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ペア27,500円から“学生でも買える”にこだわるPolk Audioの50周年

Polk Audio

2020年に日本市場に再上陸し、ペアで27,500円からと、低価格ながらパワフルな低音が出せるブックシェルフスピーカー「MXT15」や、コストパフォーマンスの高いサウンドバーなどを展開している米Polk Audio。あまり知られていなかった、その歴史や製品へのこだわり、技術力をマスコミ向けにディーアンドエムホールディングスが解説した。

日本に再上陸してからまだ2年ほどだが、Polk Audioの創業は1972年、今年で50周年を迎える老舗スピーカーブランドでもある。今回の説明会も、50周年を記念して行なわれたものだ。

2人の青年が家のガレージでスタートさせた

遡ること、1971年。ジョージ・クロップファーとマット・ポークという2人の青年が、200ドルの貯金を使い、家のガレージでスピーカー作りを開始。翌72年にサンディ・グロスを加えた3人で、Polk Audioを設立する。

お金に余裕がない大学生が始めたブランドという事もあり、高価なパーツを買えない。そこで彼らは、様々なパーツや素材を試行錯誤する事から初め、“学生だった自分たちでも購入できるスピーカー”をテーマに開発を始める。彼らが掲げた「GREAT SOUND FOR ALL」(素晴らしい音を全ての人に)という言葉が、ブランドのあり方を端的に表現している。

1975年、大ヒットモデルが誕生する

その後、1975年にモニター7(正式名称はMODEL 7)と呼ばれるスピーカーが完成し、これが大ヒットモデルに。翌年のMODEL 10もさらにヒットし、1977年には組み立てラインを持てるようになり、生産性が大幅に向上。ラジオや路上看板などに広告を出すなどして知名度も上昇し、1986年には「米国で最も急成長した民間企業100社」にも選ばれ、NASDAQに株式公開。その後も成長を続け、2012年には米国トップシェアのスピーカーブランドへと成長した。日本での知名度はまだ低いが、米国ではコストパフォーマンスに優れたスピーカーブランドとして、広く知られている。

1977年には組み立てラインを持てるようになった
1986年には「米国で最も急成長した民間企業100社」にも選ばれ
2012年には米国トップシェアのスピーカーブランドへと成長

圧倒的な販売量と、 アフォーダブルへのこだわり

成長していくと、会社自体も変化していくものだが、Polk Audioの特徴は“ブランドの在り方を変えない”事と、それを実現する“圧倒的な販売量”にある。

Polk Audioはアフォーダブル(手ごろな価格)なスピーカー市場にひたすら注力しており、例えば日本で展開するシリーズでは最上位の「RESERVEシリーズ」も、ブックシェルフの「Reserve R100」はペアで77,000円と、10万円を切る。“GREAT SOUND FOR ALL”の理念を、トップシェアブランドになった後でも守っているわけだ。

各シリーズの代表的なモデルと、その価格は以下の通り。

  • MONITOR XTシリーズ
    ブックシェルフ「MXT15」ペア27,500円
    ブックシェルフ「MXT20」ペア38,500円
    フロア型「MXT60」1台33,000円
    フロア型「MXT70」1台49,500円
  • SIGNATURE ELITEシリーズ
    ブックシェルフ「ES15」ペア46,200円
    ブックシェルフ「ES20」ペア57,200円
    フロア型「ES50」1台48,400円
    フロア型「ES55」1台63,800円
    フロア型「ES60」1台82,500円
  • RESERVEシリーズ
    ブックシェルフ「R100」ペア77,000円
    ブックシェルフ「R200」ペア103,400円
    フロア型「R500」1台77,000円
    フロア型「R600」1台103,400円
    フロア型「R700」1台132,000円
Polk AudioのFrank Sterns社長

Frank Sterns社長は、ビデオメッセージの中で「Polk Audioも、今ではアメリカで最も愛されているスピーカーブランドのひとつになりました。しかし、Polk Audioの創業の理念は何も変わっていません。当時、学生だった彼らは、あまり余裕がありませんでした。そんな彼らは、自分たちが買える最高のスピーカーを作ることを目標に会社を立ち上げました。ブランドのタグラインであるGREAT SOUND FOR ALLは、そんなPolk Audioのもっとも重要なアイデンティティなのです」と語っている。

MONITOR XTシリーズで揃えた、Dolby Atmos対応シアター。これ全部で198,000円に収まる

一方で、単に“安いパーツを使って安いスピーカーを作っている”わけではないという。クラスを超えたグレードのパーツを使ってネットワークを構成したり、最も低価格なMONITOR XTシリーズでも、キャビネットには剛性が高いMDF材を採用。振動の測定分析も行ない、適切な内部補強も追加されている。

低価格なスピーカーでも、高価なパーツを使える秘密は、同社がアフォーダブルな市場だけに集中し、そこでトップクラスのシェアを獲得している事にある。米国の低価格なスピーカー市場の規模は、日本のそれとは“桁違い”の規模であり、当然、作るスピーカーの数も桁違いとなる。その結果、圧倒的な販売量によるコスト削減効果が得られ、高品位なパーツを、低価格なスピーカーに投入できるという。

MONITOR XTの上位シリーズ、SIGNATURE ELITEではMDF材の厚みをアップさせ、内部補強も追加、バッフルプレートも追加し、背面にはガスケットも装備。物量の投入により、ブックシェルフの「ES15」の重量は5.9gと、MONITOR XTシリーズのブックシェルフ「MXT15」の4.1kgよりも大幅に重くなっている。さらに、特許技術の「パワーポート」により、低域を効率的に放出・拡散する。

ブックシェルフスピーカーの重量比較
SIGNATURE ELITEではバッフルプレートも追加
背面にはガスケットも装備

上位シリーズの「RESERVE」では、ツイーターに1インチのピナクル・リング・ラジエーターを採用。高域エネルギーの拡散性を改善するウェーブガイドや、低歪の磁気回路を搭載。「ボイスコイルの裏側にも容積が結構あるため、下の周波数も楽に出るのが特徴。クロスバー周波数も低いところに設定できる」(D&Mのシニアサウンドマスター澤田龍一氏)という。

RESERVE
「R100」はペア77,000円
ツイーターに1インチのピナクル・リング・ラジエーター

ミッドレンジには、振動板に特殊な形状を持たせた「タービンコーン」を採用。振動板の分割共振を抑えるための工夫だが、澤田氏によれば作り方にも工夫があり、ポリプロピレンをコーンのネックから外側に向けて、放射状に射出成型していく。その際に、発泡剤を混ぜている。こうする事で、金型に触れている表と裏の表面はほとんど発泡できないが、内部では発泡し、構造としてはサンドイッチコーンのようになり、適度な内部損失が得られるという。

タービンコーン

バスレフポートにも工夫。ポートからは低音だけが出るのが理想だが、実際は中音域も一緒に出てしまう。それを抑えるために、円筒形の筒をポートに設置。筒の中に吸音材を入れ、小さな窓を配置し、余分に出てしまう700Hz近辺の音を抑えつつ、ポート自体の共振音も低減。一種のアブソーバーとして機能するという。Polk Audioではこれを「Xポート・テクノロジー」と名付け、RESERVEシリーズの全モデルに採用。

フロア型の「R600」、「R700」では、ポート形状で空気の流れをスムーズにしてノイズを抑える、特許技術「パワーポート」とXポートを組み合わせて、「パワーポート2.0」としている。

RESERVEシリーズのフロア型「R700」をひっくり返した、脚部
円筒形の筒をポートに設置しているのがわかる
筒には吸音材が入れられ、窓も開いている

コスト削減の工夫と柔軟さ

販売量の多さを武器とした量産効果によるコスト低減だけでなく、コストを下げる工夫もPolk Audioの特徴だという。

前述の通り、ピュア用スピーカーとしては、一番低価格な「MONITOR XT」、その上位機「Signature Elite」、最上位「Reserve」という3シリーズを展開しているが、例えばMONITOR XTから「MXT15」、Signature Eliteから「ES15」、Reserveから「R100」を選び、内蔵されているウーファーユニットを取り出して見比べてると、一番低価格なMXT15のウーファーが、何故か一番大きな磁気回路のマグネットを採用している。

左からMONITOR XT「MXT15」、Signature Elite「ES15」、Reserve「R100」のウーファーユニット
一番安いMONITOR XT「MXT15」のマグネットが一番大きい

D&Mのシニアサウンドマスター澤田龍一氏によれば、ここにPolk Audioの工夫があるという。当然の話だが、ドライバーユニットにとっては、各ユニットに最適な素材・形状の磁気回路を個別に作り、搭載するのが理想的だ。しかし、それでは部品がそのユニットだけの専用部品になってしまい、コストが上がる。

そこで、価格を抑えたMONITOR XTのユニットでは、専用部品を使わず、汎用のフェライトマグネットを複数使用。汎用品の中から、最適な種類や形状のものを選び、それを組み合わせて、コストを抑えたまま、必要な磁力を得ている。その結果、一番低価格なスピーカーの磁気回路が、一番大きいという見た目的な逆転現象が起きているというわけだ。

コストを抑える工夫はそれだけではない。先程、キャビネットに剛性を高める補強を施していると書いたが、ES15の筐体内部を覗き込むと、丸い木の板が補強材として使われている。実はこの板は、サブウーファーを作る時に、ユニットを入れるためにくり抜いた木材を、ブックシェルフの補強に流用しているそうだ。

キャビネットの中を見ると……
丸い板で補強されている
この板は、サブウーファーの開発時に余ったものを流用している

また、MONITOR XTシリーズはカラーがマット・ブラックのみというのも、コストを抑える工夫だ。

音作りの面でも、ユニークな特徴がある。Polk Audioは2017年に、デノンやマランツブランドでお馴染みのディーアンドエムホールディングスと統合。これまでは米国をメインに展開してきたが、2019年に欧州市場に参入、2020年に日本に再参入している。

2019年の欧州市場参入時、欧州市場からの要望を受けて、既に米国で発売していたSignatureシリーズをそのまま欧州にも展開するのではなく、欧州で好まれる傾向の音にネットワークなどをチューニング。“欧州向けバージョン”を作り、高い評価を得た。そして、その後のモデルでは、欧州からの要望も取り込んだカタチで、ワールドワイド向けモデルへと進化させている。市場のニーズを柔軟に取り入れる姿勢も、Polk Audioの強みのようだ。

2019年の欧州市場へ参入

ピュアオーディオ用スピーカーだけでなく、サウンドバーにも注力。Alexa搭載スマートサウンドバー「REACT」、Chromecast built-inでワイヤレスサブウーファーも付属する「Signa S3」、ワイヤレスサブウーファー付きでDolby Atmosにも対応した「Signa S4」をラインナップ。

こちらも、サブウーファーながら迫力の低音が味わえ、ナチュラルなサウンドが特徴。手軽にホームシアターが楽しめるモデルとして、人気を集めている。

上から「REACT」、「Signa S3」
「Signa S4」

テレビからPC部屋まで、サウンドバー3台を使い倒す。個性が光るPolk Audio

リビングが映画館! 家族も実感したAtmosと重低音、Polk Audio「Signa S4」

スピーカー購入でAudioQuestのケーブルプレゼント

50周年を記念し、Polk AudioのReserveシリーズ、またはSignature Eliteシリーズのフロアスタンディング・スピーカー、またはブックシェルフ・スピーカーを期間中に購入し、応募すると、全員にAudioQuestのスピーカーケーブルと、RCAケーブルをプレゼントするキャンペーンも実施中。

R700、R600、R500購入者には、スピーカーケーブル「Q2」3mペア/バナナプラグ仕様(26,400円相当)、RCAケーブル「Red River」1.5mペア(26,400円相当)をプレゼント。

R200、R100、ES60、ES55、ES50、ES20、ES15購入者には、スピーカーケーブル「Q2」3mペア/裸線仕様(8,100円相当)、RCAケーブル「Evergreen」1.5mペア(6,820円相当)がプレゼントされる。

対象購入期間は7月8日~9月30日、応募締切は10月11日23時59分まで。応募方法などの詳細は、Polk Audioのサイトを参照のこと。