レビュー

テレビからPC部屋まで、サウンドバー3台を使い倒す。個性が光るPolk Audio

Polk Audioのサウンドバー3機種、おすすめの使い道は?

お手軽にオーディオ環境をアップグレードできるサウンドバー。米国の老舗オーディオメーカーであるPolk Audioも、そんなサウンドバーを日本市場に3機種投入している。

以前、最上位モデルである「Signa S4」(実売約50,000円)を筆者の自宅で体験したが、そのときの感想は「まるでリビングが映画館のようになってしまった」というものだった。普段聞いているテレビ内蔵スピーカーとの違いは(当たり前だが)明らかで、筆者だけでなく、家族にもその迫力や音質の高さが伝わったようだ。

リビングが映画館! 家族も実感したAtmosと重低音、Polk Audio「Signa S4」

すっかりサウンドバー好きになった我が家だが、そうなると気になるのが「Signa S3」(実売約28,000円)と「REACT」(実売約22,000円)という他の2機種。Polk Audioのサウンドバーはリーズナブルな価格設定であることも特徴だが、それでも「Signa S4」は実売約5万円とまあまあいいお値段。もっとお手頃な価格で、またはサブウーファー無しの省スペースでPolk Audioのクオリティを堪能したい、という人に向けて「Signa S3」や「REACT」が用意されている。そこで、この3機種を実際に家で使い比べ、それぞれがどれほどのパフォーマンスを秘め、どんな使い方に向いているのか、確かめてみることにした。

Signa S4
Signa S3
REACT

重低音が特徴だが、豊富な音質調整機能でオールラウンドに使える

まだ、日本で知名度が高くないPolk Audioだが、50年という長い歴史をもつ老舗オーディオメーカー。米国ではそのコストパフォーマンスが人気で、パッシブスピーカー市場では20年近くシェアナンバーワン争いを繰り広げている。

また、デノンやマランツと同じディーアンドエムホールディングスのグループ会社でもあるため、サポートや保証などの面でも不安なく使える、という点もうれしいところ。サウンドバーの音の傾向としては、基本的には低音重視でありながら、輪郭のくっきりしたキレのいいサウンドを奏でてくれる。

Polk Audioのサウンドバーはどちらかというと低音重視だが、輪郭のくっきりしたまとまりのいい音を奏でる

なので、映画やゲームを迫力マシマシで体感するのにぴったり。音質調整の機能も豊富で、ジャンルを問わないオールラウンドな使い方もできる。

例えば、低音の強調度合いを調整できるのはもちろんのこと、ジャンルやシチュエーションに応じて切り替えられる3つ、または4つの「サウンドモード」を用意している。ダイナミックな音の広がりや重厚さを実感できる映画モード、低音から繊細な高音までしっかり再現する音楽モード、聞き取りやすい実況音声とリアリティのある歓声を演出するスポーツモード(REACTのみ)がある。音の響きを抑えて、寝静まった夜でも隣の部屋や隣家を気にせず使えるようにする「ナイトモード」も便利だ。

数段階で調整可能な「Voice Adjust」機能では、音声の聞き取りやすさを変えられる。テレビ・ラジオ番組のトーク、スポーツ中継の実況・解説など、周囲の音にかき消されがちな声を明瞭にしてくれるため、音量をむやみに大きくしたり、サウンドバーに近づいて聞いたりすることなく、耳や脳への負担を軽減しながらサウンドを楽しめるのだ。

下部に2段で並ぶボタンのうち、上段がサウンドモードの切り替え、下段がVoice Adjustの調整

テレビとの接続は、3機種共通でARC(オーディオ・リターン・チャンネル)対応のHDMI入力と光デジタル入力が使える。Signa S3とSigna S4はAUX(アナログ3.5mm)も装備していて、さまざまなオーディオ機器との接続が可能だ。

さらには3機種ともケーブル接続だけでなくBluetoothによるワイヤレス接続も可能で、つまりはBluetoothスピーカーとしても利用できる。

「Signa S4」の背面インターフェース。HDMI入力と光デジタル入力は3機種共通、AUXは「Signa S3/S4」の2機種が装備

操作方法は付属リモコン、もしくはサウンドバー本体に設けられたコントロールボタンを使う。ただ、テレビとHDMI接続している場合は、テレビのリモコン操作でサウンドバーの音量を調整でき、テレビの電源オン/オフに連動してサウンドバーの電源も切り替わるので、リモコンを常に2つ操らなければならない、といったような面倒ごとは一切ない。

「Signa S4」本体のボタン。基本的な操作はこれらのボタンかリモコンで行なう
テレビリモコンでも音量調整でき、テレビの電源オンオフとも連動する

リビングの大画面と一緒に使いたいシアタークオリティの「Signa S4」

このように、機能的にはいくつか共通点のあるPolk Audioのサウンドバーだが、1機種ずつ見ていくと、それぞれに個性があってなかなか面白い。

最上位の「Signa S4」は3.1.2chシステムということで、リアルな音場を再現するサラウンドサウンドが強み。サウンドバー本体に左右およびセンターのスピーカーユニットと、2つのDolby Atmosイネーブルドスピーカーを内蔵。加えて低音を担当する別体サブウーファー、という構成になっている。

「Signa S4」

多くの家庭では難しい複数スピーカーを使ったサラウンド環境だが、Signa S4はイネーブルドスピーカーで音を天井などに反射させて立体音場を作り出す仕組み。しかもサブウーファーはワイヤレス接続で、電源ケーブルさえ接続すれば自動でサウンドバー本体と連動するため、配線をはじめとするセットアップの手間が最小限で済むのもポイントだ。

別体のワイヤレスサブウーファー

改めてそのサウンドを聞いてみると、やはり音の広がりと臨場感は最上位モデルらしい抜群の完成度。地響きのような極低音まで表現するサブウーファーのおかげもあり、Dolby Atmosなどのサラウンド音声に対応した映画での迫力は相変わらず怖いくらいだ。音に包まれ、映像の中に入り込んだかのような錯覚さえ起こしそうになる没入感もすばらしい。

Dolby Atmosの映画では、怖いくらいのリアリティ

なのでSigna S4は、ぜひとも大画面のテレビやプロジェクターと一緒に使いたいところ。家族と一緒にゲームをプレイする時なんかも、サウンドが貧弱だとイマイチ盛り上がりに欠けてしまうものだが、Signa S4にすることでノリノリのBGMがさらにノリノリになって、それだけで楽しさもアップする。試しにテレビ内蔵スピーカーに戻してみると物足りなさを感じてテンションダダ下がりになってしまうくらいだ。

また、Signa S4をリビングなど普段よく過ごす部屋に置いていると、Bluetoothスピーカーとしても大活躍する。スマートフォンで再生している音楽を再生するのもいいが、たとえばスマートスピーカーやスマートディスプレイとBluetoothで接続し、Signa S4から音声出力する、という使い方もアリ。

Bluetooth接続したスマートディスプレイからの音声を「Signa S4」から再生

スマートスピーカーは通常モノラルだし、スマートディスプレイだと一応ステレオスピーカーを内蔵しているが、音質はそこまで高いわけではない。筐体が小さいので音の広がりも控え目だ。しかしSigna S4で再生すれば段違いのサウンドクオリティになる。radiko.jpでいつも聞いているラジオ番組すら、なんだかドキドキするような音質に。朝の忙しい時間帯、テレビを見ている時間はないが、お出かけの準備をしながら音声でニュースを聞いておきたい、というような時にも、リビングのSigna S4が再生する高品質サウンドでしっかり頭にインプットできるだろう。

寝室や書斎で使いたい「Signa S3」。Chromecast built-inのアドバンテージも

続いてはSigna S3。実売価格は2万円台後半、Signa S4の下位モデルという位置付けではあるけれども、左右にミッドレンジスピーカーとツイーターをそれぞれ配し、別体のサブウーファーが付属する2.1chシステムだ。もちろんサブウーファーの接続はワイヤレスで配線の手間は少ない。

「Signa S3」
こちらも別体のワイヤレスサブウーファー

サウンドバー本体は高さ55×奥行き84mmと細身で、幅は900mmと全体的にコンパクト。ただ、出てくるサウンドはやっぱりキレッキレだ。Signa S4と遜色のない図太い低音が出てくるし、それでいて中高音域のきめ細かな表現力も兼ね備えている。

音の広がり、音場の再現性という面ではさすがにSigna S4に軍配が上がるが、Signa S3は極低音のアクセントが効いた正統派ステレオサウンドバーという感じで好印象。

リビングの大画面テレビと組み合わせるのもいいが、個人的におすすめなのは寝室や書斎にあるセカンドテレビとセットで使うというもの。セカンドテレビを置く部屋は、だいたいはサラウンド向きではないし、そもそもサラウンドにする必要性を感じていない環境であることが多い。テレビのサイズ自体そこまで大きくなかったりするだろう。だからこそ、オーバースペックなサラウンド機能がないSigna S3のようなステレオサウンドバーを設置するのにちょうどいいと思うのだ。

リビングのテレビと一緒に使うのもいいが……
こんな風に書斎や寝室にあるセカンドテレビ用のサウンドバーにするのもいい

夜、就寝前のひとときにこっそり見る寝室のテレビ。決して大音量を響かせたいとは思わないけれど、視聴が日課のようになっている連続ドラマの登場人物のセリフははっきり聞き取れるようにしたいし、シーンを盛り上げるBGMもその雰囲気が出てくるようにしたい。そう考えるとテレビ内蔵スピーカーでは力不足で、高音質と重厚な低音のバランスが取れたSigna S3のような性能がほしくなる。Voice Adjust機能やナイトモードなどの音質調整機能も活きるだろう。

もう1つ注目しておきたいのは、Chromecast built-in搭載であること。これはある意味、HDMIなどの有線接続と、ワイヤレスのBluetooth接続の他に用意された、3つ目の音声入力手段みたいなものだ。Bluetoothのように使おうとするたびに入力切り替えや接続操作をする必要はなく、再生したい楽曲をスマートフォンのメディアプレーヤーから選んで、ただSigna S3に対して“キャスト”するだけでいい。

Chromecast built-inを搭載。Chromecastデバイスとして扱える
スマホのメディアプレーヤーなどからキャストするだけ。Wi-Fi接続なので高音質な再生が可能

スマートフォンを使っていて出会った音楽コンテンツ、たとえば定額音楽配信サービスの曲やポッドキャストなどを簡単にSigna S3で再生できるうえ、Bluetooth接続では困難なハイレゾ音質で聞けるのも利点。寝室や書斎のように静かな音量でBGM的に聞きたい場所では、ボリュームを絞っても解像感高く再生できることが重要で、それにはハイレゾ級の音質がないと厳しかったりする。操作上の手間の少なさとピュア音質の2つの面で、Chromecast built-in搭載の「Signa S3」は上位モデルにはない魅力があるのだ。

デスク上に置いて“秘書”としても使い倒したい「REACT」

3機種目のREACTは、サウンドバー本体のみのオーソドックスな製品。実売価格2万円台前半の最も買いやすいモデル……ではあるのだけれど、個人的には一番活用しがいのあるサウンドバーだな、という印象を受けた。

高さと奥行きは57×121mmで、Signa S3よりもわずかに太いが、幅は864mmで短め。2chステレオのスタンダードなタイプとはいえ、低音の強調度合いを調整する機能はあるので、ビリビリと身体に伝わってくるくらいの低音は再生してくれる。

「REACT」
サウンドバー単体のみのオーソドックスなタイプ

幅がコンパクトなので設置スペースに制限がある部屋で使うのももちろん問題なし。でも、もしかしたら最大限にそのパフォーマンスを発揮するのは「デスク上」かもしれない。いつも仕事をしていたり、空き時間にゲームを楽しんでいるパソコンモニターの手前、もしくはモニターアームで浮かしたところの下にREACTを置いて使うのだ。

試しに筆者の仕事用デスクに置いてみたのが下記の写真。デスクは120×60cmなので大きくはないというか、狭いくらいなのだが、モニターアームを使うことでREACTをモニター下にうまく収められ、しっくりくる配置にできた。サウンドバーの上面がモニターにやや隠れる形になってはいるけれど、音が遮られるようなことはない。パソコンと光デジタルで接続することで、贅沢なPCスピーカーに仕立て上げられた。

デスク上に置いてたらしっくり

仕事中に音楽を聞くことは筆者の場合あまりないのだが、仕事が終わった後にネット動画を見たり、ゲームをプレイすることはよくある。そういう場面でデスク周りの範囲にベストな音場を作り出せるのは、コンパクトなREACTならではだろう。

映画の効果音などの低音はデスクを震わせるほどで、自分だけのミニシアターにいるような気分にさせてくれるし、ダークテイストなゲームの重厚な音も、雰囲気を楽しむしっとり系のゲームBGMもそつなくこなす。サウンドバー本体からの距離が近いこともあるせいか、耳障りにならない程度の音量に絞っていてもしっかり細部まで聞かせてくれるのがうれしい。

ダークなゲームのBGMや効果音は恐怖を煽ってくれる
ノスタルジックなゲームのBGMにも合う

Bluetooth機能は、手元にあるスマートフォンやタブレットで動画や音楽を再生したいときに、広がりのあるいい音で聞けるのが便利だ(動画再生では音声がわずかに遅延することがあるので注意)。

さらにもう1つREACTだけが持つユニークな特徴が、音声アシスタントのAmazon Alexaを内蔵し、スマートスピーカーとしても使えること。REACTに「アレクサ、○○して」などと話しかけることで、コンテンツの再生や情報収集、スマートホーム機器のコントロールができてしまうのだ。

タブレットの音をより広がりあるサウンドにして動画視聴
リモコン最上部にあるのがAlexaボタン。このボタンを押してから音声で指示をしてもいい
音声認識中は前面が青く光る

パソコンを使っていれば、そこでいろいろな情報の検索ができるわけだけれど、他の作業をしているときに「今日・明日の天気を知りたい」とか「最新ニュースを聞きたい」とか「アラームを設定したい」とか、手を動かすまでもないちょっとしたタスクを並行してこなしたいときもある。そこで話しかけるだけで、目の前のREACTがすかさず対応してくれるのは、まさに自分だけの秘書がいるような感じでニンマリしてしまう。

シンプルに見えて使いこなしがいのある、三者三様の個性が光るサウンドバー

同じサウンドバーといえども、Polk Audioの3機種はそれぞれがしっかりセグメント分けされている。サラウンドサウンドをじっくり楽しむのに向いたハイエンドのSigna S4、使い勝手と高音質&重低音を両立した正統派ステレオサウンドバーのSigna S3、そして置き場所の自由度が高く日常のパートナーにもなるREACTと、三者三様の個性が光る。

自宅の間取りや用途を考えてどれか1台を選ぶのもいい。だけれど、リーズナブルな価格だけに複数機種を同時に導入して、それぞれに適した部屋に配置していくのもアリなのでは、なんて思ったりもした。どのモデルもシンプルなように見えて、意外と使いこなしがいのある機能を備えているから、あれこれ試行錯誤しながらマイホームに合った使い方を探っていくのが楽しい。お気に入りの機種、お気に入りの使い道を、みなさんもぜひ見つけてほしい。

(協力:ディーアンドエムホールディングス)

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。