞き分けやすいのが非常に良い。聞き間違えが少なくなるのは、VR2000の利点。より“自分の耳を信じたプレイ”が出来るようになる。

音による情報を整理しやすいため、複数の敵に囲まれた場合でも、優先順位を決めて瞬時に対応可能だった。プレイスキルの高いプレイヤーには、鬼に金棒になるかもしれない

どちらもFPS向にマッチするイヤフォンだが、個人的には、敵の“位置”がはっきりと感じられ、耳での索敵がしやすいのがVR3000、音に対するアクションの速度を重視するならVR2000がおススメ……と感じた。

格闘ゲームで試す「スマッシュブラザーズ」

Nintendo Switchの代表的な格闘ゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」でも試してみよう。

空間表現が得意なVR3000では、正直あまり利点を感じられない。印象に残るのは、BGMの聴こえ方で、スピーカーで聴いている時は、BGM、効果音、キャラクターボイスなどがすべて混ざり合って聴こえていたのだが、VR3000を使うと、境界がくっきりと別れて聴こえる。そのため、ゲームの世界に気分が入り込みやすいと感じた。

……だが、それでプレイがうまくなるわけではないため、“勝ちに拘る”人に合うかと言われると微妙な印象だ。

Switchに接続したVR2000

その点VR2000は、サウンドの立体感こそVR3000に劣るものの、音のラグや操作感とのズレは全く感じ無い。それ故に、ガードの音や、敵の攻撃音が発生してから自分のもとに着弾するまでの間隔などは、掴みやすい。まさに「音の反応に拘る」というキャッチコピー通りで、ゲームがあまり上手い方ではない筆者でも、プレイのしやすさを実感出来た。

格闘ゲームにおいては、VR3000はゲームそのものを楽しむエンジョイ向け、勝ちにこだわる人には、VR2000をおススメしたい。

音ゲームで試す「プロジェクトセカイ」

スマホに接続し、音ゲー「プロジェクトセカイ」を試す。

ボーカロイド楽曲を主に扱ったこのゲームでは、楽曲によってはボーカロイドとキャラクターの声が入り混じる。そこでキャラクターごとの声を聞き分けられればゲームをさらに楽しめるのではないかと考えた。

スマートフォンに接続しリズムゲーをプレイ

まずVR3000、第一印象は“プレイしやすい”。楽曲自体のサウンドが良いのはもちろんだが、カットインで入るキャラクターボイスや、ノーツをタップした際の音、その1つ1つがめちゃくちゃ聞き取りやすい。音の位置もはっきり認識できるため、ゲームと楽曲の両方に熱中してしまう。

続いてVR2000に変更すると、音の解像度が圧倒的に高い。タップしてからノーツの音が鳴るまでのラグも感じない。そのため、ビートにノリやすく、ゲームに集中できる。これにより、音に対しての反応がしやすくなっていると感じた。

プレイした楽曲は、かいりきベア描き下ろし「バグ」。2モデルとも、細かいギターサウンドと不気味なサウンドがクリアに聴き取れたほか、4人のキャラクターと1人のボーカロイドとの違いもわかりやすかった。“楽曲を楽しむ”という面でも、高い実力のある2モデルと言える。

バグ / 25時、ナイトコードで。 × 鏡音レン

音楽を聴いてみる

ゲーム向けイヤフォンだが、音楽を聴いてみたらどうだろうか? スマホに接続し、YouTubeで何曲か聴いてみた。

VR3000はベースなどの低音域とボーカルやシンセなどの高音域のバランスが良い印象。音の鳴る位置や定位感が非常に優れていて、ライブサウンドなどのような空間を感じたい音楽に向いていると感じた。

VR2000は、VR3000に比べて中高域の音がクリア。低音の安定感を残しつつ、高音の細かい音の粒を感じられるため、高音の広がりやシンセサイザーの音を明瞭に聞き取れる。また女性ボーカルの声が通りやすいというのもGood。アニメ系の楽曲やアイドル楽曲などに非常に強そうだと感じた。

推しの子劇中歌「サインはB」のようなキラキラした高音や女性ボーカルの重なる楽曲はVR2000がとても良い。シンセサイザーやベル音などのリフが鮮明に聞き取れるため、高音域の厚みを感じやすい。また、女性ボーカルに焦点が当たるため、ボーカルの3人が同時に歌うパートでもキャラごとの声の聞き分けが容易に行え、彼女たちの声がスッと耳に入ってくる。これなら、推しの声を聴き洩らす心配は無さそうだ。

B小町「サインはB」

低音域が特徴的な、スピッツ「美しい鰭」で試してみたところ、VR2000は浮遊感あるベースサウンドと、ボーカルのファルセットのバランスが良く描写される。

一方VR3000は、VR2000より低音の迫力があるため、「美しい鰭」のようなベースが特徴的な曲の場合、VR3000の方が心地よく聴けるだろう。また、ギターの位置やベースの位置など楽器の細かい位置も明瞭に感じられるため、立体感のあるサウンドを楽しめた。

スピッツ / 美しい鰭

THE FIRST TAKEで、TVアニメ『呪術廻戦』「懐玉・玉折」のOPテーマ、キタ二タツヤ「青のすみか」も聴いた。ピアノとストリングスだけのアレンジだ。

キタニタツヤ - 青のすみか / THE FIRST TAKE

VR3000は、やはり低音の力強さと中高域のバランスが良い。また、楽器数が少ないからかボーカルの声が広がる様子に、空間の大きさを感じる。そのためサウンド全体に厚みがあり、楽曲の雰囲気の良さを増幅させてくれるようだ。また、楽器の止んだタイミングでの服の擦れる音やリップ音が聞き取りやすく、収録現場のリアルな雰囲気を伝えてくれた。

VR2000では、音に対する解像度が高いからか、ピアノの打鍵の力強さやボーカルの声の奥にあるエッジ、掠れた息遣いまでが感じられる。中高音域がVR3000に比べて強調されてるからか、ストリングス1本1本の音の迫力がとても感じ取りやすい。音の粒が細かく感じ取れるために息遣いやリップ音、声の震え方なども明瞭に伝わってくる。

結論として、VR3000は音の位置や曲の立体感を感じやすい。VR2000は、音の粒や中高音の音が鮮明に聴こえる、といった違いがあった。

シーンによって使い分けたい2機種

2機種ともに違った良さがあり、その違いはかなり分かりやすい。「シーンによって使い分けて欲しい」というfinalからのメッセージを感じる試聴だった。

基本的には、2機種が得意とするゲームジャンルが異なるため、自分がよくプレイするゲームに合わせて、VR3000、VR2000のどちらかを選ぶカタチになるだろう。ゲームジャンルを問わないという場合は、より低価格なVR2000を買ってみるのも良いだろう。

どちらのモデルも、ゲームだけでなく、音楽を楽しむイヤフォンとしても十分使える実力がある。そう考えると、非常にコスパの良いイヤフォンだ。ゲーム用としては「ゲーミングヘッドフォン」が話題になる事が多いが、ユニットと耳が近いイヤフォンは、細かな音まで聴き取りやすいメリットがある。ゲーミングヘッドフォンを既に使っているという人も、VR3000とVR2000を一度、試聴してみて欲しい。

増田隼山樹