レビュー

リビングが映画館! 家族も実感したAtmosと重低音、Polk Audio「Signa S4」

Polk Audio「Signa S4」をリビングに置いてみた

すっかり子供たちに取られてしまった筆者宅のリビングのテレビ。なんとか隙をついて我々大人もテレビ番組やネット動画を見たり、ゲームで遊んだりしているのだが、そのたびになんとなく物足りなさを感じることがあった。サウンドだ。テレビ周りをスッキリさせたかったので、しばらく前に外部スピーカーやらアンプやらを取っ払ってしまったのだが、やっぱり音が寂しいと満足感が減るし、テレビを見るモチベーションも下がる。

理想的にはスピーカーをたくさん置いて本格的なサラウンドシステムを組み上げたい。でも、費用がかさむうえに配線も大変そう。それに、なんといっても家族が黙っちゃいない。せっかくスッキリさせたリビングをまたオーディオ機器で埋めつくそうものなら、小言の1つや2つや3つ以上は確実にいただくことになってしまうのだ。個人的にはオーディオ機器に埋めつくされたいんだけど……。

家族も納得のすっきりリビングを維持したまま、テレビのサウンドクオリティをアップさせるにはどうしたらいいか。それには、手軽に導入できるサウンドバーがぴったりだろう。今やサウンドバーの選択肢は無数にあるが、最近ちょっと気になる製品がある。Polk Audioの「Signa S4」というモデルだ。サブウーファー付きで、しかもDolby ATMOS対応ながら、価格は比較的リーズナブルな実売5万円以下。我が家のリビング環境維持と音質アップの両立にちょうど良さそうだ。

老舗メーカーのサウンドバー第3弾はATMOS対応でサブウーファー付き

あまり耳なじみがないかもしれないPolk Audio(ポークオーディオ)という名前だが、創立は1972年、つまり50年も前に米国で誕生した老舗オーディオメーカーだ。「ライブの臨場感を家庭に」というビジョンを掲げて事業をスタートした同社の製品は、音質を追求する一方で、それを購入しやすい価格で実現する事にも注力しており、その結果、リーズナブルながらも高音質なスピーカーとして長く米国などで人気を博してきた。

数年前から日本市場にも参入し、サウンドバーでは、バースピーカー単体の「REACT」と、今回の製品の下位モデルとなるサブウーファー付きの「Signa S3」の2モデルを投入している。

そして、このPolk Audio、実はデノンやマランツと同じディーアンドエムホールディングスのグループ会社でもある。海外ブランドの製品ではあるが、技術や品質、サポート面でも安心感がある。コスパの良さと同時に、そこも気になっていた理由だ。

そんな同社のサウンドバー第3弾となる「Signa S4」は、サウンドバー本体とワイヤレスタイプのサブウーファーがセットになったもの。立体的な音響を実現するDolby ATMOS対応の3.1.2chシステムだ。

サウンドバー本体には、左右およびセンターのスピーカーユニットに加え、天面に2つのDolby ATMOSイネーブルドスピーカーを上向きに内蔵。これに、サウンドバー単体ではカバーしにくい低音を再生するための別体サブウーファーがセットになっている。

サウンドバーとサブウーファーがセットになった「Signa S4」
本体側のボタンで各種操作が可能
コンパクトながらもやや幅広で持ちやすいリモコンも付属する
サブウーファーは底面側にユニットが取り付けられたバスレフ型

サウンドのクオリティ、迫力を高めるという意味では、サブウーファーは大事。そしてイネーブルドスピーカーはもっと大事だ。頭上からの音も再生し、3次元的なサウンドを再現するDolby ATMOSは、ホームシアターで再現しようとすると天井にスピーカーを取り付けることになるが、日本の多くの家庭でそこまでのオーディオ環境を整えるのは難しい。筆者宅ももちろんそう。

でも、このイネーブルドスピーカーがあることで、天井に反射させて“頭上からの音”を再現し、本格的なシアター環境に近い立体音響を作り出せる。手間もコストもかけずに容易に臨場感をアップできるのだ。

最初に耳にしたテレビCMの音で「ウッ!」ときた

そんなわけで、自宅に届いた「Signa S4」をさっそく設置してみる。といっても、セットアップは簡単だ。サウンドバー側にはARC/eARC対応のHDMI端子があるので、テレビ側のARC/eARC対応のHDMI端子と接続する。テレビにHDMI端子がない(または他の機器で埋まっている)場合は、光デジタルやAUX(アナログ3.5mm)での接続もOKだ。

あとは電源ケーブルを接続するだけ。テレビ側でオーディオ関連の設定が必要になる場合もあるが、そのあたりはテレビのマニュアルを見ながら作業すれば間違うことはないだろう。

背面にあるARC/eARC対応のHDMI端子からテレビに接続する
筆者宅のテレビでは、接続後にサウンド出力を「オーディオシステム」に変更する必要があった

この設置時にうれしかったのが、サブウーファーがワイヤレスであること。電源ケーブルは当然接続する必要があるけれども、サウンドバー本体とサブウーファーの間はケーブル接続が不要だ。なんらかの設定をすることもなく、勝手に無線でつながって連動してくれる。ケーブルたった1本の差だとしても、配線が少なければその分セットアップで迷うことがなくなるし、見た目もすっきりするわけで、いいことだらけだ。

ご覧の通り、サウンドバー本体とサブウーファーの間にはケーブルがつながっていない

サウンドバーの筐体幅は1,046mmと、1メートル超えなのでそこそこ大きい。けれど、高さは60mm、奥行きは95mmのスリムな作りで、設置してみるとスペースをとっている感じはしない。Signa S4は壁掛けにも対応するが、今回我が家では、リビングのテレビ下に手作りのラックを用意して、そこに置くことにした。目立たず、わりとスタイリッシュに設置できたのではないだろうか。

なかなかシンプルかつすっきり設置できたように思う
横の長さはあるが、高さ60mm、奥行き95mmというスリムさがポイント

と思っていたら、妻からも「おしゃれでいいじゃん。これがいい、このままでいこう」とお褒めの言葉。まさかこんなあっさりとお許しが出るとは! でもこれ、お借りしているスピーカーなんで……と言うと、あからさまに不機嫌になった。難しいなファミリー。ただ、Signa S4が家族に受け入れてもらえやすい見た目であることがわかったたけでも、まずは大きな収穫だ。

そして、いよいよ電源オン。最初にSigna S4から流れてきたのはテレビCMの音だったのだが、その一発目から「ウッ!」と声に出てしまった。なんとなく発作的に「映画館で流れるCMみたい」と思ってしまったのだ。全体のサウンドクオリティは明らかにアップしている。特に低音の出方は、当然ではあるけれども、テレビ内蔵スピーカーとは比べものにならない。

さすがは別体のサブウーファー。低音が明らかに違う

テレビの音ってこんなに良かったっけ? と感じるほどの変わりよう。サブウーファーがあるおかげで、どちらかというと低音が強調される傾向にあるけれど、だからといって他の音域がぼやけているようなことはない。ドンとした低音があるところに、中音域以上のパリッとした聞き取りやすい音源が自然にミックスされているような感じだ。

Signa S4付属リモコンの「BASS」ボタンを押せば、低音の強調度合いを8段階で調整できる。テレビ番組だと2、または3段階目くらいで十分な迫力だ。また、リモコンの最下段には「Voice Adjust」機能の「1~3」のボタンが設けられている。多くのシーンは「1」で問題ないが、テレビのナレーションなどを聞き取りやすくしたい時は「2」や「3」に切り替えるのがおすすめだ。

ボリューム調整の右にある「BASS」ボタンで低音の強調度合いを調整可能。一番下にあるのが「Voice Adjust」機能のボタン
本体前面のLEDでBASSやボリュームの現在の大きさがわかる

ちょうど生放送していた高校野球の実況中継で、この「Voice Adjust」の効果がよくわかった。「1」ではアナウンサーの声が球場の歓声に埋もれがちだけれど、「2」や「3」にすることで、アナウンサーの声だけがぐっと明瞭になる。テレビ画面を注視できず試合状況を耳で把握したいときにも、この機能はなかなか便利だ。

物語に入り込んだかのような臨場感と、音の距離感。Bluetoothスピーカーにもなる

テレビ番組でこれだけ迫力があり、クリアな音を響かせているSigna S4だ。定額動画配信サービスでDolby ATMOSの映画を見たらどんなことになるのだろう……。はやる気持ちを抑えつつ、テレビでNetflixにアクセス。

リモコンには「映画モード」「音楽モード」のほか、寝静まった夜間に聞き取りやすさを保ったまま音量を低減する「ナイトモード」という3種類のサウンドモードの切り替えボタンがあるので、とりあえず「映画」にしておく。

ちなみにNetflixでは「プレミアム」プランに加入していないとDolby ATMOSで再生できないので注意しておきたい。現在再生している音声フォーマットが何なのかは、サウンドバー前面のLEDの色で確認できる。たとえばDolby ATMOSで再生しているときは「青」、それ以外のサラウンドでは「緑」、通常のテレビ番組だと「オレンジ」など、といったように変化するので、把握は容易だ。

Netflixの場合は「プレミアム」プランに加入することでDolby ATMOSでの再生が可能になる
Dolby ATMOSで再生しているときは「青」で光る
5.1chなど他のサラウンド方式で再生しているときは「緑」
通常の地上デジタルの音声は「オレンジ」(AAC)となった

そんなわけで実際にDolby ATMOSのコンテンツを再生してみた。始まったとたん、やっぱり映画館で鑑賞しているかのような迫り来る音。サブウーファーの低音は床を震わせ、サウンドバーからの音は部屋全体に広がる。

例を挙げると、Dolby ATMOS対応のNetflixオリジナル作品「スノーピアサー」は列車の中で物語が進行するが、上下左右から音に包まれ、まさしく騒々しい走行中の車両に乗り合わせているかのような臨場感。他の作品では、反対にしんとした広い空間で物を落とした時の効果音に前後方向の遠近が感じられ、映像のなかの距離感まではっきり伝わってくるようだった。

NetflixのDolby ATMOS対応作品は、重低音とともに、部屋全体に音が広がる

そして、ゲームで遊ぶ子供たちにとっても、音の変化は明らかだったらしい。ボスと対戦するシーンで重厚感のあるBGMになると、「なんか映画みたい」「本当にその場で戦ってるみたい」との無邪気なコメントが。Signa S4は、大人も子供も共通の感覚で捉えられる印象深い音作りをしているんだな、というのがよくわかる瞬間だった。

ゲームで遊ぶ子供たち。「映画みたい」という筆者と同じ感想が飛び出した
筆者も負けじとゲームをプレー。戦闘シーンでの緊張感が重低音でさらに増す

ちなみに、Signa S4はBlutoothスピーカーとしても使用可能だ。本体かリモコンのBluetoothボタンを押し、スマートフォンなどとペアリングすれば準備完了。ミュージックプレーヤーなどで音楽を再生しているときにリモコンの「音楽モード」ボタンを押すと音像定位がピタッと定まって、やや低音増し気味で聴かせてくれる。

とはいっても、「BASS」を控え目にしておけば極端に低音が強調されることはないし、中音・高音域もナチュラルな聞き心地だから、どのジャンルの曲もそつなくこなしてくれる。個人的にはどちらかというと、ジャズやポップスなどノリのいい楽曲との相性がいいのかな、という印象を受けた。

Bluetoothボタンをポチッと押せば、すぐに通常のBluetoothスピーカーとして使える

音量調整、電源オンオフはテレビ標準リモコンで。家族も違和感なく使える

HDMI ARC/eARCでテレビに接続している場合は、今まで通りテレビの付属リモコンで、Signa S4の音量調整ができ、しかもテレビの電源に連動してSigna S4の電源も自動でオン/オフする。機械にあまり詳しくない家族にも、違和感なく使ってもらえるのはうれしいところだ。

リモコンが1つ増えるだけで混乱してしまう我が家にとっては、「今までと操作方法が変わらない」というのはけっこう大きなポイントで、それだけで家庭への導入ハードルが1段も2段も下がるものだったりする。

電源オン/オフや音量調整の操作は連動するので、普段はテレビのリモコン1つだけ使えばいい

立派なサブウーファーが付属するSigna S4は、低音重視のサウンドバーと捉えられるかもしれない。たしかに、「BASS」を強めにかければ身体を揺さぶるようなずっしり重い低音を響かせてくれる。一方で、抑えた設定にも自在に変えられるし、サウンドバー本体は中・高音域を繊細に再生してくれるので、普段のテレビ視聴で聞き疲れすることもない。

ゲームや映画ではドッカンと迫力を増してエンタメ全振りにしてもよし、音楽番組や音楽配信サービスを聴く時はバランスの良い、臨場感のある音で楽しんでもよし。これをサウンドバー1本+サブウーファーで味わえちゃうのは、なんだかすっごくお得な感じだ。

家族からのお許しも出やすい、Polk Audio「Signa S4」であった

(協力:ディーアンドエムホールディングス)

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。