レビュー

楽天は、NBA配信の定番になる!? 月額972円で週9試合、リーグパスと違いも

 米プロバスケットボールNBAの2017-18シーズンが、10月18日から開幕した。日本でも待ち望んでいたファンが多い中、今年は楽天がNBAを国内独占配信することが決定。映像配信サービス「Rakuten TV」内に、NBAを月額972円(税込)で週9試合観られる新プランが登場した。従来の配信/放送とはどう違うのか、新しいサービスに加入してみた。

楽天が低料金プランでNBA配信。以前の方法では観られないことも?

 開幕前のオフシーズン中には、今年も様々な大型トレードが発表された。アイザイア・トーマスとカイリー・アービングが入れ替わったセルティックスとキャバリアーズをはじめ、クリス・ポールが加入したロケッツ、カーメロ・アンソニー&ポール・ジョージを加えて新“ビッグ3”が誕生したサンダーなど、一躍注目されるようになったチームも少なくない。開幕から約1カ月が経ち、順調にスタートダッシュを切ったチームもあれば、まだ連携の構築が必要なチームもあるようだが、今年も見どころがたくさんあることは確かだ。

 そんなNBAの試合映像を日本で観るには、これまでもいくつか方法があったが、主にテレビではBSのWOWOWが多くの試合を扱い、NHK BS1や、CSのフジテレビNEXTでも一部の試合が放送されていた。

 また、ネット配信では、NBA公式の「NBA LEAGUE PASS(リーグパス)」に加入すれば、年間スマホやタブレット、PCなどで全ての試合が観られるほか、スポーツ配信の「DAZN(ダ・ゾーン)」でも一部の試合を視聴できたというのが、昨シーズンまでの形。

 各配信サービスの料金については、リーグパスで全試合観るプランを選んだ場合、加入するタイミングや決済する端末などで変動はあったものの、昨年5月時点の料金は月額3,000円前後だった。試合数が限られていたDAZNは月額1,750円で、ドコモ契約者であれば月額980円。

 そうした中、2017-18シーズン開幕直前の10月10日に発表されたのが、楽天による映像配信サービスRakuten TV(旧:楽天ShowTime)での、NBAの国内独占配信の契約締結。月額972円(税込)で、週9試合(平日1日1試合、週末1日2試合)、年間200試合以上を、ライブ中継およびオンデマンドで視聴できる。

 なお、「週9試合」はユーザーが好きなチーム/試合を選べるのではなく、Rakuten TV側でセレクトされた試合となる。音声は日本語実況/解説付き。

Rakuten TVのNBA特集ページ
Rakuten TVのスマホアプリ(iOS版)

 低価格な料金で多くの試合が観られるプランの登場と、リーグパスにはなかった日本語音声付きなどは便利だが、「日本国内におけるNBAの独占的な放映・配信パートナー」という内容を見ると「これまでの方法で観られなくなるのでは? 」と不安に感じた人もいるだろう。特にNHK BS1だけで観ていた人は無料(NHKの衛星契約料金を除く)だったので、状況は一変したといえる。

 今回の楽天の発表は、間もなくシーズン開幕という時期だっただけに、筆者も気になって楽天に質問したが、10月10日の発表時点では楽天以外の配信や放送に関する内容は「交渉中」とされ、WOWOWなどのサイトでは、放送スケジュールが明かされていない状態だった。

 その後、開幕前日の17日に、WOWOWがNBAの放送を決定したと発表。ネット配信の「WOWOWメンバーズオンデマンド」では視聴できないものの、開幕にはギリギリ間に合った形だ。しかし、BS1やフジテレビNEXT、DAZNでは現時点でもスケジュールが出ておらず、放送されていない。

 改めて'17年11月時点の状況をまとめると、視聴方法は、下の3つの方法に絞られる。WOWOWは当然NBA以外にも映画やライブ、他のスポーツを含め多くのコンテンツが観られるため単純に料金だけで比較できないが、参考としていただきたい。

NBA 2017-18シーズンの視聴方法(料金は税込み)

【配信】
・Rakuten TV(週9試合/月額972円)
・NBAリーグパス(全試合/好きな1チーム全試合/月8試合の3つのプラン、月額940円~2,400円、年契約もあり)
【放送】
・WOWOW(週4試合/月額2,484円)

 筆者は昨シーズンまで、主にNBAリーグパスとBS1を併用して視聴していた。低価格で始まったRakuten TVがどんなサービスなのか、加入してみた。

安心の日本語解説と高画質、便利なスキップ機能。マニアには物足りないかも?

 視聴契約にはPCまたはスマホのWebブラウザを利用。スマホのRakuten TVアプリも用意されているが、NBAのプランをアプリでは購入できないようだ。Rakuten TVのWebサイトトップ画面に新たに加わった「Rakuten NBA Special」のメニューを選び、月額972円のプランを選択。決済はクレジットカード/ドコモケータイ払い/auかんたん決済/ソフトバンクまとめて支払いに対応する。なお、楽天会員手続きが必要となる。

PCのWebブラウザでの購入画面

 最大で全試合視聴できるNBA公式のリーグパスへ加入したい場合も、Rakuten TVの画面から専用ページへ移動することで、契約可能となる。リーグパスの料金プラン(税込)は、全試合視聴(月額2,400円/年額22,000円)のほか、好きな1チームの全試合(月額1,300円/年額14,000円)、1カ月8試合選択(月額940円/年額9,300円)、という方法が用意されている。

各料金プランの比較

 Rakuten TVで視聴できる端末は、PC、スマートフォン、タブレット(iOS/Android)のアプリのほか、Chromecast、VIERA、BRAVIA、Wii U、Xbox Oneも対応している。今回はiPhone 6sやiPad Pro 9.7インチ、ChromecastとHDMI接続したテレビで視聴した。

Chromecastなどを使ってテレビでも視聴可能

 配信映像は、現地からの「LIVE」と、終了後に観られる「VOD」が用意され、一定期間が経過すると、1分~3分の「ハイライト」が残される形となっている。このほかにも、過去の名シーンやミニムービーなどの「アーカイブ」映像も用意されている。

 日米の時差のため、ライブは試合開始が日本時間の朝8時~11時など、会社勤めの人は平日は観づらい時間帯が多い。ただ、ライブ配信した日にVODが帰宅後でもすぐ観られるので、ネットやスポーツニュースなどで勝敗を先に知ってしまう心配も少なそうだ。週末は2試合配信されているので、休みの人はライブでもVODでもじっくり観られるだろう。

 気になる配信カードについて、今の注目チームといえば、昨シーズン優勝のゴールデンステイト・ウォリアーズと、決勝を戦ったクリーブランド・キャバリアーズ。配信カードを見た印象では、それら2チームの試合を多めに扱いつつも、主力が大きく変わった注目のボストン・セルティックスや、ヒューストン・ロケッツ、オクラホマシティ・サンダーなどのゲームもしっかり押さえている。

 楽天は今年から、ウォリアーズと「ユニフォーム・パートナー」契約を結び、ユニフォームに楽天のRロゴが付くようになったが、その試合が極端に多いということもなさそううだ。もっとも、現状で世界一といってもいい人気チームなので、試合数が多いことには、あまり不満は出ないだろう。

配信カードの一例

 配信画質は、自動/低/中/高/HDから切り替え可能。スマホやタブレットなど10インチ以下の画面で見る限りでは、HDでなくても十分な画質だが、テレビの大画面で視聴する場合は、HDを選びたい。選手の表情や、汗をどれくらいかいているかなどがしっかりわかり、選手の調子を知る手がかりにもなるからだ。HDならリーグパスより高画質で、以前のBS1と比べてもそん色はない。

配信画質選択

 既存サービスのリーグパスと比べて大きな利点と思えたのが、VOD視聴時のスキップが10秒/60秒から選べること。リーグパスは30秒単位なので、直前のワンプレイだけ見返したい時などは、30秒だと多く戻りすぎて不満に思っていたので、10秒単位だとかなり快適。Chromecastを使ってテレビで観ているときも、スマホやタブレットをリモコンのように操作できる。

 また、音声付きの早見再生も1.2~2.0倍で調整可能。タイムアウト中に会場で披露されるショーの時間など、以前BS1をテレビ録画していた時はリモコンで早送りしていたシーンを、スマホでも同じような感覚で飛ばし見できるのは、筆者のようなせっかちな人にもうれしい。

スマホでの視聴画面(縦画面時)

 Rakuten TVの解説陣を見ると、北原憲彦氏や、倉石平氏、河内敏光氏など、NHK BS1でもおなじみだった方々がそのままRakuten TVで担当しているようだ。さらに、元日本代表で、かつて熊谷組やアイシンシーホース(現在のシーホース三河)などで活躍した外山英明氏らも加わっている。

 日本語音声があることは、試合内容を正確に把握するうえで便利。ただ、既存サービスであるリーグパス(やBS1など)とは違って音声選択はできないので、現地放送の英語実況/解説を聞きたい人も選べない点は注意したい。試合を観ていると、レジー・ミラーやクリス・ウェバーといった、往年の名選手が解説席に映っていることがあるが、彼らの声はRakuten TVでは聴けない。

 一方でリーグパスの英語実況と解説は、ホーム/アウェイのどちらの放送局の音声を聴くかも選択できるのも特徴。現地のアナウンサーや解説者は、人によっては審判のジャッジに反対するような自由すぎる発言をしたり、地元チーム視点だったりと、日本の放送とは違う感覚で聞けるのが面白い。

 Rakuten TVでも現地放送のライブ感を味わえるように、できれば英語も選べるようにしてほしい。英語が少し分からなかったとしても、独特の言い回し(3ポイントシュートは“Down town”など)を含め、よりNBAをライブで観戦している気分になれるはずだ。

 ただ、Rakuten TVでの配信をきっかけに、今まであまり機会がなかった日本の解説者の意見も多く聞けるようになったのも事実。個人的には、歯に衣着せない語り口の東英樹氏の解説が、今回の配信をきっかけに好きになった。

 なお、一般的なスポーツのテレビ中継とは違って、試合終了後に全体のハイライトシーン集や、試合のスコア/個人成績、終了後のチーム順位などを表示するような時間は番組内に用意されていない。これはリーグパスの映像も同様だが、試合時間が終わると、簡単な総括だけですぐ配信が終わる。少々アッサリしすぎとも思えるが、ハイライトは後から別の動画として掲載されるほか、詳細なスコアはNBAの公式アプリから見られるので、これらを合わせて利用するとよさそうだ。なお、ハイライト動画や、過去の名試合などを短くまとめたアーカイブ映像の音声は英語だ。

Rakuten TVとリーグパスの併用もあり?

 Rakuten TVは、あらかじめセレクトされた対戦カードに限られるものの、週9試合あれば多くのチームが観られるので、「観たい試合がなかなか配信されない」という心配も少ない。また、特にひいきのチームがなかったり、バスケに最近興味を持った人でも、注目の対戦はかなりカバーされているのでおすすめできる。

 一方で、好きなチームが決まっていて、観たい試合だけを存分に楽しみたい人や、できるだけ全試合を観たい人にとっては、これまで通り「リーグパス」が最善の選択となる。好きなチーム数が多い人は、より料金の高いプランを選べば、その分満足できる形だ。

 今回は詳しく紹介していないが、WOWOWについても、週4試合という数は決して少なくはないし、オールスターや、プレイオフなどに合わせて特別番組が充実しているのも魅力。選手インタビューなど、WOWOWだけの映像があるのも特徴だ。関連番組にはNBA好き芸能人も多数登場し、初めてNBAを観る人も長年楽しんでいる人にも便利な、安定のサービスといえる。

 筆者は約1カ月ほどRakuten TVを利用した結論として、これからも継続加入したうえで、NBAリーグパスで1カ月に8試合まで観られる月額940円のプラン「GAME CHOICE」も併用することにした。Rakuten TVの配信カードに不満はないが、個人的な注目選手がいるバックス、ニックス、グリズリーズ、ペリカンズの試合がRakuten TVで配信されていなかった場合は、リーグパスで補おうと思っている。

リーグパスで月額940円のGAME CHOICEプランを追加で加入した

 1週間に9試合、1カ月だと30試合以上観られるRakuten TVの配信数は、全部を観ようと思っても見逃してしまうほどで、これだけでもほとんどのNBAファンにとって満足できるボリューム。これから2018年2月にロサンゼルスで行なわれるオールスターや、シーズン終盤戦に向けて、注目するチームや選手が増えたら、筆者のようにリーグパスを追加で契約したり、いっそのこと全試合視聴のプランに切り替える、という手もあるだろう。