ミニレビュー
夜空に広がるすいちゃんの歌声。ANIMA×Midnight Grand Orchestraヘッドフォンを聴く
2024年12月5日 08:00
実は今、ホロライブ所属のVTuber「星街すいせい」ファン(星詠み)に話題のヘッドフォンがある。「Allegro」のMVで、すいちゃん(星街すいせい)が首から下げているヘッドフォンが、実際の商品として発売されるのだ。
それが、Acoustuneのサブブランド「ANIMA」より12月6日に発売されるブランド初のヘッドフォンであり、すいちゃんとサウンドプロデューサー・TAKU INOUEのユニット「Midnight Grand Orchestra」(ミドグラ)のコラボモデルとなる「ANW03 Midnight Grand Orchestra Ver.(MGO Ver.)」だ。
このヘッドフォンは9月に予約がスタートし、先日のライブツアー「Hoshimachi Suisei Live Tour 2024 “Spectra of Nova”」さいたまスーパーアリーナ公演に合わせて、近隣のヨドバシカメラ マルチメディアさいたま新都心駅前店にて先行で試聴会が開かれた。現在はe☆イヤホンとフジヤエービックにて試聴機が用意されているため、店舗に出向けば試聴できるようになっている。
今回、編集部でもデモ機をお借りすることができたので、装着感や音についてレポートをお届けする。店頭予想価格33,328円と安くはないモデルだが、e☆イヤホンやフジヤエービックでは店頭販売も予定しているそうなので、試聴や購入の参考になれば幸いだ。
ブランド初のワイヤレスヘッドフォン。ミドグラらしい夜空に星のデザイン
ANIMAはその親ブランドであるAcoustuneも含めて、イヤフォンの印象が強いだろう。実際にその通りで、自ブランドとしてワイヤレスヘッドフォンを発売するのは今回が初。その初のヘッドフォンがコラボモデルになっているということもあって、予約をためらった人もいるのではないだろうか。筆者も正直、まずは音を聴いてからだと思った。ちなみにAcoustuneは、OEMでワイヤレスヘッドフォンも手がけている実績はあるそうだ。
ANW03 MGO Ver.について簡単におさらいすると、音質×ボイス×デザインの三要素をMidnight Grand Orchestraに携わるメンバーたちが手掛け、世界観を落とし込んだモデルで、TAKU INOUEが監修した3種類のチューニングパターンを搭載したモデルとなっている。
そして、オリジナルのシステムボイスとして、すいちゃんの録り下ろしガイドボイスが42ボイスが用意される。購入後に専用アプリを起動することですいちゃんのシステムボイスが聴けるようになる。
外観も観ていこう。本体カラーはユニット名と同じく夜をイメージしたミッドナイトブラックが採用されている。紺系なのかなと思っていたのだが、パッと見で無彩色に近い黒で、マット塗装になっているので、結構ダークな印象だ。そこにシルバーでプリントされたMidnight Grand Orchestraのロゴマークやワンポイントが光っているので、夜空に輝く星のイメージがまっすぐ伝わってくる。
右側のハウジングには、音量調整の+と−、電源/再生・停止などのマルチファンクション(MF)ボタン、通話ボタンの4つのボタンが備わっている。右側にはそのほかにオーディオ端子が備わっており、ここにオーディオケーブルを繫ぐことで、有線ヘッドフォンとして使用できる。左側は充電用のUSB-C端子が備わっている。
装着してみると、側圧はけっこうしっかり目。少し意外だったのは、アームとハウジングを繫いでいる部分があまり動かないことで、左右でがっちり挟まれているような着け心地だ。締め付けられている、というまでは行かないが、しっかり装着されている感覚があり、頭を動かしても落ちる心配はなさそうだ。
夜空に広がるすいちゃんの歌声
早速音を聴いてみたいところだが、今回借りたデモ機は、製品版に搭載されるTAKU INOUE監修の3つのサウンドチューニングのうち、空間の広がりに重きを置いた「UNIVERSE」のみで固定されているため、Bluetooth接続ではUNIVERSEでの印象をお伝えする。
なお製品版には、この他に低域を少し上に、高域を少し下にフォーカスしてロックミュージック向けの音になるという「GALAXY」、全体的にマイルドな「ATMOSPHERE」が用意される。
さっそくミドグラの「Midnight Mission」を再生してみると、ストリングスの音の広がりと、すいちゃんの声、ギターやベースが加わってきて音数が増えたときの前後感が広大で、夜空の下で歌っているすいちゃんのイメージが頭に浮かぶ。「Stellar Stellar」はMVの印象と聴こえる音の印象が噛み合って、「宇宙空間に揺蕩いながら聴くとなおよし」という、UNIVERSEの説明文の意味がなんとなく理解できるくらいの没入感が味わえる。
「Stellar Stellar」はミドグラ結成前の曲だが、それも含めてミドグラの楽曲全般がイヤフォンよりも、開放型のヘッドフォンやスピーカーで聴いた方が気持ちの良いな〜と思っていたので、今回のコラボヘッドフォンのチューニングの1つ目に空間の広がりを重視したモードが来ていて、それがバッチリ嵌まっているところが嬉しい。
Dolby Atmos曲も、広い空間表現を活かしきった定位感もバッチリ決まったいい音で聴ける。Dolby Atmos曲は、立体音響に対応していない、とくにイヤフォンで聴いた場合にボーカルがやたら遠くに居るような変な感覚で聴こえたりすることもあるため、なんとなく「良さがわからない」と思っている人も少なくないと思うが、このヘッドフォンならバッチリだ。
ミドグラ楽曲はまだDolby Atmos対応のものは出ていないが、すいちゃんのアルバムは「Still Still Stellar」「Specter」ともに全曲対応しているので、UNIVERSEで聴くと空間いっぱいにすいちゃんの歌声が広がるDolby Atomsの魅力を味わえるだろう。オススメは「Stellar Stellar」「GHOST」「褪せたハナミドリ」「ソワレ」あたりだ。
そして、有線接続時の音だが、電源をオンにしている時はTAKU INOUEチューニングの音をそのまま聴くことができる。一方、電源オフ時はこのヘッドフォンの素の音になっているようだ。
電源オフ時の音は、低域がUNIVERSEよりもタイトになり、非常に見通しの良く、音場も広い音になっていて、素の状態でもしっかり作り込まれていることがわかる。とくにすいちゃんの歌声だけにフォーカスしたいのであれば、電源オフでの有線接続の方が、まっすぐに歌声が耳に届いてくるように感じられる。
一方で、音のまとまりが良く感じられていた中低域の部分も少し弱くなってしまうので、筆者の場合は総合的に見て、UNIVERSEの音作りの方が好みに感じられた。
5th fes.の「The Last Frontier」必聴
この音の特徴で聴きたいと真っ先に思ったのがライブ音源。そこでYouTubeのすいちゃんのライブを観るのも良かったのだが、今年3月に行なわれた5th fes.の生演奏ライブ音源でそのまま配信されている曲がある。Stage3最後のユニット曲として披露されたあずきち(AZKi)とすいちゃんの「The Last Frontier 5th fes. Live ver」だ。
この曲は、カバーの音楽レーベル「イノナカミュージック」のVSingerとしてあずきちとすいちゃんが所属していた頃の楽曲で、当時活動期間を定めて活動していたあずきちが、その後も活動を継続していくすいちゃんへ向けた応援歌として作詞作曲を手がけた曲で、その想いは「最前線の地へ君なら行ける、まだ見たことのない世界へ行ける、僕は観測する輝き止まぬ星の名を」という歌詞に現れていた。
しかし、イノナカミュージックのプロジェクト終了のタイミングであずきちが活動継続の決断をして、ホロライブに合流。Googleマップのストリートビューを駆使してその場所を地図上から探す「Geoguessr」の配信で人気を博し、すっかりホロライブ0期生として定着した。
その上でまたあずきちとすいちゃんが肩を並べてライブの舞台に立っていることすら、リスナーの身からすると感動的だったのに、そこでの歌唱曲が「The Last Frontier」。前奏の時点で涙腺が緩んだ星読みと開拓者も少なくなかったのではないだろうか。
そしてこの5th fesでは、一部の歌詞をすいちゃんが改編しており、先ほど挙げた部分が「最前線の地へ共に進もう、まだ見たことのない地図を広げよう、君と開拓する三度交わる未来へと」と原曲の歌詞に対して、すいちゃんからのアンサーが返された。
歌唱後のMCで、あずきちへの手紙を読みながら歌詞に込められた意味や、あずきちへの想いが語られるのだが、ライブの配信はすでに終了、BDも今回は全国流通せず、残念ながら公式ショップでの予約も終了してしまっている。
だが、このすいちゃんの歌詞が入った「The Last Frontier 5th fes. Live ver」は各定額制音楽配信サイトで聴くことができるので、是非今回のANW03 MGO verのUNIVERSEで聴いてほしい。現地参戦していた人や、リアルタイムで配信を観ていたも、あのシーンの感動がよりリアルに呼び起こされると思う。
ミドグラの印象に合ったクールなコラボヘッドフォン
ANIMAとミドグラのコラボモデルでは、第1弾として完全ワイヤレスイヤフォンの「ANO01」があったのだが、あちらはクリアな素材に青緑系のカラーが使われた、ちょっと可愛らしい印象のモデルになっていた。もちろんすいちゃんにはキュートな一面もあるので、決して間違いではないのだが、すいちゃんの歌唱楽曲はやはりクールな印象の曲が多く、とくにミドグラ楽曲はよりそのクールな印象が強まる。
ヘッドフォンとして登場した今回のANW03 MGO Ver.は、そのクールな印象をバッチリ押さえているところがまずグッときたポイントでもある。それでいて、TAKU INOUEによるチューニングで、ミドグラ楽曲やすいちゃんの歌声にも相性が抜群。おまけにライブ音源もどっぷりのめり込めるように楽しめる。コラボモデルにここまでこだわりが詰まっているとやはりファンとしても嬉しい。
前述したとおり、ANW03 MGO Ver.は、予約受注生産モデルではないため、e☆イヤホン、フジヤエービックでは在庫があれば店頭で購入できるようになる。試聴機もすでに用意されているため、気になる人は店舗に行ってみよう。量販店ではヨドバシカメラでも販売が行なわれるがWebのみとのことだ。
現物を見て、音を聴けば欲しくなるような魅力が詰まったコラボモデルなので、気になったけど予約を踏み出せなかったという星詠みやホロリスたちは、是非一度試してほしい。