レビュー
自転車ロードレースファンに激震!? 「Jスポでジロ・デ・イタリア見られない」問題に対処する
2017年5月2日 00:02
J SPORTSさえ契約すればよかった、そう去年までは……
AV Watch読者の中で「自転車ロードレース」に興味があるという方はどれくれいいるでしょうか。実は筆者、テレビ観戦歴にして約13年ほどのファン。一般公道でレースが行なわれるアブノーマル性、自転車ならではのスピード感とスリル、個人競技のようでいて実はバリバリのチーム競技という戦術性……。いやもぅたまりません。
告白すると、筆者はそんな自転車ロードレースの観戦が大好き!(でもロードバイク自体への興味はなし)。きっかけは、フジテレビで放送されていたドキュメンタリー「英雄たちの夏物語」をたまたま視聴したこと。以来、毎年春頃に発売される選手名鑑付き雑誌もちゃんと買う派。好きな選手はファビアン・カンチェラーラ。現役ではティージェイ・ヴァンガーデレンとローハン・デニス。タイムトライアル特性があり、1週間程度のステージレースで、優勝できるくらいの選手が好みです
自転車ロードレースの本場は、なんといってもヨーロッパ。クリストファー・フルーム、アルベルト・コンタドール、ピーター・サガンら著名選手の活躍を見たい場合、自然と海外レースに触れることになります。
海外レースをライブで見たい場合、これまでは「有料放送のJ SPORTSを契約する」のほぼ一択でした。BS放送の「スカパー!」を視聴できる環境が既にある場合、月額料金は2,469円(税込)。この他にスカパー! の基本料金421円(税込)がかかります。もちろん他のチャンネルとの割安セットがあったり、ケーブルテレビ会社を通じてJ SPORTSを追加契約するなどの方法とも比較しなければなりませんが、おおむね月3,000円かかります。
ところで、自転車ロードレースは一般公道を1日に150~250km近く走るというその特性上、「ナイトレース」がほぼありません(沿道全体に照明を設置できる訳もなく)。よって現地の昼下がりに競技が実施されます。当然時差があるので、日本の生放送は夕方~深夜にかけて。よって9時~17時で働く会社員の方でもムリなく番組を楽しめます。
もう1つ、自転車ロードレースには色々なバリエーションがあるのもポイント。例えば、世界で最も有名な「ツール・ド・フランス」は、毎年7月上旬から下旬にかけての約3週間、平日も含むほぼ毎日レースが行なわれます。この他にも、1週間程度だったり、週末に1日だけ行なわれるレースがあるので、視聴ペースが実に独特なんです。周りにもしロードレースファンがいたら、7月の平日夜に酒飲みに誘ってみてください。たぶん「月曜ならいいよ」と答えるはずです。
J SPORTSではこれら膨大な数のレースのうち、特に著名なものを中心にライブ放送中。要するに、J SPORTSさえ契約しておけば大概の著名レースを見られます。シーズン本番の3月~10月ともなれば、ファンは夜な夜なJ SPORTSを視聴しながら一喜一憂し、ゴール争いに熱狂しています。
しかし、それは唐突に起こりました。3月後半にJ SPORTSで例年放映していたレース「ミラノ~サンレモ」が放映されなかったのです。2016年までは確かに放映されていたのに……。
世界3大レースの一角「ジロ・デ・イタリア」の生中継が見られるのはDAZNだけ!
結局のところ、2017年の「ミラノ~サンレモ」は、Jリーグと大型契約をしたことで話題のスポーツ配信サービス「DAZN」にて中継されました。ただ恥ずかしながら筆者、この春の仕事が異常に多かったため、3月頭の段階で視聴を断念。悔しいのであえて情報をシャットアウトしていました。しかし、AV Watchの編集Y氏から状況を聞いてビックリ。
確かにJ SPORTSの公式サイトを見ても中継予定がない。「今年もJ SPORTSでやるんだろうな」そう思い込んで、全くチェックしていませんでした。ファンとして恥ずかしいというか盲点といいますか……。
それだけでなく、4月上旬のビッグレース「ツール・デ・フランドル(ロンド・ファン・フラーンデレン)」もJ SPORTSで放映されず。ひいきの選手が優勝する可能性が高く、個人的にも特に好きなレースなのに……。
編集のY氏によれば、「ツール・デ・フランドル」もDAZNで中継予定とされていたそうですが、実際には配信されなかったとのこと。
そんな中、自転車ロードレースファンが今最も心配しているのが、5月5日に開幕を控える「ジロ・デ・イタリア」の扱いです。これは、ツール・ド・フランスと同様、3週間に渡って競われる大レース。「グランツール」と呼ばれる世界3大レースのうち、その年で一番最初に行なわれるだけに、ファンの注目度は高いのです。加えて、2017年は記念すべき第100回大会。J SPORTSではここ10年近くライブ中継されていましたが、なんと今年はDAZNで配信されることになっています
DAZNへの不安「日本語の実況・解説は?」、「本当に配信されるのか」
DAZNでの配信については、正直言って不安です。カンチェラーラが鮮烈なプロローグ優勝を果たした2004年のツール・ド・フランス以来、約13年に渡ってJ SPORTSの自転車ロードレース中継を視聴してきた筆者ですが、放送局が変わるだけでこんなに不安になるとは思いませんでした
その最たる理由が日本語での実況・解説陣。J SPORTSの中継では、現役ないし引退したプロ選手を軸とする解説陣と、実況担当者がコンビを組んで番組を進行するのがお馴染み。自転車レースは1回の中継時間が3時間を超えるのがザラで、中には6時間近く放送する日すらあり、野球の実況のテンションともまた違います。なんというか、識者の雑談を聞いているようなイメージなのです。
レースコース脇の美しい自然、歴史ある建物の映像などの映像的見どころも盛りだくさん。それを見ながら、彼らが語る選手の裏話、競技とは直接関係ないヨーロッパ雑学などは、まさになくてはならないものなんです。
最近であれば栗村修&サッシャのお2人がゴールデンコンビとして知られています。懐かしいところでは、近代ツール・ド・フランスで日本人初出場を果たした今中大介、トライアスロン選手として自ら競技も行う白戸太朗の2人による回も好きでしたね。
そんな実績あるJ SPORTS解説陣が、そのままDAZNにも出演するとは考えづらい。そして、前述の「ミラノ~サンレモ」はDAZNで見逃し配信が行なわれていましたが、視聴したところ、音声は英語実況のみ。日本語字幕もありません。となると、ジロもまた日本語実況無しと考えるのが自然ですが、DAZNからはこのあたりの充実について特に発表はありません。プロレスのWWE配信開始にあたっては日本語実況が大きくアピールされていましたが……。
さらに「ツール・デ・フランドル」が配信されなかったと聞くと、「そもそも本当にジロを配信してくれるのか?」と心配になってしまいます。実際、DAZNの番組配信予定ページを数日に一度覗いているのですが、ジロ・デ・イタリア以外に予定されていたレースが減っているような気もします。
J SPORTSオンデマンド×Chromecastで大画面テレビ視聴
もちろん、筆者がいくら不安を書き連ねても、ジロ中継が今からJ SPORTSに切り替わるとは思えません。そこはもう割り切ってDAZNと付き合う所存です。「5月の会費を払ったのにジロ中継がなかった」という事態にだけはなってほしくないですけど。
ただ、その一方で朗報もありました。J SPORTS独自の有料動画配信サービス「J SPORTSオンデマンド」が2月、Chromecastへの対応を表明したのです。
少々紛らわしいですが、J SPORTSオンデマンドは「スカパー! オンデマンド」上のJ SPORTSチャンネルとはまったく別。料金体系も独特で、月額2,400円(税別)で配信対象となる全番組を見られる「総合パック」と、月額1,800円(税別)の「ジャンルパック」の2つがあります。
「自転車ロードレースだけ見られれば野球やサッカーは我慢する」という方ならジャンルパックで十分。つまり、衛星放送での視聴に比べて毎月1,000円近く料金を抑えながら、いつものJ SPORTS中継が見られる訳です。ライブはもちろん、大概のレースが見逃し配信されるのもポイントでしょう。
J SPORTSオンデマンドは当初、PC・スマホ・タブレットが対応デバイスでしたが、これにChromecastが加わりました。リビングの大画面テレビで、ネット配信による番組視聴が可能になったのです。
筆者も4月9日に、やはり著名なワンデーレースである「パリ~ルーベ」のJ SPORTS中継をChromecast経由でライブ視聴しました。使用したAndroid版アプリの挙動はやや不安定でしたが、テレビ画面上の表示画質は十分。6時間近い番組を全編視聴したところ、途中2回ほど接続が切れましたが、再接続すればすぐに再生が始まります(宅内のWi-Fi電波強度の影響もあるかと)。なお、ライブ番組については追いかけ再生できない点には注意しましょう。
DAZNはマルチデバイス対応が魅力。でもやっぱり日本語実況が欲しい……
もちろん、DAZNにもアドバンテージはあります。それは価格とデバイス対応度。月額1,750円(税別)で、くだんのJリーグはもちろん、海外の野球やサッカー、総合格闘技などが見放題になるので、「あらゆるスポーツをくまなく見たい。しかも1ストップで」となると、そのコストパフォーマンスたるや恐ろしいレベル。ましてやドコモ携帯電話利用者向けには月額980円(税別)の割安プランも用意されています。
そしてデバイスの対応度です。地上波や衛星による放送もないので、積極的にテレビ対応を進めています。Amazonのテレビ向け端末「Fire TV」シリーズを購入し、その上でDAZNアプリを利用したり、Curomecastで見るのもOK。今後はPS4やApple TVもサポート予定とのこと。
筆者はたまたまAndroid TVを持っていたので、こちらのアプリでもDAZNを視聴してみました。平日の昼でもアメリカのMLBはやっているし、夜になればなったで今度は国内の野球。「ライブコンテンツ」を求めている人に、これほど向いているサービスはないでしょう。視聴の安定性についても特に不安はなし。なお、筆者宅では光ファイバー回線を引いており、Android TVも有線接続しています。
ただ、自転車ファン観点ではそれでもまだ不満。ライブが相対的に少ないのは当然としても、やはり日本語実況は欲しい。なお、4月19日時点では「ドワルス・ドール・フラーンデレン」、「ヘント~ウェヴェルヘム」、「ボルタ・ア・カタルーニャ(全7レース)」が見逃し配信対象となっていました(ミラノ~サンレモは配信期限切れとなった模様)。少なくともこのうち「ボルタ・ア・カタルーニャ」はJ SPORTSで見た記憶のないレースですので、その点では大変有り難く、意義深いです。
DAZNへの完全乗り換えはムリ。'17年はDAZNとJ SPORTSオンデマンドの二刀流で
まとめると、日本でのロードレース中継は、J SPORTSとDAZNで分け合っているのが実情。ですので、どちらか1つに契約を絞る、あるいは乗り換えるというのはムリな話です。
ただ、幸いなことにDAZNとJ SPORTSオンデマンドのどちらも「契約期間の縛り」が最低1カ月のため、見たいレースに応じてこまめに加入・解約・再加入できます。
参考までに、筆者個人の予定ですが、5月は必ずDAZNを契約します。実況に不安はあれど、それでもやっぱりジロでの熾烈な山岳バトルを見逃すわけにはいきません。対して、J SPORTSでは5月に「ツアー・オブ・カリフォルニア」の配信が予定されています。こちらは1週間程度のレースですが、アメリカ開催のため、ライブ配信が朝方のとんでもない時間に行なわれるのが辛い。申し訳ないけれど、5月のJ SPORTSは回避しようかと……。
6月以降については両社まだ未定の部分が多いようです。「ツール・ド・スイス」が好き(景観がサイコー)なので、DAZNでやってくれるといいんですが。
そして7月。自転車ロードレースにちょっとでも興味がある方なら、いや仮になくても、ぜひ「ツール・ド・フランス」をご覧いただきたい! 今年は7月1日スタートし、23日に閉幕の予定。今のところJ SPORTSでの放送が確定的のようです。このままいけば、J SPORTSオンデマンドの1カ月分の料金で全編楽しめます。レース開催日は21時から24時半くらいまで、画面の前に釘付けになることでしょう。
配信が長時間の日もありますが、必ずしもずっとテレビの前にいる必要はありません。J SPORTSオンデマンドならスマホ対応ですから、画質設定を低くすれば、パケットを節約しつつ、会社からの帰宅中に電車の中で中継を見られます。残業が多い、あるいは飲み歩いてばかり……という方も大丈夫かと?!
DAZNの登場は、私のような自転車ロードレースファンを動揺させたのは事実です。ただ、中継レース数の増加といったメリットも今後出てくるかもしれません。そして、重ねてお願いしたいのは日本語実況体制の整備と、そして「確実に放送するかどうかという情報の開示」。様々な事情があるにせよ、直前になって「やっぱり放送しません」はファンにとって辛すぎます。
そんな願いが通じたのか!?、4月27日にDAZNをチェックしたところ、ジロ・デ・イタリアの配信ページが登場。さらにそこには「日本語実況・解説あり」の文字がありました!!
もう1つの明るい兆しは、J SPORTSの中継でお馴染みの「実況担当者」が、DAZNの他ジャンル番組ですでに出演していること。具体的にはF1レースでサッシャ、ラグビーで谷口廣明、サッカーで永田実の3氏が出演していました。せめてこの方々だけでも、自転車ロードレース中継にスライド出演していただければ……そう願わずにはいられません。引き続きJ SPORTSを楽しみつつ、DAZNの今後にも注目していきます。
【5月8日編集部追記】その後、DAZNでの「ジロ・デ・イタリア」は実況・解説付きで配信がスタートしました。5月9日~13日分の実況解説メンバー情報は5月8日掲載の記事を御覧ください。