レビュー

Shokz、ambie、LinkBuds。“ながら聴きイヤフォン”どれがいい?

OpenRun Pro、AM-TW01、LinkBudsを使い比べた

コロナ禍によって、ライフスタイルも大きく変化し、“ながら聴き”需要が旺盛な昨今。耳を塞がずに音楽を楽しめるヘッドフォン/イヤフォンとして、骨伝導ヘッドフォンのShokz(旧AfterShokz)や、イヤカフスタイルのambieの完全ワイヤレスイヤフォン「AM-TW01」が人気を博すなか、2月25日にソニーが新モデル「LinkBuds(WF-L900)」を発売して、市場がさらに活気を帯びてきた。

これらの製品にはどのような違いがあり、どれが一番使いやすいのか。Shokzの「OpenRun Pro」とAM-TW01、LinkBudsの3つを実際に使い比べてみた。

  • 骨伝導:「OpenRun Pro」実売23,880円前後
  • イヤカフ型:「AM-TW01」BLACKとWHITE 15,000円、それ以外16,000円
  • リング型:「LinkBuds」実売23,000円前後

スペックと外観をチェック

OpenRun Proと付属ポーチ

まずは各製品の特徴とスペックを簡単に紹介しよう。ShokzのOpenRun Proは、ブランド名称変更後の製品第一弾。2019年に登場したAeropexの後継機種として、2年半をかけて開発されたバンド一体型の骨伝導イヤフォンで、Shokz第9世代テクノロジーとなる新たな技術「Shokz TurboPitch」を搭載し、「これまで以上に深みを感じさせる重低音再生を実現した」という。

付属ポーチに収納したところ

ブランド史上最小級というコンパクトサイズも特徴で、IP55の防塵防水仕様。通話品質にもこだわり、デュアルノイズキャンセリング・マイクを搭載する。カラーはブラック、ブルー、ベージュ、ピンクの4色で、専用キャリングポーチが付属する。ポーチ自体は片手で持てるコンパクトサイズだが、今回比較する完全ワイヤレスのAM-TW01やLinkBudsのケースと比べると、どうしても大きくなる。

ambie AM-TW01

ambieのAM-TW01は、耳を塞がずに“ながら聴き”できるイヤフォンの代名詞的なブランドとなっているambie初の完全ワイヤレスイヤフォン。ひらがなの“つ”のような形状をしたイヤカフ型が特徴で、耳を挟むようにして装着する。ケースは幅広の楕円形。ボタン類などはなく、前面にLED、背面に充電用のUSB Type-Cポートを備える。

独特な形状のイヤフォン

今回取り上げる3モデルのなかで、もっともカラーバリエーションが豊富なのも特徴。BLACK、WHITE、蔦屋家電別注カラーのMist Skyに加え、2月にはCoral Red、Ash Green、Latteが追加され、合計6色展開となった。さらに着せ替えカバーの「socks」もWHITE、BLACK、Ash Green、Coral Red、Latte、Mist Skyの6色で展開。自分の好みに合わせてカラーを選ぶことができる。

LinkBuds

ソニーのLinkBudsは、中央に穴が空いた独自開発のリング型ドライバーを搭載した完全ワイヤレス。ドライバーをリング型にすることで、周囲のあらゆる音が自然に聴こえるほか、自分の声が籠もって聴こえない、咀嚼音が気にならない、耳穴が蒸れにくく、カナル型よりも負担がかからない、圧迫感が少ないといったメリットがあるとしている。

中心に穴が空いたリング型ドライバーが特徴

同社の完全ワイヤレス「WF-1000XM4」にも使われている統合プロセッサー「V1」を搭載し、クリアな高音質を実現。DSEEも搭載しており、圧縮音源もクリアに再現する。通話時にはAI技術を活用した高精度ボイスピックアップテクノロジーを利用できる。カラーはホワイトとグレーの2色で、店頭予想価格は23,000円前後。

ケースは丸みを帯びたコンパクトサイズ。前面に蓋の開閉ボタンとLEDインジケータ、背面にペアリング/初期化/リセットボタン、充電用のUSB Type-Cポートを備える。本体をケースの凹みに収納する仕組みだが、磁石だけで固定されるような仕組みでなく、カチッと音がするまで押し込む必要がある。

価格はOpenRun Proが実売23,880円前後、AM-TW01はBLACKとWHITEが15,000円、それ以外が16,000円。LinkBudsは実売23,000円前後。ちなみにAM-TW01のカバー「socks」は各1,900円。

3機種のポーチ/充電ケース。バンド型のOpenRun Proはポーチがどうしても大きくなる

装着感と操作感

OpenRun Proを装着したところ。耳への圧迫感・異物感は一切ない

OpenRun Proは耳の上から、かけるように装着するので、耳への圧迫感や異物感は一切ない。筆者の場合、使い始めは頭部に対するネックバンドの締めつけ感が少し気になったが、3~4日ほど使い続けていたら馴染んできたのか、程よいホールド感に。また耳の上をバンドが通る構造だが、マスクの着け外しなども違和感なく行なえた。

本体左側のマルチファンクションボタン
本体右側に+-ボタン、充電端子を装備

本体左側にはマルチファンクションボタンが用意されており、ここで再生・停止や着信応答、曲の早送りなどが操作できる。カチッと押し込めるボタン式なので、とっさの際も確実に操作が可能。本体右側には音量調整ボタンを備えており、+ボタンは電源ボタンも兼ねている。指で触って判別できるように+や-のエンボス加工が施されており、簡単に操作ができた。

AM-TW01を装着したところ。耳を挟むように装着する

AM-TW01も装着時に本体を耳穴に差し込まないため、一般的なイヤフォンを着けている感覚や圧迫感はないが、耳を挟まれている感覚はあるので、慣れるまでは違和感があるかもしれない。また装着していると、その構造上、マスクの耳掛け部分が本体に引っかかりやすい。筆者は外出中、ドリンクを飲もうとマスクを外した際、耳掛け部が引っかかった勢いで片側のイヤフォンが外れて飛んでいってしまい焦った経験がある。

AM-TW01を充電ケースにしまったところ

イヤフォン装着時の本体後ろ側にボタンを搭載しており、楽曲の再生・停止やスキップ・巻き戻しといった操作ができる。本体を包むように持って、親指でボタンを押すと操作がしやすかった。

LinkBudsを装着したところ。3製品のなかで、装着時の見た目は一般的なイヤフォンにもっとも近い

上記2製品に対して、LinkBudsは耳穴に嵌めるように装着するので、装着感はもっとも一般的なイヤフォンに近い。「イヤフォンを着けているのに、しっかり外の音が聞こえる」という体験は、リング型ドライバーを搭載するLinkBudsならではのものだが、OpenRun ProやAM-TW01と比べると、耳への圧迫感は強めに感じられる。

2~3日使っていると、充電ケース底の皮脂汚れが目立ってくる

筆者の体質もあるだろうが、使っていて気になったのは、本体とケースの皮脂汚れが目立つこと。2~3日使っていると、耳に差し込むリング部分と、そこが接する充電ケースの底がテカテカと光って汚れが目立ってくる。見た目にも気分がいいものではなく、衛生面からも、こまめにクリーニングしたほうがいいかもしれない。

操作はイヤフォンを直接触っても可能だが、ソニーのアプリ「Headphones Connect」からワイドエリアタップを有効にすると、タップを検出するエリアが頬と耳の間まで広がり、耳周りの顔を2回、または3回タップすることで、再生・一時停止、楽曲のスキップといった操作ができる。

具体的なタップ検出エリアについて、公式サイトには「耳たぶと中心窩の間、および耳珠(じじゅ)の上から耳たぶの下まで」と記されており、実際に試してみると、もみあげあたりを叩けば操作を認識してくれる。認識精度はかなり高いが、タップが遅いと検出されないことが多かったので、「トン、トン」ではなく「トトン」くらいの速さで操作するといい。また公式サイトには「咳や耳の周りのアクセサリーのつけ外しによって、正しく動作しない場合がある」とも記されており、実際に2~3回ほど、マスク着脱の動作が誤認識されて、楽曲再生が止まったり、曲送りされてしまった。

AM-TW01(手前)とLinkBuds(奥)を並べたところ
LinkBudsのケース(左)と、AM-TW01のケース(右)

ほかの2機種にない機能として、ユーザーが声を発すると自動で再生中の音楽を停止・消音する「スピーク・トゥ・チャット」も用意されており、こちらもアプリから有効にできる。コンビニやスーパーでの会計時や、自宅でも家族が急に話しかけてきた時に便利な機能で、アプリでは音楽再生を再開するまでの時間を「短い(約5秒)」「標準(約10秒)」「長い(約30秒)」「自動で終了しない」から選択できる。

このスピーク・トゥ・チャットについては、公式サイトで「まれに意図せずに歯磨き、電動歯ブラシ、電動マッサージ器、電動シェーバー、咳、鼻歌などの振動などに反応して起動することがある」と記されており、実際に咳払いや歯磨き中に反応したこともある。

また筆者は犬の散歩時にLinkBudsを着けることが多いのだが、例えば信号待ちの際の「待て」といった指示など、散歩中は犬に対して声をかけがち。先日も、突然立ち止まった愛犬に対して「ん、どうした?」と声をかけた際、スピーク・トゥ・チャット機能によって音楽再生が止まってしまい、なぜかちょっぴり悲しい気分になった。ちょっと大きめの独り言にも反応するので、現在は少し面倒ではあるが、適宜アプリから機能のオン・オフを切り替えて使っている。

さらにLinkBudsは接続性の不安定さも気になるポイントだった。筆者はiPhone 13 Proに金属製バンパーケースを装着しているため、これが接続性に影響している可能性もあるが、町中で使っていると、そこまで人が多くない場所でも頻繁に音が途切れてしまうことも。酷いときは一歩歩くごとにブツブツと音が途切れ、デニムパンツのポケットにしまっていたiPhoneを、上着のポケットや、シャツの胸ポケットに移してみても改善されないこともあった。ただ、同じ場所でも安定して接続されることもある。

音質やマイクもチェック

Ed Sheeran - Nancy Mulligan [Official Audio]

3機種をiPhone 13 Proと接続して、Apple Musicで音質をチェックしてみた。今回は最近お気に入りのエド・シーランがアイルランドのフォークバンド「Beoga」と組んで制作した「Nancy Mulligan」を聴いてみる。ヴァイオリンやアコーディオンなどアイリッシュ音楽のように軽やかなサウンドが特徴の1曲だ。

OpenRun Proで聴くと低域の迫力には物足りなさがあり、特徴的なヴァイオリンの響きも、もう少し抜けが欲しくなるが、音のバランスは良く、ボーカルもしっかり聴こえるので、気持ちよく音楽を楽しめる。

同じ楽曲をAM-TW01で聴くと、OpenRun Pro以上に低域と高域の鳴りは控えめ。その代わり中域がはっきりと聴こえ、ボーカルの押し出しが強め。高域は少し抜け気味でキツさはなく、低域も迫力や音の厚みといった部分はあまり感じられないが、長時間でも聴き疲れしにくい印象を受ける。ただ、OpenRun ProやLinkBudsと比べると音の解像感が低く感じられた。

LinkBudsでは、発表直後のミニレビューでも触れたように、開放型ならではの音場の広がりが心地いい。中高域もピーキーさを感じさせず綺麗に伸びる。またOpenRun ProやAM-TW01と比べると、音の解像感が1~2段ほど上がり、くっきりとしたサウンドに。低域も2製品と比べると量感が多めに感じられ、思わず音楽に没頭してしまうこともあった。

そのほかにも「イーグルス/ホテル・カリフォルニア」や、「レッド・ホット・チリ・ペッパー/Snow(Hey Oh)」、「Tate McRae/she's all i wanna be」、「Aimer/残響散歌」なども聴いてみたが、音の傾向は大きく変わらず、LinkBudsがもっとも高音質に感じられた。

昨今は、こういったイヤフォンでビデオ会議や通話をするシチュエーションも多いので、各製品のマイク性能もチェックしてみた。Windowsにプリインストールされているボイスレコーダーアプリを使って、音声を収録してみたので聴き比べてほしい。

マイクテスト

今回は空気清浄機やノートPCが稼働しているだけの比較的静かな室内(Apple Watchのノイズ測定アプリでは34dB前後)で録音したのだが、OpenRun Proだけ「コーッ」というノイズが目立つように感じられる。AM-TW01はノイズは拾っていないものの、音声は少しこもったような印象で、LinkBudsはこもりはないものの、少し高音域が刺さる、カリカリとした音声に感じられた。

なお、Windows 10ノートPCとBluetooth接続して、Google Meetでビデオ会議も試してみたが、AM-TW01はWindows側のボリュームを最大にしても通話音声がやや小さめに聴こえた。LinkBudsはボリューム70~80程度で音声を聞き取れたものの、3~4分に1回程度接続が不安定になることがあった。これに対してOpenRun ProはWindows側のボリューム50%で音量はかなり大きめ。接続も安定していて、今回の3機種のなかでは1番使いやすかった。

音質のLinkBuds、簡単装着のOpenRun Pro、コスパ良好のAM-TW01

今回3製品を使い込んでみて、筆者がもっとも気に入ったのはLinkBuds。音楽再生時の解像感は他の2製品を圧倒しており、ながら聴きだけでなく、息抜きのちょっとした音楽リスニングにも使用できる。スピーク・トゥ・チャットやワイドエリアタップといった操作面も優秀で、スーパーやコンビニへの買い物など、ちょっとした外出はもちろん、隣町へのショッピングなどでも使っている。

唯一の不満点は接続の不安定さ。iPhoneとの接続はもちろん、上述したようにWindowsノートPCとの接続時もBluetooth接続が安定しないこともあった。ただ、いつも接続が不安定なわけではなく、またそれでも使用したいと思うほど音質が高いこと、操作が快適なことなどが、気に入ったポイントだった。ながら聴きイヤフォンにも一定の音質や快適な操作性を求める人におすすめしたい。

LinkBudsは、今回の3製品でもっとも音の解像感が高く感じられた
OpenRun Pro

充電のために、いちいちケースに戻す必要がないOpenRun Proも使用回数は多め。LinkBudsほどではないが、音質も充分で、昼食の買い出しなど、ちょっとした外出時にサッと着けられるバンド型ならではの利便性も魅力。耳に一切負担なく装着でき、“ながら聴きイヤフォン”と聞いて想像する“耳に何も装着していないのに音楽が聴ける”という体験ができるのは、今回の3製品で唯一、このOpenRun Proだけだった。

これら2製品に対し、AM-TW01の使用回数はちょっと低め。筆者は普段radikoやYouTubeのラジオ配信など、音声コンテンツもよく聴くのでAM-TW01のサウンドも好みなのだが、2製品と比べると音の解像感が物足りないこと、マスク着け外し時にイヤフォンに引っかからないように注意しなくてはいけないことがネックで、特にLinkBudsを入手してから外出時に使うことはなくなってしまった。

ただマスクをしない自宅内では、OpenRun ProやLinkBudsを充電している間など、ピンポイントで使っている。3製品のなかで装着時の負担がもっとも少ない点やカラーバリエーションが多い点、価格も3製品のなかでもっともリーズナブルな点が特徴なので、ファッションや気分に合わせたカラーを選びたい人や、まずは“ながら聴きイヤフォン”を試したいという人に最適だろう。

酒井隆文