レビュー

出不精が“冒険者向け”「Apple Watch Ultra 2」に乗り換えてみた

「Apple Watch Series 4」(奥)から「Apple Watch Ultra 2」(手前)に乗り換えた

9月22日に発売されたアップルの新型スマートウォッチ「Apple Watch Ultra 2」を購入した。当初はApple Watch Series 9にするつもりだったが、思いのほか差額が少ないことに気づき、Ultra 2を選んでしまった。基本的に週末は自宅でゲーム三昧の“出不精”な筆者が、アクティブに活動する“冒険者向け”Apple Watchを使ってみたレビューをお届けする。

そもそも筆者はApple Watchを初代から使っているユーザー。これまで初代、Series 3、Series 4と使ってきており、今回のUltra 2で4台目のApple Watchとなる。

「それだけ買い替えていれば、さぞ使いこなしているのでしょ?」と思われるかもしれないが、主な使い道は時計としての時間確認、通知確認、音楽/映像再生時の音量・早送り/前送りコントロール、そしてiDを使ったキャッシュレス決済くらいで、あまり使いこなしている感覚はない。

ただ最近体重が増えたせいか、お気に入りのデニムが履きづらくなってきたので、ようやく重い腰を上げて、ここ2カ月は週に1回プールに通うようになり、運動記録にも活用するようになった。

筆者が通っている公営プールも含め、条件付きでウェアラブル端末着用OKとされている場所も増えてきた

プールでは時計などの貴金属類を外して泳ぐのが原則だが、筆者が通っている場所を含め、一部のプールやジムでは、シリコン製のリストバンドのようなもので端末を覆えば着用OKとしているところも増えてきているようだ。

Apple Watch Series 9とUltra 2は価格差が少ない場合もある

「Apple Watch Ultra 2」の外箱

そこまでApple Watchを使いこなしているわけでもないのに、Series 4から買い替えた理由はバッテリー。Series 4を手にしたのは2019年ごろだったと思うのだが、すでに4年が経過していて、バッテリーもかなり消耗してきていた。

Apple Storeに持ち込めば、1万円程度でバッテリー交換ができるが、Apple Watch Series 9/Ultra 2のプレゼンテーションをリアルタイムで見ていた時に「4年も使ってきたし、最新モデルにしてもいいのでは」という考えが頭をよぎってしまった。

ちなみにSeries 4は下取りに出さず、家族に譲ったのだが、その2日後には充電器から外すと即省電力モードに移行するほどバッテリーが消耗してしまい、結局バッテリー交換を行なうことになったので、乗り換えにはベストタイミングだったと言える。

また筆者には初代モデルのときから「Apple Watchのケースはアルミではなくステンレススチール、サイズも大きい方にする。色も可能なら黒(グラファイト)で」という変なこだわりがある。

理由は単純で、リーズナブルなアルミケースよりもステンレスのほうがより高級感がある、サイズは大きい方が画面を見やすい、そして黒は“なんとなくかっこいいから”というもの。

Apple Storeで「Apple Watch Series 9」45mmステンレスケースを選んだところ。右上の価格は117,800円となっている

なので、今回も最初はApple Watch Series 9のステンレススチール、45mmサイズ、グラファイトを購入しようと思っていたのだが、この場合最もリーズナブルなラバーバンドとの組み合わせでも、価格は117,800円になる。

同じくApple Storeで「Apple Watch Ultra 2」を選んだところ。右上の価格は128,800円となっている

これに対し、Ultra 2はケースもサイズもバリエーションはひとつ。バンドは3種類用意されているが、どれを選んでも価格は変わらず128,800円なので、上述のSeries 9+ステンレス+45mmとの差額は11,000円しかない。

色は黒ではなくなるものの、差額11,000円で画面サイズが大きくなり、筐体デザインもこれまで使っていたApple Watchと違うものが手に入るなら、Ultra 2を買ったほうが満足感は高いはずという結論に至った。

使いにくい場面もあるが“デカイは正義”

「Apple Watch Ultra 2」を装着したところ

実際に手元に届いたUltra 2の第一印象は「画面は大きいけど、意外と軽い」。スペックシート上の重さは、これまで使っていたSeries 4+ステンレス+44mmの重さが47.9g、Ultra 2が61.4gなので、Ultra 2のほうが13.5g重いが、装着してみると、そこまで重たくなった印象はなく、長時間着けていてもストレスを感じることもなかった。

これまで使っていた「Apple Watch Series 4」を装着したところ
「Apple Watch Series 4」(左)は44mmケースだったので、ケースサイズは5mm大きくなった

そして画面サイズが大きくなったことで視認性は格段に良くなった。これまで使っていたSeries 4はディスプレイ常時点灯に非対応だったので、常時点灯できるUltra 2では例えばつり革に掴まっていても、腕を動かさずに視線を動かすだけでサッと時間や通知内容を確認できるようになったのも便利なポイント。

もちろんバッテリー持ちもかなり良くなり、10時ごろに充電器から外して、20時ごろでも70%程度バッテリーが残っているような状態。1日以上は充電しなくても余裕で使えそうな感覚だ。

一方で、少し使いづらくなったなという点もいくつかある。先にも書いたように、筆者は水泳中のワークアウト計測にApple Watchを使っており、そういったときはシリコンバンドで端末を覆っている。

プールで使っているシリコンバンドを被せたところ。Apple Watchが大きくなった分、締めつけ感も強くなった

これまでのSeries 4は本体が小さくで丸みを帯びた形状だったこともあり、簡単にシリコンバンドを被せられたのだが、Ultra 2は本体サイズが大きくなったので、バンドの着脱にかなり苦労するようになってしまった。

筆者の場合、例えばプールで200m泳いだ後、水中ウォーキングを200m、その後さらに200m泳ぐ、といったような運動をしているので、最初にワークアウトアプリで水泳モードを起動し、泳ぎ終わったら一度水泳モードを終了して、水中アクティビティモードを選択し直す、といったように細かくApple Watchを操作する必要があり、そのたびにシリコンバンドを着けたり外したりする必要がある。

今までは特に苦労せずシリコンバンドを着脱できていたのだが、Ultra 2では筐体が大きくなった影響でシリコンバンドが裂けるのではないかと思うほど引っ張らないとうまく被せることができなくなってしまった。

筆者の場合、慣れるまで押し間違いが頻発したアクションボタン

またApple Watch Ultraシリーズでは本体側面に、さまざまな機能を割り当てられるアクションボタンが増えているが、このアクションボタンも慣れるまでは曲者だった。

ボタンを1度押すだけで割り当てた機能が立ち上がってしまうので、以前展覧会で展示物を覗き込もうと、後ろで両手を組んでいたところ、うっかり反対側の手がボタンに当たってしまい、いつの間にかウォーキング計測が始まってしまうというハプニングがあった。勝手に電話をかけてしまったり、メールを送ってしまったりといったような“大事故”ではないものの、意図しない形で気づかない間にアプリが起動しているというのは、あまり気持ちのいいものではなかった。

アクションボタンに割り当てられる機能もワークアウトやウェイポイント、バックトレース、ダイビングなど、アクティビティに特化したものが多く、日常使いで活用するにはショートカットアプリを活用するなど一工夫が必要なので、日常使いするには“オーバースペック感”があるポイントだった。

不満点はあれど差額1.1万円分の価値アリ

普段はサードパーティ製のステンレスベルトと組み合わせて使っている

不満点がないわけではないものの、1カ月以上Ultra 2を使ってみると、やはり大画面は見やすく操作もしやすいので、Series 9ではなくUltra 2を選んで正解だったと感じている。バッテリーのもちもかなり良く、先日のジャパンモビリティショー2023の取材時、7時ごろに充電器から外して23時前に確認したら、まだバッテリーが78%も残っていたときは、思わず声が漏れてしまった。

26日に配信されたアップデートでは人差し指と親指を打ち合わせる“ダブルタップ”操作も可能になり、これをうまく使いこなせれば、より快適なApple Watch生活ができるはずと期待を寄せている。

128,800円という価格は、スマートウォッチのなかではかなり高価な部類だが、これまで愛用していたSeries 4のように4年以上使い続けられれば十分に元は取れるはずで、Series 9との差額以上に満足感の高い買い物だった。

酒井隆文